私的イコライザー考(妄想篇・その8)
1970年代の前半、BOSEの輸入元はラックスだった。
ラックスはB&Wのスピーカーも輸入していたことがある。
1972年ごろの、そのラックスの広告に、
「日本で苦戦しています」というキャッチコピーがつけられて、
BOSEの901が、日本市場で良さが認められにくく苦戦していることを訴えていた。
このころは、まだオーディオに関心をもっていなかったけれど、
日本のそのころの住宅事情を考えても、
901は、なかなか理解されにくいコンセプトのスピーカーシステムである。
70年代後半になり、ボーズコーポレーションが取り扱うことになった。
そのころは901の広告は、著名な人が使っている実例をだったり、
海外のオーディオ雑誌で高い評価を得ていることの紹介だったりした。
音場再生ということを厳密に考えれば、
録音されたプログラムソースには、録音現場の音場に関する情報が含まれている。
充分に含まれいてることもあれば、わずかな情報量だったりすることもあるにせよ、
とにかく録音現場の音場に関する情報はなにがしか記録されている。
そのレコードを再生する聴き手のリスニングルームにも、
部屋の大小、部屋のつくりなどによって異ってくるものの、
やはりここにも音場空間が存在し、
録音の音場と再生の音場がまじり合うことになる。
901のようなスピーカーシステムは、そこにスピーカーの音場といえるものがはっきりと附加される。
狭い理屈だけで考えれば、901による音場はよけいなものとして受けとめられる。
それに専用イコライザーを使わなければならないことも、901への抵抗となっていたはず。
901はロングセラーを続けている。
けれど私の知る人で、901を鳴らしている人はいない。
いまも受け入れられにくいスピーカーであることに変りはないようだ。
そのためなんだろう、いま日本では901は取り扱われていない。
BOSE本社ではいまもつくられている、にも関わらず。