muscle audio Boot Camp(その21)
ステレオサウンド 45号の新製品紹介の記事で、
マークレビンソンのML2が登場した。
このころのステレオサウンドの新製品紹介は、
井上先生と山中先生の二人で担当されていただけでなく、
新製品を聴いての全体の傾向などについての対談も掲載されていた。
その対談で、こんなことが語られている。
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山中 このパワーアンプを開発するにあたってマーク・レビンソン自身は、本当のAクラスアンプをつくりたい、そこでつくってみたところがこの大きさと出力になってしまった。出力ももっと出したいのだけれど、いまの技術ではこれ以上無理なんだといっているのですが、いかにも彼らしい製品になっていと思います。
実際にこのアンプの音を聴いてみますと、今までのAクラスパワーアンプのイメージを打ち破ったといえるような音が出てきたと思うのですがいかがでしょうか。
井上 そうなんですね。いままでのAクラスパワーアンプは、どちらかといえば素直で透明な音、やわらかい音がするといわれてますね。それに対してこのアンプではスピーカーとアンプの結合がすごく密になった感じの音といったらいいのかな……。
山中 その感じがピッタリですね。非常にタイトになったという感じ。スピーカーを締め上げてしまうくらいガッチリとドライブする、そんな印象が強烈なんです。
井上 一般的に「パワーアンプでスピーカーをドライブする」という表現が使われるときは、一方通行的にパワーアンプがスピーカーをドライブするといった意味あいだと思うのです。このマーク・レビンソンの場合は対面通行になって、アンプとスピーカーのアクションとリアクションがものすごい速さで行われている感じですね。
山中 ともかく片チャンネル25Wの出力のアンプで鳴っているとは思えない音がします。この25W出力というのは公称出力ですから、実際の出力はもう少しとれているはずですし、しかもインピーダンスが8Ω以下になった場合はリニアに反比例して出力が増えていきますから、やはり電源のしっかりしたアンプの底力といったものを感じますね。
井上 昔から真空管アンプのパワーについて、同じ公称出力のトランジスターアンプとくらべると倍とか四倍の実力があるといったことがよくいわれていますね。
山中 それに似た印象がありますね。
井上 でも真空管アンプというのはリアクションが弱いでしょ。やっぱり一方通行的な部分があって、しかも反応がそんなに速くない。アンプとの結びつきが少し弱いと思うのだけど、この場合はガッチリ結びついた感じのするところが大変な違いだと思います。
山中 とにかく実際にこのアンプを聴いた人はかなり驚かされることになると思います。
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パワーアンプの出力インピーダンスが変動しているはず──、
なんてことは、この記事を読んだ時はまったく考えていなかった。
素直にML2はすごいアンプなんだ、
早く聴いてみたい、と思っていた。
実際に聴いたML2の音は、まさにそういう音だった。
そしていま、出力インピーダンスの変動を念頭において読むと、
そういうことか──、というふうにも読める。
そういう読み方が正しいかどうかは措くとしても、
A級アンプの出力インピーダンスの変動が小さいからこそのML2の音の特徴に結びつく。