Archive for category Digital Integration

Date: 9月 21st, 2009
Cate: Digital Integration

Digital Integration(その12)

EMTのCDプレーヤーにはハードディスクが搭載されたり、イーサネット端子が設けられたりしている。

デジタル・コントロールセンターの「かたち」が、なにも定まっていない、
いまはオーディオとコンピューターの融合に関しては過渡期であるがために、
放送局の要望により登場した形態なのだろうと思っているが、
本来CDプレーヤーに、これらの機能は搭載されるべきものなのだろうか。

D/Aコンバーターが多機能化してゆけば、
デジタル・コントロールセンターへと自然となっていくのだろうか。

パワーアンプがアナログ入力のみであれば、そうなっていくのかもしれないが、
デジタルスピーカーの登場、D級パワーアンプの進化は、
まったく新しいデジタル・コントロールセンターのかたちを促していくはずだ。

デジタルといっても、PCM信号もあれば、DSD信号もある。圧縮音源も、いくつもフォーマットがある。
デジタル伝送の規格もひとつだけではない。

デジタル・コントロールセンターに求められる機能を考えていくと、
コントロールという言葉ではカバーできなくなるくらい、範囲のひろいものとなっていくだろう。

そう考えたとき、デジタル・コントロールセンターにかわることばとして思いついたのが、
Digital Integration(デジタル・インテグレーション)である。

Date: 9月 21st, 2009
Cate: Digital Integration

Digital Integration(その11)

1993年ごろか、マランツから「UNIX」と名づけられた製品が登場した。
コンピューターのUNIXとの商標の関係から、AX1000、と型番が変更されている。

マランツは、このAX1000(UNIX)をオーディオコンピューターと定義していたように記憶している。
AX1000は、アナログ、デジタル入出力を備え、
リスニングルームの音響特性の測定から補整までを、一台でこなす。価格は200万円弱だったはず。

それからほぼ10年後の2003年、ゴールドムンドから、ユニバーサルプリアンプとして、
MIMESIS24と30が登場した。
内部にDSPを搭載しており、入力にはアナログ端子も設けられているが、出力はデジタルのみという、
いわばデジタル・コントロールアンプである。

マランツもゴールドムンドも、意欲的な製品だと思っているが、そのわりには話題にならない。

デジタル・コントロールアンプ、というよりも、デジタル・コントロールセンターと呼ぶべきだろうが、
これから先、どういう形態が求められていくのか、
このことについて技術者をまじえての議論がなされて然るべきだと思う。

Date: 9月 21st, 2009
Cate: Digital Integration

Digital Integration(その10)

CDを買ってきて、ハードディスクにリッピングして、バックアップもしっかりしているから、
とCDを売って手放してしまう人もいる、ときく。
こうなると、CDは、音楽を聴くメディアではなくなり、データの移動するための手段でしかないわけだ。

いわばアナログ手法的なデータ配信といえなくもない。

CDに、モノとしての価値を見いださない人が、今後ふえてくるのだろうか。

こんな状況も頭に浮かべながら、PCオーディオにかわることばを、いくつか考えていた。
そんなときに、デジタルスピーカーを聴いた。

聴いて、考えついたことばは、どれもPCオーディオやデジタルファイル・ミュージックと同じように、
プログラムソースに関連するものでしかないことに気がついた。
狭い範囲だけを示している。
どれも、システム全体をあらわす意味を含んでいない。

Date: 9月 20th, 2009
Cate: Digital Integration

Digital Integration(その9)

qualityを、クオリティではなく、クォリティと、
enclosureを、エンクロージャではなく、エンクロージュアと書くのは、
ステレオサウンドの表記になれているから、である。

だから、ステレオサウンドが、オーディオとコンピューターの融合を、うまくあらわすことばを提案してくれれば、
それに従うことに抵抗はないのだけれど、「デジタルファイル・ミュージック」に関しては、
安直につけられた印象があるし、ことばとして正確なのか、とも思うところがある。

コンピューターが扱うファイルは、まずデジタルである。
だからわざわざデジタルファイルという必要はない、ということ。
それからファイルは、データがひとつのかたまりとしてまとまっているものを指し示す言葉のはずだ。

ハードディスクに記憶されているデータの集合体はファイルであるが、
配信されるものを、リアルタイムで再生しているとき、そのデータは、ファイルと呼べるものだろうか。
いちど全データをハードディスクにダウンロードして再生するのであれば、ファイルの再生であるが、
ライヴで生中継されているデータは、ファイルとは呼べない。

データミュージックというのなら、(いい表現かどうかは別として)わかる。
けれど、デジタルファイル・ミュージックには、抵抗感がある。

Date: 9月 19th, 2009
Cate: Digital Integration
2 msgs

Digital Integration(その8)

ここで、オーディオとコンピューターの融合について書いた。16年前のことだ。

ここ数年、PCオーディオという単語を、ネットでもオーディオ誌でも見かけるようになった。
ネットでは、PCオーディオが一般的だが、オーディオ誌となると、
各誌で、意味するところはほぼ同じでも、ステレオサウンドは「デジタルファイル・ミュージック」、
オーディオベーシックは「PCオーディオ」、無線と実験は「ネットオーディオ」と、ばらばらである。

デジタルファイル・ミュージックも、首をかしげたくなるところがあるし、PCオーディオも、
PCという単語自体がウインドウズマシーンを指し示すものだと、Macユーザーの私は思っているから、
口にすることも書くことにも抵抗がある。

ウインドウズでやられている人がPCオーディオと表記しているのを見ても、まったく気にならないが、
Macユーザーだといいながら、「PC」と言ってしまう人には、
なぜ、この人は、MacのことをPCといえるのだろうか、と、ものすごい異和感を感じる。
なんと、安易に言葉を使う人だろうと思ってしまう。
そんな人の書くことは、まったく信用していない。私はそういう人間である。

Date: 9月 19th, 2009
Cate: Digital Integration

Digital Integration(その7)

スピーカー単体での高効率化が、いまのところ不可能と思えるほど困難であるならば、
アンプも含めたシステム全体での高効率化を実現できるよう、
研究・開発を進めていくのは、技術のあり方のひとつとして、正しいことである。

私が聴くことができたのは、スピーカーも小さいし、アンプ部の信号処理もFPGAで行なっているというものだから、
最大出力音圧レベルの点でもまだまだだし、
現在のシステムと拮抗できるだけのクォリティを実現していくわけでもない。

それでも、システム全体としての効率の高さは、きっとクォリティと結びついていくだろうし、
思わぬ変化をとげることもあるだろう。

このことを、デジタルスピーカーを聴いて、まず思った。
そして、フルデジタルシステムについて夢想した。
Digital Integration を思いついた。

Date: 9月 19th, 2009
Cate: Digital Integration

Digital Integration(その6)

デジタルスピーカー・システムの効率は、いまの段階でもかなり高いと思われるし、
これから先、開発がすすんでいけば、さらに高くなっていくことだろう。

スピーカーユニットが、磁気回路、ボイスコイル、振動板という組合せから構成される、
スピーカー誕生のときからの基本構造が、抜本的に変化しないかぎり、
電気信号(入力信号)の音への変換効率は、それほど高くすることは、そうとうに困難なことである。

いま存在しているものよりも、
ずっと強力な磁気回路、ずっと軽くて丈夫な振動板といったものが開発されたとしても、
変換効率が、50%をこえることができるだろうか。

スピーカーの変換効率は、想像以上に低い。
いまでは、どちらかといえば高めの出力音圧レベル92dB/W/mのスピーカーで、効率1%である。
99%の電気信号は、熱となって消費されていく。

20Hzから20kHzまでの可聴帯域をほぼカバーしながら、50%は無理としても、
20から30%ていどの変換効率のスピーカーを実現できたら、オーディオは大きく変化していくことだろう。

くり返すが、私がいきているうちには、そんなスピーカーは現われてきそうもない。

Date: 9月 18th, 2009
Cate: Digital Integration

Digital Integration(その5)

ウーファーもドライバーも、ウェスターン・エレクトリックのフィールド型ユニットで、
電源は、それぞれにタンガーバルブ使用のモノを、それぞれのユニット用に同じ数だけ用意するとしたら、
スピーカーの磁気回路のためだけに、どれだけの電力が必要になるのか。

パワーアンプも、小出力とはいえ、
ウェスターン・エレクトリックの、当時の真空管のパワーアンプの消費電力は、そこそこ大きい。

スピーカー、アンプ部をふくめた、システム全体の消費電力は、専用の電源を用意しなければならないほど、
正確にはどれだけになるのか計算したことはないけれど、そうとうに大きい。

スピーカーは高能率だが、それを実現するシステムの効率は、決して高くはない。

Date: 9月 18th, 2009
Cate: Digital Integration

Digital Integration(その4)

能率の高いスピーカーといえば、
シーメンスやウェスターン・エレクトリックの劇場用スピーカーということになろう。

ウェスターン・エレクトリックのフィールド型のスピーカー群は、わすか数Wの出力のパワーアンプでも、
満員の劇場の観客全員を満足させるだけの音を出せる。

出力音圧レベルは、ゆうに100dB/W/mを超えていたであろう。
たしかに能率は、圧倒的に高い。
けれど、この高能率を実現するために消費する電力の大きさは、いったいどれだけになるのか。

フィールド型ユニットだけに、磁気回路に専用の電源を必要とし、
この電源の種類によって、ほんとうは変ってほしくないのだが、誰の耳にも明らかなぐらいに音は、ころころ変る。

記事にはならなかった(もともと記事にするつもりのない実験だったのだが)、
私がステレオサウンドにいた頃、タンガーバルブによる電源を使った音出しを、すでにおこなっていた。
このとき比較用に聴いたのは、トランジスターを使った、ごく一般的な定電圧電源であり、
タンガーバルブ電源使用時の音は、これだけの音がでるのであれば、
家庭用としては、あまりにも大きすぎる規模の電源だけれども、しかたない、というしかないのか。
それほど、同じ音圧なのに、浸透力がまるでちがう。

Date: 9月 18th, 2009
Cate: Digital Integration

Digital Integration(その3)

ラジオ技術に載っていた基板の左半分は、信号処理を行なうFPGA(Field Programable Gate Array)と、
左端に、小さく8つ並んでいるD級アンプが、主だった回路である。

電源回路は、FPGA用に、実験用の外部電源を採用し、D級アンプ部には、単三の乾電池を一本のみ使用。

信号処理のFPGAは、専用のLSIを開発することで、より高性能化するとともに、消費電力もかなり抑えられる。
信号処理部、アンプ部もふくめ、すべて乾電池で動作させることが可能となる。
乾電池で動作といっても、それほど長時間の使用は無理なのでは、と思われる方もおられるだろう。
私もそう思っていたが話をきくと、アンプ部の単三の乾電池は、ほぼ丸一日音を出しつづけていたにもかかわらず、
へたった様子がまったくなかった。

これで、デジタルスピーカーから出てくる音が、蚊の鳴くような、か細い、小さな音量では話にならないが、音量の点でも、目の前にあった、見た目は貧弱なスピーカーは、きちんと鳴っていた。

Date: 4月 14th, 2009
Cate: Digital Integration

Digital Integration(その2)

三週間前の3月23日、ある用事で訪ねた事務所の、打合せ用のテーブルの上に、
小口径のフルレンジを収めた、一辺が10cnほどのスピーカーと、
一目でデジタル関係のモノだとわかるプリント基板がむき出して置いてった。

デジタルスピーカーだ、と説明してくれた。

ビクターが約30年前に発表したデジタルスピーカーとは規模が違う。
スピーカーもアンプを含めた信号処理の回路も、手のひらに載るサイズにまでなっている。

すぐさま訊ねたのは、ボイスコイルの数。
答えは「6つ」とのことだった。
6つで足りるのか、と疑問に思っていたら、
Δ−Σ変換して、ミスマッチシェーピングという技術を使っているため、
おそらく、当時、ビクターが解決できなかったであろうノイズも、問題にならないとのこと。

基板が1枚で、スピーカーもひとつのみということで、
モノーラルでの、簡単な音出しとはいえ、はじめて耳にするフルデジタルの音であり、
30年前に、夢の技術だと思ったモノが、目の前で鳴っていた。

このデジタルスピーカーの技術的内容は、いま発売されているラジオ技術 5月号で紹介されている。
54ページに掲載されている基板、私が聴いたのも、これとまったく同じモノである。

Date: 4月 12th, 2009
Cate: Digital Integration

Digital Integration(その1)

1980年あたりのオーディオフェアで、ビクターはデジタルスピーカーを参考出品していた。
当時の電波科学に、ビクターの技儒者による解説記事が載っていて、
高校生で田舎暮らしの私は、実物を見ることはできないわけで、そのぶん、記事はじっくり読んだ記憶がある。

といっても高校生の知識では、デジタルスピーカーの動作原理を完全に理解はできなくて、
内容の大半は忘れてしまったが、
それでも、ひとつのスピーカーユニットに複数のボイスコイルを搭載することだけは記憶に残っていた。

デジタルスピーカーとは、デジタル信号をダイレクトに入力できるスピーカーのことで、
スピーカーユニットそのものがD/Aコンバーター的な役割を担っている、と言ってもいいだろう。

夢の技術だ、と感じていた。

このデジタルスピーカーと前後して、同じビクターからは、
スイッチング電源を搭載したパワーアンプM7070が、すこし前に登場していた。
M7070の技術資料を読むと、理想の電源に近づけるための採用だった。

ソニーからは、オーディオ用アンプとして初のD級パワーアンプTA-N88が出ていたし、
デンオン・レーベルからはPCM録音のアナログディスクが、次々にリリースされていた。

そんな時代に、参考出品とはいえ、出てきたデジタルスピーカーだった。

Date: 1月 20th, 2009
Cate: Digital Integration

CD登場前夜は……

CD(というよりもデジタル)時代の到来によって、音の差がなくなるようなことが、一部で言われていた。

デジタル・イコール・画一化の技術だと思っていたのだろうか。
もちろん、とんでもない話だとほとんどの人が思っていたし、
もし仮にD/Aコンバーターに、各社の性能差がまったくなかったとしても、
それ以降のアナログ部が各社違うのだから、そんなことはありえないのに。

そんなことが言われたときから、今年で27年になる。

CDに続き、DATが登場し、ソニーのMDやフィリップスのDCCというのもあった。
パーソナルコンピューターの普及によって、MP3というフォーマット、
圧縮音源のフォーマットも、さらにいくつか登場している。

CDは16ビット、44.1kHzのPCM信号だったのに対し、DSD信号が出てきた。
PCMに関しても、よりスペックが上の、24ビット、96kHzなどもある。

CDだけ見ても、金蒸着CDが登場し、ガラスCD、それに最近各社から出ている新素材によるモノがある。
パッケージメディアも、CD、SACD、DVD-Audio、Blu-Ray Audioがあり、
デジタル配信も話題になっている。

iPodの存在も無視できない。そのiPodもハードディスク内蔵のモノと、メモリーのモノがある。

いったい、どれだけの人が、これだけデジタルの種類が増えることを予想しただろうか。
おそらく、ひとりもいないだろう。

いま、オーディオがコンピューターに寄り添おうとしている。
なぜ、オーディオが寄り添うのか。
コンピューターが寄り添う在りかたこそ、論じられることだと思う。