黒田恭一氏のこと(その16)
サウンドコニサーの取材でアクースタットのスピーカーを聴かれる2年前のステレオサウンド 54号は、
スピーカーの試聴テストが特集記事で、菅野沖彦、瀬川冬樹、黒田恭一の3氏が参加され、
巻頭座談会として「スピーカーテストを振り返って」が掲載されている。
そこで、次のことを語られている。
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結局、時代の感覚への対応のしかただという気がするのです。たとえば、ぼくは♯4343の旧タイプを持っていますが、新旧で、これはちょっと考え直さなければいけないかなというくらい違っていると思うのです。かつての♯4343の音というのはかなり煮詰まった音だとしますと、Bタイプはもう少し開放された音の方向に向かっている。
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新タイプの4343、つまり4343BWXの黒田先生の試聴記はこちらをご覧いただくとして、
このスピーカー試聴テストで、黒田先生が惚れ込まれたのは、ソニー/エスプリのAPM8だ。
APM8について、座談会の中で、シカゴ交響楽団に例えられている。
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エスプリというのはとてもまじめに音楽を聴く気持にさせる音ですね。
たとえて言いますと、ぼくが指揮者で、メイジャー・オーケストラのどこでも指揮させてくれる、というのと似ていると思うのです。すると、エスプリはシカゴ交響楽団ですね。非常に技量が高くて、しかしウィーン・フィルでもベルリン・フィルでもない、シカゴ交響楽団だと思うのです。
聴いている人をウキウキさせるとか、そういう言葉ではちょっと言いにくいスピーカーなのですが、音場感の広がりとかノイズと楽音の分離などのクォリティ面で、やはり素晴らしいスピーカーだと思いました。
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ひじょうに興味深い例えだと思う。