Digital Integration(その1)
1980年あたりのオーディオフェアで、ビクターはデジタルスピーカーを参考出品していた。
当時の電波科学に、ビクターの技儒者による解説記事が載っていて、
高校生で田舎暮らしの私は、実物を見ることはできないわけで、そのぶん、記事はじっくり読んだ記憶がある。
といっても高校生の知識では、デジタルスピーカーの動作原理を完全に理解はできなくて、
内容の大半は忘れてしまったが、
それでも、ひとつのスピーカーユニットに複数のボイスコイルを搭載することだけは記憶に残っていた。
デジタルスピーカーとは、デジタル信号をダイレクトに入力できるスピーカーのことで、
スピーカーユニットそのものがD/Aコンバーター的な役割を担っている、と言ってもいいだろう。
夢の技術だ、と感じていた。
このデジタルスピーカーと前後して、同じビクターからは、
スイッチング電源を搭載したパワーアンプM7070が、すこし前に登場していた。
M7070の技術資料を読むと、理想の電源に近づけるための採用だった。
ソニーからは、オーディオ用アンプとして初のD級パワーアンプTA-N88が出ていたし、
デンオン・レーベルからはPCM録音のアナログディスクが、次々にリリースされていた。
そんな時代に、参考出品とはいえ、出てきたデジタルスピーカーだった。