Date: 2月 23rd, 2012
Cate: ジャーナリズム, 測定
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測定についての雑感(続々続々・ある記事を読んで)

保護回路がアンプを保護するのは悪いことではないし、いいことではある。
けれど、その保護回路が音を悪くしていたとしたら、
それも軽微ではなく、かなり音に影響を与えていたとしたら、どうだろうか。

保護回路が入っていない、もしくはまともな働かないパワーアンプが異常を来したら、
最悪スピーカーの破損につながる。さらにひどい場合にはスピーカーのコーン紙を燃やしてしまうことすらある。
そんなことを未然に防ぐためにも、保護回路は必要なものではある。
けれど、アンプの回路設計が各社様々であるように、保護回路の設計も各社様々である。
そしてアンプの音質とは、アンプの回路設計と保護回路の設計、ともに優れていなければならない。
どんなに優れたアンプであっても、保護回路が、そのアンプの動作を抑圧するようなものであったら、どうなるか。

ステレオサウンド 64号の測定では、国産アンプの保護回路の在り方を、
間接的にではあったが知ることが出来たと思う。
あくまでも安全面を優先したアンプでは、1Ω負荷に対して、保護回路が働いてしまう。
1Ω負荷なんてものはあり得ない、という考え方からなのかもしれないし、
そういう非常に低いインピーダンスが負荷となることがおかしな状況と、設計者が判断してなのか、
それとも会社の方針としてなのか、そのへんは外部の人間にははっきりとしないが、
がちがちの安全面の保護回路の動作をみると、ついルンバを作れない(作らない)、
日本の家電メーカーと共通する因子がオーディオ専門メーカーにもあるように思えてしまってならない。

実は64号の測定のとき、あるメーカーの技術者に協力していただき、
そのメーカーのアンプの保護回路を外して測定している。
誌面に載せているデータは保護回路付きのものであるが、
保護回路を外したときのデータは、誌面に載っているデータよりもずっといい結果だった。
ひじょうに優れた結果でもあった。
つまり、そのアンプはそれだけの能力を持っている、にもかかわらず、その良さをそうとうにスポイルしている。

それは特性面のことだけではない。
実際に保護回路を取り外した状態の音は、そのアンプに感じていた個人的不満を見事に解消していた。
こんなに瑞々しい音を出してくれるのか、そして、なんともったいないことなのか、と、
おそらく保護回路付きの音、保護回路なしの音を聴くことができた人なら、全員がそう思うはずである。

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