Archive for 3月, 2013

Date: 3月 9th, 2013
Cate: ジャーナリズム,

賞からの離脱(その23)

井上先生菅野先生瀬川先生の「私はベストバイをこう考える」は、それぞれのリンク先をお読みいただくとして、
ほかの方の見出しを拾っていく。

上杉佳郎:オーディオ機器に要求されるいくつかの条件を満たすコンポーネント製品こそがベストバイといえる
岡 俊雄:オーディオ製品の水準が上がってきた現在、さまざまな使われ方を考慮してベター・バイ的な選び方をした
菅野沖彦:〝最上の買物〟の条件は、価格、性能の差だけでなくそのもののオリジナリティと存在理由の有無にある
瀬川冬樹:魅力ある製品はもちろんのこと、現時点で水準以上のものはベストバイといえるのではないだろうか
山中敬三:ベストバリューこそを判断の大きなポイントにおきたいと思う

小説は最初のページから読み始め読み進める。
けれど雑誌となると、パラパラとめくって目に留まった(興味のある)ページから読んでいく、
そういう読み方もできるし、最初から読んでいくこともできる。

当時の中学三年生にとって、1500円の本は安い買物ではない。
それに次の号が出るまで三ヵ月ある。
あせることなく最初のページからじっくりと読み進めていけばいい、
そのほうがいい、と思っていた。

実際にそれがよかったわけである。
選者すべての人の「私はベストバイをこう考える」を読んだ後で、
実際にどういうコンポーネントが選ばれているのかを読んでいった。

43号では二部構成になっていた。
選者の投票数のほとんどを獲得したコンポーネント46機種のページが、まずあった。
このページの扉にはこうある。
「ステレオサウンド誌選定《’77ベストバイ・コンポーネント》」と。

このページのあとに広告がはさまり、「評論家の選ぶ’77ベストバイ・コンポーネント」のページが、
各ジャンルごとにはじまっていた。

Date: 3月 9th, 2013
Cate: ジャーナリズム,

賞からの離脱(その22)

あのころはステレオサウンドを買ってきたら、
最初のページから読んでいた。
ステレオサウンド 43号で、だから最初に読んだのは「私はベストバイをこう考える」だった。

このときの選者は、井上卓也、上杉佳郎、岡俊雄、菅野沖彦、瀬川冬樹、山中敬三の六氏の他に、
テープデッキ部門だけ大塚晋二、三井啓の二氏が加わる。

「私はベストバイをこう考える」は五十音順に掲載されているから、
井上先生の「私はベストバイをこう考える」をまず読んだ。

ステレオサウンドのベストバイ・コンポーネントの特集は35号が最初で、43号は2回目。
35号と43号のあいだに41号が発売されていて、
この41号の特集は「世界の一流品」である。

この41号のあいだに出たことで、
井上先生は35号でのベストバイ・コンポーネントの選出と43号でのベストバイ・コンポーネントの選出とでは、
すこしばかり考え方を変えられていることがわかる。
     *
今回は、選出にあたり、ある程度の枠を設定して、本誌41号でおこなわれたコンポーネントの一流品と対比させることにした。
     *
こう書かれ「業務用途に開発された製品は、特別を除いて対象としない」、
「コンポーネントのジャンル別に、価格的なボーダーラインを設定して、一流品とベストバイを区分する」、
井上先生の「私はベストバイをこう考える」の見出しは
「家庭用として開発された製品から、多くのオーディオファンにとってベストバイたり得るものを選んだ」
とつけられている。

Date: 3月 8th, 2013
Cate: 「オーディオ」考

「音は変らない」のおかしさ

「音は変らない」も、おかしな表現だということに気がつく。
「音は変らない」が何をいおうとしているのかはわかっているけれど、
それでもこの「音は変らない」だけを取り出してみると、おかしなことだと感じる。

音はいうまでもなく一瞬たりとも静止しない。
つねに変動・変化しているから音である。
そんな性質の音をとらえて、「音は変らない」はおかしい。

「音は変らない」の音とは、音楽を構成する音である。
音楽もまた、つほに変動・変化する音から構成されるものであるから、
音楽もまた一瞬たりとも静止することは、絶対にない。

よくよく考えてみると、この世の中に「変らない」ものなんて、
なにひとつ存在しないことに気がつかされる。

音のように変動・変化がはやいものもあれば、
たとえば非常に硬く安定している物質は長年に亘り変化しない──、
人間の目にはそう見えても微視的にみれば、まったく変化していないわけではない。
ただ、その変化があまりにも遅いために人間の生きている時間内ではなかなか認識しにくいだけのことであって、
未来永劫まったく変化しないものなど、この世の中に存在しない。

つまり「音は変らない」は、
正しくは「変らないように聴こえる」であり、
「変らないように聴こえる」には人間の能力に関係していることだから、個人差もあるということだ。

たとえ「変らないように聴こえる」のだとしても、
それはその人にとってのことであり、ほかの人にとっては必ずしもそうではない。

「音は変らない」と言い切ってしまうことほど、非科学的なこともない。

Date: 3月 8th, 2013
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その14)

ターンテーブルのワウ・フラッターが充分に小さければ、
カートリッジが同じであれば、プレーヤーシステムの違いによって音が変ることはない、
こんなことを強弁する人は、決って測定しても違いが現れない、ともいう。

測定の多くの場合につかわれる信号は、ほとんどがサインウェーヴである。
われわれがケーブル(アンプ)によって音が変る、
さらにはターンテーブルによって音が変る、という場合に聴いているのは音楽である。

カートリッジがおなじであれば、ほんとうにターンテーブル(プレーヤーシステム)による音の違いは、
測定結果として現れないのだろうか。
そんなことはないことは、いまから35年も前のステレオサウンドに載っている。

ステレオサウンド 48号、プレーヤーの特集の中、146ページに載っている。

囲み記事として掲載された「プレーヤーシステムによって再生能力はこんなに違う」では、
ふたつのグラフがある。
ベートーヴェンのピアノソナタ「熱情」のレベル記録を、一部拡大したグラフである。

グラフのひとつはEMT・930stによる再生波形、
もうひとつは1973年ごろに発売されたローコストのダイレクトドライヴ型プレーヤーによる再生波形。
カートリッジはどちらもオルトフォンのSPU-G/Eを、針圧3gで使った、と記事にはある。

いくつかの山・谷が描かれている、ふたつのグラフは、
「熱情」の同じ箇所を再生しているのであるから、相似形ではある。
けれど細部までまったく同じというわけではない。

Date: 3月 8th, 2013
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その13)

世の中には、いまだケーブルによって音が変るなんてことは絶対にない、
さらにはアンプで音が変ることもない、
こんなとんでもないことを平気で強弁している人がいる。

ケーブルを交換すれば、音が変るのは事実であるし、
アンプを替えれば音は変る。
ただ、その時の音の違いは、人によって、それに価値観の相違によって、
それほど重要ではない、という言い方ならば納得できる。

それにある人にとって容易に聴き分けられる音の違いが、
別の人にとっては違いがわからない(わかりにくい)ということはある。
その逆もまたある。

自分が聴き分けられないから、
ケーブルを交換しても(アンプを替えても)音は変らないということにはならない。

ケーブルによる音の違いはわからないから、
いまのところケーブルによる音の違いは、私には存在しないといえる、
ケーブルによる音の違いよりももっと重要なことがあり、そちらから音を追求していきたい、
そういう考えから「ケーブルによって音は変らない」といわれているのであれば、
その方のオーディオの取組みを尊重したい。

だがインターネットで、匿名なのをいいことに、
自分の考え(というよりも耳)が正しい、とばかりに、
ケーブルによって(アンプによって)音は変るという人に噛みつくばかりの人は、
ターンテーブル(アナログプレーヤー)によって音が変ることはない、というだろう。

Date: 3月 7th, 2013
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(デザインのこと・余談)

マイクロのSX8000IIが登場したとき、
音はともかくとして、ひとつ疑問に感じていたのが、
トーンアームベース、モーターユニットをふくめたベースの塗装の色だった。

あれはなんという色と表現したらいいのだろうか。
糸ドライヴの最初のモデルRX5000 + RY500のベースは黒、
次のモデルSX8000では青に変っていた。
それがSX8000IIでは、基本としての緑と表現できる色なのだろうが、
ひどい色とまではいわないものの、決していい色とは思えなかった。

最初見た時も、それからあとステレオサウンドの試聴室に常備されるようになっても、
実際に使われているユーザーのリスニングルームで見たときも、
一度もいい色と感じたことはなかった。

そうなると疑問がわく。
なぜ、この色(こんな色)にしたのだろうか。
デザイナーの指定した色だとしたら、いったい誰なのだろうか。

ヒントはあった。
具体的なことは書かないけれど、そのことから、
たぶん、SX8000IIの色を決めたのは、この人なんだろうな、と思っていた。

いまステレオサウンド 186号が書店に並んでいる。
特集は「欲しくなる理由、使いたくなる理由」。
この特集記事を読んでいて、やっぱりSX8000IIの色を決めたのは、
この人だったんだ、と確信に変った。
おそらくSX8000IIのデザインもそうであろう。

この確信が間違っていなければ、
あえてぼかして書くけれど、あれもそうなのか、ということになる。

Date: 3月 7th, 2013
Cate: D130, JBL

D130とアンプのこと(続×八・音量のこと)

岩崎先生にとってビリー・ホリディの”Lady Day”が、特別な一枚であったことは、
「オーディオ彷徨」おさめられている「仄かに輝く思い出の一瞬──我が内なるレディ・ディに捧ぐ」、
それに「私とJBLの物語」を読めばわかる。
     *
その時には、本当にビリー・ホリディを知っていてよかったと心底思ったそして、D130でなくてもよいけれどそれはJBLでなければならなかった。
     *
このとき岩崎先生は、D130で”Lady Day”を聴かれている。
「JBLによって、ビリー・ホリディは、私の、ただ一枚のレコードとなり得た」、
その”Lady Day”を聴かれた音量は、ひっそりとしたものだったではないか、
そういう音量でも聴かれたのではないか、とおもうことがある。

Date: 3月 6th, 2013
Cate: ジャーナリズム,

賞からの離脱(その21)

熱心にステレオサウンドのアンケートハガキに記入していたときには気づいていなかったけれど、
読者が選ぶベストバイ・コンポートはいい企画であったことに、こういうことを書いていると気がつく。

当時のステレオサウンド編集部がそこまで意識・意図していたのかどうかはわからないが、
単なる読者による人気投票という表面的な企画の裏には、
読者にベストバイということを考えさせるという面があったからだ。

アンケートハガキに記入する人のどのくらいの割合かはわからないけれど、
単なる人気投票的に捉えての人もいれば、
ベストバイ・コンポーネントの意味をその人なりに考え、
自分にとってのベストバイ・コンポーネントとは何か──、
そのことを記入した人もいる。

そしてアンケートハガキの集計結果が掲載されるステレオサウンドには、
オーディオ評論家によるベストバイ・コンポーネントとともに、
それぞれのオーディオ評論家による「私はベストバイをこう考える」が載っていて読めるわけである。

アンケートハガキを単なる人気投票として受け取っていた人にとって「私はベストバイをこう考える」は、
どうでもいい文章かもしれない。
でも、その人なりにベストバイ・コンポーネントとは、ということを考えて記入した人にとって、
「私はベストバイをこう考える」は、自分の考えと照らし合せて読むことができる。

Date: 3月 5th, 2013
Cate: レスポンス/パフォーマンス

一年に一度のスピーカーシステム(その1)

ワイドレンジ考の(その79)で、
こう書いた。

そうはいいながらも、ウェストミンスターを年に1回でいい、聴いていきたい、とも思う。
ウェストミンスターの音・響きにストレスにはまったく似合わない。
ストレス・フリーでウェストミンスターをうまく歌わせることができる人のところで、
ブラームスのレコードを1枚でいいから聴きたい。
いまはそう思っている。

タンノイのウェストミンスターだけではない、
他にも、実はいくつか一年に一度、その音を聴きたいと思っているオーディオ機器、
といってもおもにスピーカーシステムなのだが、それはいくつかある。

それがなんなのか、ひとつひとつあげていくことはしないけれど、
同じ一年に一度、と思いながらも、
少し違う意味の「一年に一度」のスピーカーシステムがある。

そのスピーカーシステムを自分のモノにしたい、とか、
そのスピーカーシステムの音を、
ウェストミンスターのようにブラームスのレコードを聴きたい、というふうに、
音楽と結びついての「一年に一度」ではなく、
自分のオーディオの腕を確認するためのスピーカーシステムとして、
一年に一度、自分での手で鳴らしてみたいスピーカーシステムがある。

Date: 3月 5th, 2013
Cate: ジャーナリズム,

賞からの離脱(その20)

以前のベストバイの特集号には、
オーディオ評論家によるベストバイ・コンポーネントだけではなく、
読者の選ぶベストバイ・コンポーネントというページもあった。

私にとっての2冊目のステレオサウンド、42号についていた読者アンケートハガキ、
これに各ジャンルから1機種ずつ、ベストバイを思えるコンポーネントの、
ブランド名と型番を書いて送ることによる、読者参加のベストバイだった。

43号は1977年だから、私は中学3年になっていた。
中学3年なりに、ベストバイという意味を考えた。

この手のアンケートは、読者による人気投票になってしまう面もある。
私も、価格に関係なくそのときいちばん欲しいと思っているモノのブランドと型番を書こうかな、
と最初は思った。

でもベストバイ・コンポーネント、とある。
このときは”Best Buy”ではなく、頭に浮んでいたのはベストバイ、というカタカナだった。

中学3年でも”Best Buy”の意味はわかる。
それでも父に訊ねた(父は英語の教師だったので)。
「お買得だな」とのことだった。

自分なりに考えた。
考えたけれど、それ以前にステレオサウンドを読み始めて、わずか2冊目。
すべてのオーディオ機器を知っていたわけでもない。
かなりの数、知っているつもりでも、
43号のベストバイ特集を読んで、こんなにもオーディオ機器はあるのか、と、
アンケートハガキを書いて送った約二ヵ月に、知ることになる。
つまりアンケートハガキを書くのに、一ヵ月ほど悩んでいた、と記憶している。

Date: 3月 5th, 2013
Cate: ジャーナリズム,

賞からの離脱(その19)

“State of the Art”より”Components of the year”のほうが、
耳にしたとき、目にしたときにわかりやすいことは確かである。
確かではあるものの、それは果していいことなのか、とも考える。

ステレオサウンドには、賞こそつかないものの、
オーディオ評論家によって選ばれるものとしての”Best Buy”が以前からある。
基本的に6月に発売される夏号での特集であった、この”Best Buy”は、
”Components of the year”と同じ、12月発売の冬号で行われるようになっていった。
それがいまも続いている。

こうなると、”Best Buy”も、名称に賞とはつかないものの、
賞のひとつとみることができる。

この”Best Buy”という名称、
“State of the Art”のような解釈の難しさは、一見ないように感じられる。
だからというわけではないだろうが、
ステレオサウンドの冬号で、”Best Buy”の意味について、何か語られているであろうか。

41号からステレオサウンドを二見始めた私にとって、
最初の”Best Buy”は43号だった。

43号の特集の冒頭には、「私はベストバイをこう考える」とつけられ、
ベストバイ選者による選定基準について書かれた文章があった。

“Best Buy”は、一般的な邦訳ではお買得ということになる。
けれど、”Best Buy”とお買得とでは、単に英語と日本語の違いだけではない、
微妙な意味合いの違いがあろう。

Date: 3月 4th, 2013
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その12)

国産のダイレクトドライヴ型プレーヤーで、
930stまでいかなくともガラードの301に匹敵する、
ターンテーブルと軸受けの強度、それにターンテーブルの偏芯と上下ブレの少なさをもつものはある。

ステレオサウンド 48号が出た1978年の時点ではそう数は多くないものの、いくつか存在する。
その中でもヤマハのPX1は、200gのオモリをのせた場合のたわみは0.02mm。
ガラードの301と同じ値である。

上下ブレは0.07mm、偏芯は0.04mmとガラードの301と、ほぼ同等である。
PX1のターンテーブルプラッターはジュラルミンの削り出しによるもので、重量は5.2kg。
速度偏差も無負荷時でも、レコードトレーシング時でもひじょうに優秀である。

だからダイレクトドライヴ型でも、ここまでのモノができる、ということでもあるわけだが、
構造的に見た場合、ダイレクトドライヴ型はPX1ほどの精度を出すのは、かなり大変なことでもある。

ターンテーブルプラッターとシャフトを、コマと重ね合わせた場合、
当然ターンテーブルとシャフトがしっかりと嵌合していたほうがいい。
この箇所に、わずかでもガタツキが生じていたら、
ターンテーブルプラッターをどれだけ精密に仕上げたとしても、偏芯は生じてしまう。

EMTは930st、927Dstなどもターンテーブルプラッターとシャフトがしっかりと嵌合した、
いわば一体型となっている。
トーレンスのベルトドライヴも、インターとアウターにわかれる二重ターンテーブル構造ではあるが、
インターターンテーブルはシャフトと嵌合されており、そのシルエットはコマである。

Date: 3月 4th, 2013
Cate: audio wednesday

第26回audio sharing例会のお知らせ(新宿と梅田でおもったこと)

今月のaudio sharing例会は、6日(水曜日)です。

テーマは何にしようかと思っていたときに、
たまたまふたつの紀伊國屋書店に行く機会があった。

3月1日の午後2時ごろに行ったのは新宿・高島屋にとなりにある新宿南店。
翌日の2日の正午ごろに行ったのは大阪駅近くの紀伊國屋書店・梅田本店だった。

書店の雑誌売場に行けば、その書店での扱われ方がわかる。
雑誌にとって特等席は平台のうえに並べられる、いわゆる平積みである。
次は4段ほどのガラスで仕切られた棚に並べられることであり、
この棚の中でも手前に置かれれば表紙がすべて見えるので、ここがいわば一等席にあたる。
同じ棚でもこの奥(上の段)になると表紙の上の部分しか見えないわけだから、二等席。

平台とこの棚の間には、もうひとつの棚があり、ここに並べられる雑誌は表紙は見えない。
見えるのは背だけであり、こうなると三等席。
私はこんなふうにみている。

どの雑誌が平積みになるかは、書店によって異る。
たとえば3月1日に出たばかりステレオサウンド 186号。
紀伊國屋書店・新宿南店では、私が三等席と読んでいるところに、ひっそりと2冊しかなかった。
この日に発売になったばかりなのに、この扱われ方は正直ショックだった。

オーディオ雑誌すべてがそんな扱いなわけではない。
オーディオアクセサリー、Gaudioは平積みされている。
同じ新宿の新宿本店には行ってないので、どういう扱われ方なのかはわからない。

翌日の梅田本店では平積みになっていた。
わずか二箇所のサンプルでしかない。
けれど同じ紀伊國屋書店という、大型の書店において、
場所が変るとこれだけ扱われ方も変る。

このことでいくつかおもうことがあった。
そのことについて、今回はすこし話そうかと思っている。

時間はこれまでと同じ、夜7時からです。
場所もいつものとおり四谷三丁目の喫茶茶会記のスペースをお借りして行いますので、
1000円、喫茶茶会記にお支払いいただくことになります。ワンドリンク付きです。

Date: 3月 4th, 2013
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その11)

ステレオサウンド 48号の測定結果によれば、
ガラードの301のターンテーブル回転時の上下ブレが0.06mm、偏芯が0.05mm。
これは優秀な値である。
いまもガラードのターンテーブルが、301も含め401も、
古めかしいメカニズムという印象にも関わらず、いまも高い評価を保持しているのは、
ターンテーブル及び軸受けの強度、ターンテーブルの偏芯と上下ブレの測定結果と無関係ではないはず。

そしてEMTの930st。
上下ブレが0.03mm、偏芯が0.01mm。
ガラード・301よりもさらに優秀な値となっている。

国産のダイレクトドライヴのプレーヤーはどうなのかというと、
高価な機種が必ずしも強度があり、偏芯が少ないとは限らない。
上下ブレがいちばん大きいのは0.21mmというのがある。この機種の偏芯は0.1mm。
偏芯がいちばん大きいのは0.15mm、この機種の上下ブレは0.11mmと、
偏芯が大きいから上下ブレが大きい(上下ブレが大きいから偏芯が大きい)とは必ずしもいえない。

もちろんどちらも大きな機種もある。
上下ブレ0.2mm、偏芯0.14mmで、
この機種のターンテーブルのしなり・たわみは200g負荷時で0.26mmをすこしこえている。
この機種はローコストなプレーヤーではなく、単体のターンテーブルとして発売されている、
この当時としては高価な部類にはいる。

Date: 3月 3rd, 2013
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その10)

ターンテーブルの回転を、コマの回転と重ね合わせると、
長島先生がステレオサウンド 48号において、
ターンテーブル及び軸受けの強度とターンテーブルの偏芯と上下ブレを測定された理由がみえてくる。

ターンテーブルがどんなに正確に規定の回転数、
LPであれば33 1/3回転で、ワウ・フラッターが測定の限界値に近くなろうと、
実のところ、音のゆれが完全になくなる、無視できるほどなくなるとはかぎらない。

アナログディスク再生で、回転ムラがあれば、そのは即座に音のゆれとなってあらわれる。
いうまでもなく33 1/3回転よりも速くなれば、音のピッチが高くなるし、
33 1/3回転よりも遅くなれば、音のピッチは低くなる。

回転数のズレが、つねに速い(もしくは遅い)であれば、
まだその補正はそう難しくはないだろうし、音への影響も限定的となる。

けれど速くなったり遅くなったり、つねに両方への変動があれば、音がゆれて鳴ることになる。

ダイレクトドライヴになり、サーボがかけられ、さらにクォーツロックも採用され、
測定上、もう充分ではないか、と思ってしまうほど、優秀な値を実現している。

けれどいくら優秀な値をほこる回転精度であっても、
ターンテーブルが偏芯していたり、上下のブレがあったり、
強度が不足していてしなり・たわみが生じたら、
これらは、回転ムラに起因する音のゆれとは、
性格の異なる音の「ゆれ」を生じさせている──、
そういえるのではないだろうか。

この音の「ゆれ」こそが、音への影響がもっとも大きい、
と私は考えている。