耳はふたつある(その3)
メーカーがスピーカーシステムを測定する。
その際、マイクロフォンは一本である。
だからといって、聴き手が自分のリスニングルームで測定をする際に、
マイクロフォンが一本のままでいい──、とどうしてなったのだろうか。
メーカーが測定するのは、あくまでもスピーカーの特性であり、
しかも無響室という、現実のリスニングルームとはかけ離れた環境での測定である。
そこでマイクロフォンが一本だからといって、
残響があり、その残響を含めての音響特性を測定するのに、
なぜマイクロフォンが一本のままだったのだろうか。
リスニングルームでのマイクロフォンが一本の測定が無意味とはいわないが、
なぜ一本のまま来てしまったのだろうか。
耳はふたつある。
ふたつある耳で聴いている。
測定と聴くということは必ずしも同じではないから、
マイクロフォンは一本でいい、ということなのだろうか。
岩崎先生の「カタログに強くなろう」は、40年以上前に書かれている。
ただマイクロフォンを二本にすることによる危惧もないわけではない。
数年前に、あるオーディオマニアが録音したという自主製作のCDを聴いた。
ワンポイントマイクロフォンによるピアノの録音だった。
これが実に不思議な音というか、奇妙な録音だった。
どうすれば、こういう録音ができるのか、と逆に感心したくなるほどだった。
マイクロフォンを設置してそのまま録音しているのだろうから、
いい悪いは別として、もっとまともに録れているはずである。