型番について(その19)
ステレオサウンド 48号に載っている、菅野先生と井上先生の対談による
「ロングランコンポーネントの秘密をさぐる」のSPUの記事の最後は、
井上先生の次の言葉で結ばれている。
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特に、サスペンション機構を凌駕するものがないということにおいて、ライスとケロッグがダイナミック型のスピーカーを開発して、それを越えるものがないのと同じで、実に偉大なものだと、ほくは思います。
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この井上先生の発言の前に、菅野先生も
「実際にSPUを根本的に凌駕したものが未だにないんだからね」と発言されている。
この対談を読んだとき、私は15歳。
SPUを使ったことも、音もまだ聴いていなかった。
そのためもあって、菅野先生、井上先生の発言を読んでも、実感が湧くことはなかった。
ただ、知識としてそこに印刷してある活字を読んでいた。
だから、このときはSPUは私にとって、Stereo Pick Upの略語でしかなかった。
それ以上の意味を持つことはなかった。
それから30年以上。
SPUの音を何度も聴いてきた。
ステレオサウンドの試聴室であれこれ調整もしてきた経験がある。
少なくない経験を積んできた、知識もあのころとはずいぶん違う。
そうなってくるとSPUはStereo Pick Upの略語というよりも、
私にとってはStandard Pick Upの略語とおもえてくるし、
さらにはSpecial Pick Upの略語にもなってきている。
SPUというカートリッジの存在は、私にとって、いまではそういうモノとなっている。