plus(その7)
モーターの力に頼らない回転でのみ得られる音は素晴らしいからといって、
モーターそのものの存在を否定したいわけではない。
モーター(つまり電気のエネルギー)がオーディオに加わったことで、
われわれは音楽をある一定時間、途切れさせることなく聴くことができるようになった、
このメリットは、家庭で音楽を聴いていくうえで、非常に重要なことである。
アンプやスピーカーはあっても、もしモーターがこの世に存在していなかったら、
オーディオはどうなっているだろうか。
そのことを想像してみれば、モーターという存在の有難さが実感できよう。
モーターによる回転が、オーディオにとっては完全なものとはいえず、
改良の余地が多くあることは以前からわかっていたことであろう。
もしCDの登場があと10年、そこまでいかなくても5年遅かったら、
国産メーカーによるアナログプレーヤーのモーターおよび回転機構の開発は、
なにか新しいところにいけたかもしれない、と、最近思っている。
1980年前後、国産メーカーがオーディオフェアで参考出品していたアナログプレーヤーには、
いまの目からみても、興味深いものがいくつかある。
なかには製品化するにはコストの面で折り合わない技術もあっただろうから、
CDの登場が遅れたとしても、それらすべてが製品化されたとはいえないだろうが、
それでも回転の「質」の向上に関しては、かなり進むことができたはずなのに……、
と、残念に思わないでもない。