妄想組合せの楽しみ(自作スピーカー篇・その20)
数年前、ステレオサウンドの連載記事で、「名作4343を現代に甦らせる」というのがあった。
それはアマチュアの自作スピーカーの記事ではなく、
ダイヤトーンでスピーカーの設計に長年携わってこられた佐伯多門氏によるもだった。
佐伯氏がいたころ、ダイヤトーンは4343と同寸法の4ウェイのスピーカーシステムDS5000を出している。
私の勝手な憶測だが、あえてDS5000を4343と同寸法で出してきたということは、
4343を研究し尽くして、のことだと思う。
それにステレオサウンド 47号に掲載されている4343の測定は、ダイヤトーンによって行なわれている。
だから記事の1回目を読んだときは、期待もあった。
けれど残念なことに、回が進むごとに、おかしな方向に進んでいった。
おかしな方向、と書いてしまったが、技術的におかしな方向という意味ではなく、
「名作4343を現代に甦らせる」というタイトルからそれてしまった、という意味でのおかしな方向である。
結局「名作4343を現代に甦らせる」は、
「名作4343の使用ユニットを現代に甦らせる」とタイトルを変えるべき内容であり、
4343という1970年代のスピーカーシステムを、
21世紀のスピーカーシステムとしてリファインする内容ではなかった。
この「名作4343を現代に甦らせる」に欠けていた、
しかし最も大事にしなければならなかったことは、
4343というスピーカーシステムを4343と存在させ、認識させている要素・要因はなんなのかを、
しっかりと見極めたうえで、
変えてもいい箇所、絶対に変えてはいけない箇所をはっきりとさせたものでなくてはならないはずだ。
なのに変えてはいけないところまで無残にも変えてしまった。
だからこの記事は「名作4343の使用ユニットを現代に甦らせる」とすべき内容である。
このタイトルでだったら、こんなことを書かなくてもすむ。
ここの項のタイトルには「妄想組合せ」とはつけてはいても、こんな過ちは犯したくない。