Date: 4月 23rd, 2012
Cate: トーラス
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同軸型はトーラスなのか(余談・続フィードバックについて)

再生側のオーディオにおいて楽器に相当するのは、いうまでもなくスピーカーシステムである。
(だからといってスピーカー・イコール・楽器論には賛成できない。)

そして楽器を弾く演奏者が、オーディオではアンプにあたる。

「楽器にはNFBなんてものは存在しない。だからNFBなんて不必要だ」という理屈は、
片方は楽器のみのことを語り、もう片方ではスピーカーシステムとアンプをいっしょに語っている、
という都合の良さがあり、不思議な理屈、といってしまいたくなる。

こういっても「人間にはNFBなんてものはない」と反論がきそうだが、ほんとうにそうだろうか。
人間の身体こそ、アンプよりもずっと高度なフィードバックが行われている。

たとえば楽器が弾けるようになるために練習を積重ねていく。
これは経験的なフィードバックであり、さらに演奏の腕を磨いていくための研鑽もフィードバックのはず。
そして演奏中も自分の手によって弾かれ、楽器から出てきた音を聴きながらのフィードバックもある。

ピアノを弾くとき、指先は鍵に力を加える箇所でもあり、そのときの力の具合を感知するセンサーでもあり、
そのセンサーが感知した情報は脳に還り(フィードバックされ)、緻密な表現を生んでいる、はず。
ただ野放図なだけの音を鳴らすだけならフィードバックはいらないが、音楽はそうではない。

すこしこじつけめいたたとえだが、
クラシックの演奏家の演奏のスタイルの変化は、NFB量の話と近いものを感じることもある。
ずっと以前のヴィルトゥオーゾと呼ばれていたピアニストの演奏と新しく登場してくるピアニストの演奏は、
ひじょうに大ざっぱではあるけれど、ヴィルトゥオーゾ時代はNFB量が少なく、
時代と共に少しずつNFB量が増えてきていっているだけでなく、フィードバックの使い方も高度になっている──、
そんな印象を持ってしまうことがないわけではない。

だからというわけではないが、
心情的には「楽器にはNFBなんてものは存在しない。だからNFBなんて不必要だ」
という不思議な理屈がいわんとするところはわからないわけではないし、
将来300Bのシングルアンプを自作することになったら、NFBはかけない。

それでも、やはり……、である。

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