チューナー・デザイン考(その10)

長島先生はマランツのModel 9を使われない理由を話されていたことがある。
Model 9が素晴らしいパワーアンプだということはわかっているけれど、
長島先生の性分としてつねにベストな状態にしておきたい。
となるとModel 9は調整箇所が多く、大変だから、ということだった。

少しくらい出力管のバイアス電流が変動しても気にならない人もいれば、
すごく気にする人もいる。
こればかりはその人の性分だから、まわりがとやかくいうことではない。

Model 9のように調整・チェック用のメーターがついているアンプは、
細かなことが気になる人、つねにベストの状態にしておかないとダメな人には向かない、ともいえる。
視覚的に動作チェックができるアンプは、どうしてもメーターに目が行ってしまいがちになる。

そういう長島先生だから、あえてModel 10Bをとらなかったかもしれない……、
そんな想像もできる。

Model 10Bの調整箇所がどれだけあるのか、
それがどれだけ大変なのかは、正直わからない。
けれど使用真空管の数からして、つねにベストの状態を維持しようとなると、そう簡単なことではないだろう。

カルロス・クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団の公演の放送もやってくれるFMである。
けれど、これだけの内容のものとなるとそう度々放送されるわけではないし、
ラジオなのだから、少し気楽に聴いていたい、という気持もある、と思う。
少なくとも私にはある。

いいチューナーは欲しい。だけど調整が大変なチューナーはできれば勘弁、というのが私の本音である。
長島先生がそうだったのかはわからない。
でも、Model 10Bにされなかったのは、案外そういう理由なのではないのか。

だとしたらカウンターポイントのマイケル・エリオットが構想していた、
受信部(高周波回路)は半導体で、低周波の回路は真空管で、
というチューナーに、強い関心を示されたのも納得がいく。

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