続・再生音とは……(その9)
手塚治虫の代表作に「火の鳥」がある。
太古から、ものすごく遠い未来まで描かれている「火の鳥」にはいくつもの話から成りたっている。
その中のひとつ、「復活編」にロビタというロボットが登場する。
ロビタとトビオ──、似ているといえば似ている。
けれど手塚治虫によって描かれるロビタの外観とトビオ(アトム)の外観は、まったく異る。
ロビタは最初、基本的に人型のロボットだったけれど、
重量バランスが悪すぎたため不安定な歩行しかできず、
最終的に脚を省かれ、臀部にあるベアリングによって移動する。
腕も、いかにもロボットアームと呼ばれるものであり、指もカニのように2本のみ。
顔にも表情はない。
鉄で造られているイメージさせる、そんな外観をもつ。
ロビタは、「復活編」の主人公であるレオナの記憶と、
チヒロと呼ばれる事務用ロボット(なんとなく女性的な外観をもつ)を融合させて誕生したもの。
26世紀にロビタは誕生し、その後、31世紀までコピーが大量生産される、という設定である。
完全な人型のロボットであるアトムとロビタは、こんなふうに違う。
外観だけの違い以上に大きく異るのは、「記憶」に関して、である。
ロビタにはそれまで生きていた人間(レオナ)の記憶がコピーされているわけだが、
アトムは、飛雄の記憶を移したのではなく、
あくまでも飛雄の父親による天馬博士の記憶によってつくられたものである、という違いである。