黄金の組合せ(その39)
(その38)でも、別項でも引用している瀬川先生の文章。
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しかしその試聴で、もうひとつの魅力ある製品を発見したというのが、これも前述したマッキントッシュのC22とMC275の組合せで、アルテックの604Eを鳴らした音であった。ことに、テストの終った初夏のすがすがしいある日の午後に聴いた、エリカ・ケートの歌うモーツァルトの歌曲 Abendempfindung(夕暮の情緒)の、滑らかに澄んで、ふっくらとやわらかなあの美しい歌声は、いまでも耳の底に焼きついているほどで、この一曲のためにこのアンプを欲しい、とさえ思ったものだ。
だが結局は、アルテックの604Eが私の家に永く住みつかなかったために、マッキントッシュもまた、私の装置には無縁のままでこんにちに至っているわけだが、たとえたった一度でも忘れ難い音を聴いた印象は強い。
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マッキントッシュのMC275もアルテックの604E(604-8Gも含めて)、どちらも幾度も聴いている。
けれど604EをMC275で鳴らした音は、これまで聴いたことがなかった。
聴いてないとはいえ、この組合せの音はなんとなく想像できなくはないが、
それでも実際の音を聴いてみないことには、
何ひとつ語れないのも音である。
どちらも、すでに現行製品ではない。製造終了からずいぶん経っている。
聴ける可能性は、年々低くなっていくばかり。
それに偶然聴けたとしても、それぞれのコンディションはどうなのか。
単に聴いた、というのでは、むしろ聴かないほうが、
想像しているだけの方がいいのかもしれない。
今日、この組合せを聴いてきた。
一年以上鳴らされていなかった604Eだったし、
少しばかり手が加えられている604Eでもあったが、
それでもMC275で鳴らした音を聴いてきた。
ポン置きでしかないセッティングであっても、
しばらく鳴らしていたら、手ごたえが感じられてきた。
いまのままでは、黄金の組合せとはいえないし、
エリカ・ケートをかけたいとは思わないが、
キチンとセッティングして、チューニングしていけば、
かなりいい感じで、エリカ・ケートのモーツァルトが聴けるようになるのでは、
そうおもわせるぐらいには鳴ってきはじめた。
うまくいけば、秋ごろにはaudio wednesdayで鳴らせるだろう。
エリカ・ケートのモーツァルトは、その時まで鳴らさない。