537-500と岩崎千明氏(その1)
ステレオサウンド 38号「オーディオ評論家──そのサウンドとサウンドロジィ」、
何度も見て読んでいるにもかかわらず、
またひっぱりだしてきたのは確認したいことがあったから。
JBLのホーン537-500といえば、
菅野先生が長年愛用されていることはよく知られているし、
菅野先生よりも早く瀬川先生が導入されていたことも知られている。
けれど岩崎先生は?
あれだけ多くのオーディオ機器があった岩崎先生のリスニングルームに、
537-500はなかったのか──、それを確かめるために38号を開いている。
少なくとも38号に掲載されているカラー写真、モノクロ写真のどこにも写っていない。
「岩崎氏の再生装置」というリストにも、537-500、もしくはHL88の型番はない。
37号もひっぱりだしてきた。
「ベストサウンドを求めて」という記事で、
岩崎先生はJBLのユニット群によるマルチアンプシステムを実験されている。
プロローグとして、JBLのホーンについて書かれている。
そこには537-500(HL88)のことは出てくる。
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そりゃあ、そうだろう。蜂の巣にしたって黄金の翼にしたって、JBLファンなら一度は手にして、そばに置きたい魅力のかたまりだ。HL88として復活したが、前の型番537−500といってもぴんとこないファンがいたとしても175DLHのホーンの兄貴分といえば判るだろう。つまり蜂の巣音響レンズをホーン開口部にそなえた強力無比な中音用ホーンなのだ。鉄製の強固なる丸形(コニカル)ホーンは、デッドニングなどはしていないが、どう叩いても、とうていホーン鳴りなどしそうにない。パンチングメタルを17枚重ねた音響レンズは、単なる拡散器というより、ホーン開口部につけた音響的バッファーの作用もして家庭用として適切なるエネルギーにするため、積極的な音響損失をも、もたせてあるといえる。
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けれど本文といえるユニット組合せの試聴には、
2350、2355、2397、HL89、HL900、HL92は登場するが、
537-500(HL88)は、そこにはいない。
《JBLファンなら一度は手にして、そばに置きたい魅力のかたまり》と書かれているのに、
岩崎先生のリスニングルームに、537-500があった写真をみたことがない。
写真に写っていないから、ない、とは断言できないが、
あれだけの大きさと存在感をもつ537-500を、どこかにしまわれていたとは考えにくい。