muscle audio Boot Camp(その13)
(その12)に、
スピーカーのインピーダンスをアンプの出力インピーダンスで割った値がダンピングファクターだから、
ダンピングファクターが高いということは、アンプの出力インピーダンスが低いということである、
と書いた。
昔のオーディオの教科書にはそう書いてあるし、
いまでも、おそらくそう説明されている、と思う。
間違っているわけではない。
ただこれだけでは不十分なのだ。
スピーカーシステムがもつ直流抵抗分が抜けた状態でのダンピングファクターであるからだ。
実は、このことはずいぶん昔からJBLのエンジニアが指摘していたことであるにも関わらず、
なぜか、ほとんどのオーディオの教科書には載っていない。
スピーカーユニットにはボイスコイルがあり、
ボイスコイルは細い線で巻かれていることもあって、
たいていの場合、ユニットの公称インピーダンスが8Ωであれば、
60から70%の値の直流抵抗(4.8Ωから5.6Ω程度)をもつわけだ。
この直流抵抗分は、スピーカーユニットから見れば、
アンプの出力インピーダンスに加算されたかっこうとなる。
公称インピーダンスが8Ω、直流抵抗が6Ωのユニットだとしよう。
アンプの出力インピーダンスが8Ωであれば、
アンプのダンピングファクターとして発表される値は1であり、
直流抵抗を含めての実効ダンピングファクターは0.57となる。
アンプの出力インピーダンスが1Ωであれば、8と1.14、2Ωでは4と1、
0.5Ωでは16と1.23、0.1Ωでは80と1.31、0.05Ωでは160と1.32……、というふうになる。
アンプの出力インピーダンスが低ければ低いほど、
カタログに載るダンピングファクターは100、200、さらには1000という値にもなるが、
そこにユニットの直流抵抗を加算して、実効ダンピングファクターを計算してみると、
大きな違いではないことになる。
しかも実際のスピーカーシステムではアンプとユニットのあいだに、
LCネットワークが介在する。