My Favorite Things(チューナー篇・その13)
ステレオサウンド 43号。
たとえばスペンドールのBCIIについて、岡先生は《ピアノよりも弦楽器やヴォーカルが見事である》と評価されている。
また岡先生はQUADのESLについて《弦とヴォーカルのよさは類のないものである》とも書かれている。
アンプだとラックスのSQ38FD/IIについて、瀬川先生は《とくにクラシックのプログラムソースで、弦やヴォーカルのいかにも息づくような暖かさ、血の通った滑らかさを聴けば、この音はちょっと他のアンプでは聴けない特長であることが理解できる》、
同じラックスのCL32では《弦やヴォーカルの音が冷たい金属質にならず、どこか暖かい滑らかさで響くところが、やはり球ならではという感じ》と書かれている。
どれ一つ、この時点では聴いたことがなかったら、ひたすら読んでは、その音を想像していた。
ヴォーカルがうまく鳴るには、艶があって瑞々しい音であってほしい。女性ヴォーカルを聴くのだから色気もあってほしい──、そんなことをおもいながら、43号を何度読み返したことか。
そんな読み方でチューナーのところを見ると、何が最有力候補として浮かび上がってくるかというと、パイオニアのExclusive F3だった。
セクエラのModel 1も選ばれていたが、この凄い性能のチューナーから、女性ヴォーカルの再生に向いた音がしてくるとは思えなかった。
ヤマハのCT7000もいいな、と思いながらも、瀬川先生なCA2000のところで書かれている《ヤマハの一連のアンプの音質に、もうひとつ、色気の欠けていることが不満である私自身、ここまで磨き上げた端正で上品で、清潔な美しい音を聴かされるとその歪みのない澄明な音色にはひとつの魅力があることがよくわかる》、
これを読んでそうか色気がないのか……、CT7000の音もそうなのか……、と思っていた。
Exclusive F3について瀬川先生は《C3やM4と一脈通じる、繊細で、ややウェットではあるが、汚れのない澄明な品位の高い音質》と書かれていたのだから、
女性ヴォーカルを聴くにはExclusive F3だ、と14歳の私は思ってしまった。