スピーカー・セッティングの定石(その1)
スピーカーの使いこなしに定石はない。
瀬川先生が何度もくり返されていることである。
そうだ、と思う。
定石といえることがあるとすれば、ガタツキなくしっかりと設置することぐらいで、
その他に関しては定石はない、と思って取り組んだ方がいい結果がえられるのではないだろうか。
スピーカーは左右の壁、後の壁からも十分に距離をとって設置した方がいい。
そう言う人が多い。
けれどこれだって定石とはいえない。
部屋とスピーカーシステムとの関係性で、
それにその環境下で音楽を聴く人によって、壁に近づけた方がいい結果が得られることもある。
だからとにかく思いつく限りあれこれ試してみるしかない。
たとえばスピーカーの下の置き台。
私がオーディオを始めたころは、いまのようにオーディオ専用スタンド(置き台)はないに等しかった。
だからブックシェルフ型スピーカーの置き台はコンクリートブロックが一般的だった。
ホームセンターで売っているコンクリートブロックである。
大きな穴があって、密度の高いコンクリートでもないから、重量はさほと重くはない。
そのためか、いつのころからかコンクリートブロックは音の悪い置き台というふうに見られるようになった。
でも、このコンクリートブロック。
ほんとうにそんなに音が悪いと断定できるのか。
私もコンクリートブロックを最初は使っていた。
わざわざ買いにいかなくとも家にあったということもある。
いま思うとそんなに悪くなかったような気がする。
それでも東京で暮らすようになってから自分で使うことはなかった。
見た目が部屋にそのまま置くようなモノではない、ということもあってだ。
そうやっていつしか私の頭の中からは、
スピーカーの置き台としてのコンクリートブロックの存在は消えかかろうとしていた。
けれど10年ほど前に、ある方のところで、
「結局コンクリートブロックがいちばん良かった」という話を聞いた。
そこで鳴っていた音を聴けば、納得せざるを得ない。