黄金の組合せ(その34)
《しかし十年を経たいま、右の装置が〝黄金〟のままでいることはもはや困難になっている》
と瀬川先生は、はっきりと書かれている。
その理由として、《ここ数年来、飛躍的に向上したレコードの録音の良さに対して、カートリッジもアンプもスピーカーも、すでに限界がみえすぎている》
ことを挙げられている。
オルトフォンのSPU-G/T(E)にしても、
ラックスのSQ38シリーズにしても、タンノイのIIILZもそうなのだが、
当時の最新の録音に十全に対応できている、とはもう言い難かったことを、
瀬川先生は少し具体的に書かれている。
そのうえで、こうも書かれている。
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念のためつけ加えておきたいが、この〝黄金の組合せ〟を、定期的に点検調整し、丁寧に使いこんであれば、そして、鳴らすレコードもこの装置の能力にみあった時代の録音に限るか、又はこんにちの録音でもその音を十全に生かしてないことを承知の上で音楽として楽しんでゆくのであれば、はたからとやかく言う筋のものではないかもしれない。ただ、レコードの誠実な聴き手であろうとすれば、かつての〝黄金〟も、こんにち必ずしも「絶妙」とは認め難くなっているという現実を、冷静に受けとめておく必要はあると思う。
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いいかえれば、黄金の組合せ(絶妙の組合せ)は、
オーディオ機器のことだけで成立しているわけではなく、
レコード(録音物)をふくめて成立することであるだけでなく、
最も重要なのがレコード(録音物)のことである。
ここを抜きにして黄金の組合せについて語るのは、
なんとも片手落ちでしかないし、本質がわかっていないともいえる。