「理由」(その4)
「五味オーディオ教室」こそ、はじめて手にしたオーディオの本であり、
オーディオへのきっかけであり、以前書いたように、私のオーディオの「核」となっている。
「核」になるまで、なんどもなんども短期間に集中して読んでいた。
学校にも持っていっていた。
私は、五味先生の「言葉」によって、オーディオの世界に足を踏みいれた。
どこかで素晴らしい音を聴いたわけでもないし、まわりにオーディオに関心をもっている人はいなかった。
それでもオーディオブームだったこともあり、
同級生でオーディオに少しばかり関心を持っているのが数人いたけれど、
オーディオの話をしたことはない。
オーディオの仲間も先輩も、師と呼べる人もいなかったことは、
ある人は「寂しいことだね」というかもしれないし、またある人は「不幸だね」とつぶやくかもしれないが、
「核」らしきものができるまで「五味オーディオ教室」のみを読みつづけていたことは、
これ以上の幸運はなかった、と確信している。
「五味オーディオ教室」を手にしてから、ステレオサウンドの存在に気がつくまでの数ヵ月のあいだ、
私が影響をうけていたのは五味先生の「言葉」だけだったのだから。