300(その12)
いまではD級アンプの進歩が著しいこともあって、
300Wという出力も、小型で軽量でも得られるようになってきたし、
そういうD級アンプと接してきている人にとっては、
300Wという数字は、大出力という感覚もなく受けとっているのだろうか。
私は、SAEのMark 2500の実物をみたときに、
300Wという大出力を、安定に実現するには、これだけの規模が必要なのか──、
そんなふうに思いながら眺めていたものだった。
同じく300W出力のマッキントッシュのMC2300も規模としてはMark 2500より上だったが、
実物と接したのは、私の場合はMark 2500が先だった。
300Wという出力が家庭で音楽を聴く上で必要なのか、という議論は、当時からあった。
それに対する答としていわれていたのが、
300Wという出力を安定に実現するために、そのアンプに投入された物量と技術、
それが音質に寄与している、というのがあった。
コンストラクションにおいてもそうである。
大容量の電源トランスはずっしりと重たい。
出力の大きさに見合ったヒートシンクも必要となる。
つまり重量級アンプとなるわけで、
そういうアンプを開発するということは、
輸送時のことも配慮しての設計・製造ということにもなってくる。
ようするに、しっかりとした構造のアンプとして仕上がることが、
まじめにつくられた大出力アンプに共通していえることだった。
そのことは当時からオーディオ雑誌に載っていることだった。
そのことに対して、こんなことをいう人もいた。
使っているスピーカーの耐入力が小さいから、
そしてスピーカーを壊したくないから、耐入力以上の出力のアンプは要らない、
というか、使いたくない、と。
スピーカーを大事にしたい気持はわかるが、
耐入力未満の出力のアンプを使えば安心と考えるのは、間違っている。
そのことも私がオーディオに関心をもち始めたころ、
すでに指摘されていたにもかかわらず、ソーシャルメディアを眺めていると、
いまでもそう考えている人がいる。