「言葉」にとらわれて(その22)
サンスイのLMシリーズを聴く機会はなかった。
LMシリーズのスピーカーは1975年に出ている。
まだ私はオーディオに興味をもっていなかった。
私がLMシリーズのスピーカーを知ったのは、1977年6月。
ステレオサウンド 43号特集ベストバイにおいてである。
でも、そこではLMシリーズの技術的特徴であるLMトゥイーターについて、
深く知ることはできなかった。
トゥイーター周りのバッフルが、
ウーファーよりも前面にあるという形だけが印象に残っていたくらいである。
LMトゥイーターについて知るのは、ステレオサウンドで働くようになり、
別冊「世界のオーディオ」のサンスイ号を読んでからである。
三井啓氏が、「サンスイに見るオリジナリティ」というタイトルの記事で、
LMスピーカーシステムの開発について9ページに渡って書かれている。
サンスイが全面的に協力しているムックだけに、開発の背景から測定データまで掲載されている。
LMシリーズのトゥイーター周りのバッフルは、前に突き出ているのか。
1977年には、すでにテクニクスからリニアフェイズのスピーカーシステムが登場していた。
コーン型ウーファーで、中高域がホーン型でなく、ドーム型、コーン型であれば、
ボイスコイルの位置はウーファーが奥まってしまうだけに、
テクニクスはスコーカー、トゥイーターの取り付けを階段状にしている。
フランスのキャバスのブリガンタンもそうである。
なのにサンスイのLMシリーズはウーファー、トゥイーター、
どちらもコーン型なのに、トゥイーターがさらに前に位置しているということは、
リニアフェイズということを無視してまで、ということになる。
音を聴く機会があれば、
もっと早くにLMトゥイーターの技術的特徴(マルチラジエーションバッフル)に興味をもっただろうが、
なにしろ聴く機会もなく、LMシリーズが普及価格帯のスピーカーということもあって、
サンスイ号を手にするまで、関心の対象外だった。
LMトゥイーター(マルチラジエーションバッフル)の考え方は、
立体バッフルともいえるし、ある種のホーンバッフルともいえるし、
振動板の前面と後面が逆相の一般的なユニットだけでなく、
同相のハイルドライバーにおいて、マルチラジエーションバッフルはうまく作用するかもしれない。