「スピーカー」論(ピストニックモーションにまつわる幻想・その3)
1976年にサンスイのスピーカーシステムSP-G300が登場した。
スラントプレートの音響レンズをもつ2ウェイであった。
当時の山水電気はJBLの輸入元であった。
SP-G300はJBLのスピーカーの影響を受けた製品ともいえた。
SP-G300は国産スピーカーとしては異例の長期的計画によって誕生したモノであった。
SP-G300の開発に関する詳しいことは、
ステレオサウンド別冊「世界のオーディオ」のサンスイ号に載っている。
SP-G300のコンプレッションドライバーのダイアフラムは、
当初はタンジェンシャルエッジだった。
けれどテストと測定の結果、
タンジェンシャルエッジはダイアフラムの前後運動にともない回転運動を起こしていることを確認。
最終的にSP-G300はロールエッジに変更されて世に出ている。
タンジェンシャルエッジがもつ、形状からくる回転運動の発生については、
JBLも気づいていたのかもしれないし、
もしくは山水電気からの指摘があったのかもしれない。
JBLは1980年にダイアモンドエッジを発表した。
タンジェンシャルエッジの2420は2421になり、
ロールエッジの2440は2441になった。
ダイアモンドエッジは、日本の折り紙からヒントを得た、といわれていた。
そうかもしれない。
タンジェンシャルエッジを、アルテックのエッジの向きとJBLのエッジの向き、
このふたつを合体させたものがダイアモンドエッジのようにも、当時は見えた。
ダイアモンドエッジは高域特性の改善がまず謳われたが、
むしろタンジェンシャルエッジにつきもののダイアフラムの回転運動が発生しないことのほうが、
より大きな改善点である。