同軸型はトーラスなのか(その9)
「回路」という言葉から連想しやすいアンプの回路技術といえば、
やはり帰還回路、つまりNFBやPFBではないだろうか。
出力信号の一部を入力にもどすことで、ゲインの安定化、周波数、歪率、S/N比などの諸特性を改善する、
この技術は、市販されている大半のアンプに採用されている、古くからある技術だ。
1970年代後半、マッティ・オタラ博士が、多量のNFBによるTIM歪の発生について発表があったころから、
NFBをやにくもに使うことが見直され、パイオニアからは、
独自開発のスーパーリニアサーキット(SLC)による無帰還アンプ、C-Z1、M-Z1が登場した。
オーディオに興味をもちはじめて、アンプの回路技術にも関心をもちはじめた時、
まっさきに疑問をいだいたのは、この帰還回路だった。
アンプ内の信号の伝わる速度は無限大ではない。ということは、NFBにおいて、
出力信号の一部が入力にもどるときには、入力には次の信号が来ているはず。
音楽信号はつねに変化しているものだから。
その時間は、ごくごくわずかなものであっても、遅れることは変らない。
それに多量のNFBをかけるトランジスターアンプと違い、
比較的軽めのNFB、もしくは無帰還の真空管アンプは、
NFBをかける前(オープンループ時)の諸特性が優れている、ということも、盛んにいわれていた。