オーディオ機器の調整のこと(その7)
SMEの最初のトーンアーム3012は、よく知られているように、
瀬川先生が何度か書かれているように、オルトフォンのSPU、
それもGシェル・タイプを活かすために、アイクマンが自らのためにつくったモノである。
だからSME(アイクマン)は、プラグイン・コネクターと呼ばれる、
カートリッジを含めたヘッドシェルの着脱を容易にする交換方式を採用している。
これこそはオルトフォンが最初に考案した規格であり、
SME(アイクマン)がそれに倣ったわけである。
そしてSMEのトーンアームの、こういうところを日本のメーカーがマネしてくれて、
日本ではカートリッジの交換が容易にできるトーンアームが主流となっていった。
実際、SMEの初期の3012には、オルトフォン製のヘッドシェルが付属していたらしい。
このカートリッジの交換のための規格を日本を広めたきっかけとなった存在が3012だけに、
日本では3012はユニバーサル・トーンアームのように受けとめられがちである。
けれど、くり返すが、3012はアイクマンにとってSPU専用のトーンアームなのである。
そのアイクマンはSPUばかりをずっと使い続けてきたわけではなく、
SPUからシュアーのカートリッジへと移行している。
そのころSMEはシュアーと提携もしていて、アメリカではShure = SMEのブランドで売られていたらしい。
そうなると3012ではシュアーのカートリッジには、もう不向きである。
だからアイクマンは1972年に3009/SeriesII Improvedを発表し、
シュアーのカートリッジにターゲットを絞っているかのように、
最大針圧を1.5gまで、と軽針圧用となっている。