アキュフェーズ A20Vのこと(A級アンプのこと・その1)
井上先生が1970年代の終りごろから1980年代にかけていわれていたことは、
日本での、あたたかくてやわらかい、という真空管アンプの音のイメージは、
ラックスのSQ38FD/II(過去のシリーズ作も含めて)によって生れてきたものだ、だった。
同じ意味で、日本においてA級アンプの音のイメージをつくってきたのは、
パイオニアのExclusive M4といえよう。
トランジスターアンプが登場するまでは、言うまでもなく真空管アンプしかなくて、
だからと言って、市販されていた全ての真空管アンプの音が、
柔らかくあたたかい音なわけではなかった。
いろんな音のするアンプが、これまた当たり前すぎることだが、あった。
なのにいつごろから日本では、真空管アンプの音の特徴として、
柔らかくあたたかくて、その反面、音がやや甘い──、
そんなイメージで語られていた時期がある。
だから弦楽器(特にヴァイオリン)、それから女性ヴォーカルを、
しっとり艶やかに聴きたいのであれば、真空管アンプが向いている、そんなことも一緒に語られていた。
同じことが、ほぼ同時代、トランジスターアンプでヴァイオリン、女性ヴォーカルをそんなふうに聴きたいなのであれば、
A級動作のアンプといわれていたのは、Exclusive M4の音のイメージからだろう。
1976年、私がオーディオに興味を持った時期、確かにそんな感じだったし、
私もそれに影響されて、女性ヴォーカルを聴くのであればA級アンプしかない──、そんな思い込みを持っていた。
確かに、Exclusive M4の音はそうだった。
私が初めて聴いたA級アンプは、Exclusive M4だっただけに、
そう思い込むのも、若さ(幼さ)もあってのこと。
このころA級アンプは少なかった。
パイオニアからM22、スタックスのDA80、DA80M、DA300ぐらいしかなかった。