セッティングとチューニングの境界(その23)
(その22)を書いたのは3月だった。
そのころは三ヵ月後にコーネッタを手に入れることになろうとは、まったく思っていなかった。
でも、皺のことを書いていた。
皺が似合うスピーカーとそうでないスピーカーがあるような気がする、
と書いている。
このとき、私の頭になかにあったのは、間違いなくタンノイも含まれていたはずだ。
特定のスピーカーを思い浮べていたわけではなかったけれど、
私のなかでは、ヴァイタヴォックスとともにタンノイも、皺の似合うスピーカーである。
ステレオサウンド別冊「世界のオーディオ」のタンノイ号で、
井上先生が菅野先生との対談で、こんなことを語られている。
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井上 ただ、いまのHPDはだいぶ柔和になりましたけれども、それだけに妥協を許さないラティチュードの狭さがありますから、安直に使ってすぐに鳴るようなものではない。現実に今日鳴らす場合でも、JBLとかアルテックなどとは全然逆のアプローチをしています。つまり、JBLとかアルテックの場合、いかに増幅段数を減らしクリアーにひずみのないものを出していくかという方向で、不要なものはできるだけカットしてゆく方向です。ところが、今日の試聴ではLNP2Lのトーンコントロールを付け加えましたからね。いろいろなものをどんどん付けて、それである音に近づけていく。
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コーネッタを鳴らしていて、そういったところがあるのを感じていた。
なぜそうなるのか、その理由を特定しようとは思っていないけれど、
皺の似合うスピーカーだからなのだろう、と思うところもある。
もちろん、だからといって、タンノイのスピーカーを鳴らしていくうえで、
井上先生が語られている方向だけが絶対というわけではない。
いままで皺の似合わないスピーカーばかりを鳴らしてきた人が、
皺の似合うスピーカーを鳴らすことになったら、これも手の一つである、ということだ。