アンチテーゼとしての「音」(平面バッフル・その4)
平面バッフルの構造は、特に複雑ではない。
バッフル板と支える脚部があれば、平面バッフルとして機能する。
とはいえ脚部をどうするのかは、意外と難しい。
脚部というよりも、平面バッフル全体を、どう支えるかの問題である。
さらに平面バッフルの材質には、響きのよいものを、と昔からいわれている。
だから上質の木材が、平面バッフルにはよく使われる。
平面バッフルにおいて、バッフル板の響きは確かに重要であるが、
その響きを疎外する要因となっているのが、
スピーカーユニットのバッフル板への取り付けである。
重力のない世界ならば影響は抑えられるが、
地球上にはそういう場所はない。
バッフル板には、ユニットの重量が荷重となる。
2m×2mといった大きな平面バッフルに、10cm口径のユニットならば、
ユニットの荷重による影響は小さくなっても、
2m×2mの平面バッフルに、小口径のユニットを取り付ける人はまれだろう。
やはりこれだけの規模となれば、38cm口径のユニットを、私だったら迷わず選ぶ。
となるとユニットによくる荷重は、10cm口径のユニットとは比較にならないほど大きくなる。
そうするとバッフル板へのテンションが強くかかることになる。
このテンションの強さは、本来材質が持っている響きのよさを損ねる方向に働きがちだ。
ダンボールの平面バッフルは、不思議といい音だった。
ダンボールだから、叩いてみても、良質の木材のようないい感じの音がしてくるわけではない。
ダンボールの平面バッフルの音の良さは、
ユニットを人が手で支えていたから、ダンボールのバッフル板には、
ユニットによる荷重はまったくない。