終のスピーカー(その10)
小林貢さんの、それまでのメインスピーカーであったHarknessへの想いは、
小林さんの連載「果てしなき変遷」の担当編集者の N Jr.さんは、
エンクロージュアの写真のキャプションに
「ダブルウーファーを収めた特注エンクロージュアから、ハークネスを追放した主のセンチメンタリズムが漂ってくる」
とつけている。
この記事が載っているステレオサウンドは67号、1983年6月に出ている。
このときより、いま読んだほうが、小林さんの気持ちがわかるような気がする。
小林さんが、あの当時目指されていた音の方向に対して、
Harknessは明らかにそぐわなくなっていた。
小林さんのHarknessを模した特注エンクロージュアは、
Harknessよりも大型になっている。
このサイズになると、あの金属脚がもう似合わなくなっていることに気がつく。
Harknessのかっこよさは、あのスタイルであり、あの大きさだからこそ、
あの金属脚がよく似合うことを確認できたわけだ。
小林さんはHarknessを模したエンクロージュアから、レイオーディオのモニターにさらに突き進まれた。
レイオーディオには、いうまでもないことだが、もうHarknessの面影はカケラもない。
ここで、小林さんははっきりとHarknessと訣別されたのだろう、と勝手におもっている。
小林さんは1983年にHaknessを手離された。
私は、その30年後の2013年、Harknessを「終のスピーカー」として迎え入れる。