定番(その5)
この項でも、別項でも、
ラックスのアンプの、最近のずんぐりむっくりなプロポーションに否定的なことを書いてきた。
私だけがそう感じているのではなく、
私の周りでは、私と同世代か上の世代の人たちも、やはり同じように感じている人が少なくない。
最近、そのラックスからCL1000が登場した。
1970年代のラックスのソリッドステートのコントロールアンプC1000(1010)と、
ほぼ同じといえるデザインをもつ管球式コントロールアンプである。
このCL1000、ずんぐりむっくりではない。
かといって、C1000と同じ外形寸法かというと、少し違う。
C1000はW48.5×H17.5×D24.5cm、
CL1000はW46.0×H16.6×D45.4cm。
奥行きは大きく違うが、横幅と高さは数センチの違いであり、
C1000とCL1000の横幅と高さの比率は同じである。
CL1000の横幅が、ずんぐりむっくりプロポーションの44.0cmだったら、
どんな印象に変っていただろうか。
C1000とはずいぶん違った印象になったのだろうか。
もしそうなっていたら、ある人はCL1000を買わなかったかもしれない。
友人のAさんの友人(Cさん)、昔からの音楽好きな人らしい。
ずっとラックスのC1000を愛用してきた。
そのCさんは、CL1000を買った、そうだ。
たまたま臨時収入があったこと、
C1000も、もう四十年以上経つアンプだから、
いくら気に入っているとはいえ、維持していくのも大変になっている。
そこに、パッと見、同じといえるCL1000である。
これならば、奥さんのいない隙にC1000と交換してもバレない、というメリット(?)もある。
もしCL1000の横幅が44.0cmだったら、
ずんぐりむっくりのプロポーションだったら、
Cさんは買い替えなかっただろうし、
音を聴いて気に入って、奥さんに黙ってこっそり入れ替えたとしたら、
黙って買ったこと、臨時収入を隠していたことなどが、すぐにバレてしまっただろう。
横幅、高さは数センチ小さくなっていても、
フロントパネルのプロポーションは変っていないCL1000だからこそ、
Cさんは踏み切れたのではないのか。