数字からの解放(その5)
測定で得られるものとは、いったい何なのか。
歪率を測る。
そこで得られた値をグラフに表示する。
もしくは数字でカタログに載せる。
世の中には測定値に変化がなけれは、さらにはほぼ同じであれば音は変らない、という人がいる。
オーディオは科学技術の産物で、スピーカーよりも特にアンプはそうである。
そのアンプを比較するときに、測定結果が似たようなものであれば、音に違いはない、ということである。
そんなに簡単なことであるならば、アンプはとっくに完成形に至っている、といえる。
けれど実際には、まだまだそこには遠く至っていない。
測定値が……と主張する人は、測定で得られる数値が、質を直接的に表していると勘違いしているのではないか。
歪率が良ければ、それは質の高さ・良さを保証していることになるだろうか。
歪率が良いとは歪が少ないことであり、
歪率が悪いとは歪が多いことであり、
つまりは歪の多い少ない、量を表していることになる。
これが歪波形をオシロスコープで表示して、それを写真におさめたものとなると、
そこでは量とともに質に関係してくることを読みとることができないわけではない。
だが歪率を数字で表している以上、そこでの比較はあくまでも量にとどまる。
量と質は、必ずしも切り離せるものでないことはわかっている。
それでも、測定で得られる数字はどこまでいっても量である。
歪率だけではない、S/N比も、
ノイズの多い少ないであり、そこでのノイズの質(しつ・たち)を表しているとは言い難い。