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Date: 12月 18th, 2013
Cate: マルチアンプ

マルチアンプのすすめ(その20)

アルテックの同軸型ユニットはデジタル信号処理とマルチアンプの組合せで鳴らしたいのに、
タンノイの同軸型ユニットでは、それをやらないのも、パラゴンと同じ理由である。

だからパラゴンと、これも同じように、
一度だけはデジタル信号処理とマルチアンプの組合せで鳴らしておきたい。
そのときの音をしっかりと耳に刻んだ上で、ネットワークに戻して鳴らすことをやりたい。

ただタンノイを同軸型ユニットを搭載したシステムに、
以前ロックウッドのスピーカーシステムがあった。
一度しか聴くことがなかった、このスピーカーシステムは、
同じタンノイの同軸型ユニットを使いながらも、タンノイのオリジナルシステムとは、
異る趣をもつシステムであり、
このロックウッドのシステムが存在していたからこそ、
バッキンガムやSRMシリーズがタンノイから登場したのではなかろうか。

ロックウッドのMajorを思い出すと、
こういうシステムに挑戦したくなる。
ロックウッドのシステムはエンクロージュアは独自の設計だったけれど、
ネットワークはユニットに付属してくるモノをそのまま採用していた。

もしいまMajor的なスピーカーシステムに挑戦するならば、
ネットワークにはUREIの813のネットワークの設計を採り入れたい。
そうすることでウーファーとトゥイーターの、構造からくる時間差を補整する。

それでうまくいったとしよう。
それでは、その成功したネットワークを、
タンノイの現行システム、たとえばウェストミンスター、カンタベリーのネットワークを、
それに置き換えて鳴らすかといえば、これもまたやらない。

このこともルールである。
私が勝手に決めた私だけが守るルールであるからだ。

Date: 12月 18th, 2013
Cate: マルチアンプ

マルチアンプのすすめ(その19)

仮想同軸配置といえるJBLのパラゴン。
このパラゴンを構成する三つのユニットの位置は、
通常のスピーカーシステムでは考えられないほど離れている。

ウーファーがもっとも奥に位置して、
トゥイーター、スコーカーが、ウーファーのホーンの開口部に取り付けられている。

それぞれのユニットから放射された音が、
聴き手の耳に届くまでの時間は、ばらばらといえる。

時間軸が揃っているかどうかの観点からすれば、
はなはだ時代遅れのスピーカーシステムということになる。

このことはいまさら指摘されるまでもなく、以前からいわれていたことであり、
デジタル信号処理が実用化されはじめたころから、
パラゴンの、それぞれのユニットの時間軸を補整する、という試みは、
パラゴンに関心をよせる人ならば、考えていたことであろう。

これはたしかに実験してみたい。
いったいどういう音に、パラゴンの音が変化するのか。
そうやって鳴らしたときが、パラゴンの音の真価なのか。
そういったことを自分の耳で確かめたい。

こういったことは実際にやってみないことにはなにもいえない。
頭の中で考えれば、理想的なパラゴンの鳴らし方ということになるけれど、
実際の鳴らし方として、それが理想的といえるのか、
最上といえるのか、そこまでいかなくともより良い鳴らし方となるのか。

オーディオはやってみないことにはわからないことがある。

もしパラゴンをそうやって鳴らして、ひじょうにいい結果が得られたとしよう。
それであれば、もし私がパラゴンを自分のスピーカーとして鳴らすときに、
デジタル信号処理とマルチアンプの組合せで鳴らすかといえば、
内蔵ネットワークに戻す、と思う。

一度、どこまで鳴るのかを確認しておきたい。
そのうえで、あえてネットワークに戻して、鳴らしはじめる。

なぜかといえば、私にとってパラゴンとはそうやって鳴らすスピーカーシステムであるからだ。
パラゴンを鳴らすうえでのルール(制約)を自分で決めて、
それを守って鳴らすこと。
これはオーディオにとって重要なことだと思っている。

Date: 12月 17th, 2013
Cate: マルチアンプ

マルチアンプのすすめ(その18)

アルテックの604に限らず高域用にホーン型を採用した同軸型ユニットであれば、
ウーファーのボイスコイル位置よりも、
かなり奥まったところにドライバーのボイスコイルが位置するわけで、
このふたつのボイスコイルの距離分だけの時間差が発生する。

この問題をUREIの813は、以前書いているように内蔵ネットワークで解決している。
813が登場したときは、ネットワークがどういう構成なのか皆目見当がつかなかったけれど、
あれから30年以上経っているいまでは、技術的な知識もあるし、
インターネットで813のネットワークの回路図も手に入れることができ、
こうやっていたのか、と疑問はなくなっている。

813の回路図を利用してネットワークを自作して、試行錯誤してみるのも、
オーディオマニア的には充分に楽しいことではある。
けれどデジタル信号処理のデヴァイディングネットワークを用意して、
マルチアンプ駆動した方が、手間もかからない、といえよう。

それにネットワークを自作した場合、一回でうまくいくという保証はどこにもない。
何度か試作を重ねれば、そこにかかる費用の面でも、
マルチアンプのほうが有利になることだってある。

それにデジタル信号処理のデヴァイディングネットワークを使う方が、
ネットワークでは無理な細かな時間差の補整も可能になる。

アルテックの604の、こういう使い方は実際にやられている人はすでにおられる。
では、同じ同軸型のタンノイのユニットで、同じことをやるのか、と問われれば、
これはやらない、と即答する。

Date: 12月 16th, 2013
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(その13)

数年前に、SQ301というプリメインアンプがあったことに気がついた。
このSQ301の写真を見ていて、このときは直感で、
これは瀬川先生のデザインだ、と思えた。

SQ38FD/IIの実物、写真を幾度となく見ても一度も感じることのなかったことを、
SQ301の写真をみたときに感じ、
そのあともSQ301の写真をみるたびに、やはり瀬川先生のデザインのはず、と思ってしまう。

間違っている可能性もある。
それでも、SQ301は瀬川先生のデザイン、と確信できる雰囲気があり、
これがマランツのModel 7に感じている良さと、私の中では共通するところでもあるから、
そうとしか思えないのだ。

Date: 12月 15th, 2013
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(その12)

ラックスは日本のメーカーである。
そのラックスを代表するアンプのひとつにあげられるSQ38FD/II。
このアンプを見ていて、日本的なイメージを感じるのかといえば、
私個人だけなのかもしれないが、微妙なところがある。

マランツのModel 7に私が感じている日本的なイメージを、
不思議なことに日本のアンプであり、ほぼ間違いなく日本人がデザインし、日本で製造されたアンプ、
しかもModel 7のデザインが、その下敷きとなっているSQ38FD/IIをみても、
日本的なイメージを感じとれないのは、なぜなのかが自分でもはっきりとしなかった。

このことが、SQ38FD/IIのデザインが、瀬川先生のデザインだとなかなか思えなかった最大の理由である。

瀬川先生が感じられていたModel 7のデザインのよさと、
私が感じているそれとでは、同じところもあれば違うところもあることだろう。

だから、私が感じている、Model 7の日本的なイメージを瀬川先生が感じられていたのかは、わからない。
そうではなかった、ともいえるわけで、
そうなると、SQ38FD/IIのデザインが、瀬川先生ではない、とする理由はなくなるわけだ。

それに瀬川先生はユニクリエイツというデザイン事務所で、ラックスからの出サインの依頼を受けられていた。
つまりラックスからみれば外注ということになる。

ユニクリエイツが優れたデザインを提案し採用されても、
そのままのデザインで世に出るとは限らない。
いくつかの事情により、ラックス社内でデザインに手が加えられることは、
他のメーカー、他の業種でもあることだ。

SQ38FD/IIも、そういう例かもしれない。
そう考えることはできる。
それでも、私には、どうしてもSQ38FD/IIが瀬川先生のデザインだ、と思えないところがあった。

Date: 12月 14th, 2013
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(その11)

ラックスのSQ38FD/IIは誰のデザインなのか、ではなく、
私が関心があるのは瀬川先生のデザインなのかどうかである。

SQ38FD/II(CL35III)のパネルデザインは、マランツのModel 7のパネルが、
その下敷きとなっている。

瀬川先生が、Model 7のデザインをどう評価されていたのかをまったく知らなければ、
SQ38FD/IIのデザインが、瀬川先生なのかどうか、ということに関心をもつことはなかったかもしれない。

Model 7とSQ38FD/IIのデザインは、違うといえば、かなり違うといえる。

Model 7のデザインをみていると、
ふとしたことで、日本的なイメージを受けることがある。

マランツはいまでこそ日本のオーディオメーカーてあるが、
いうまでももともとはアメリカのオーディオメーカーであり、
1970年代は、アメリカで設計して日本で製造だったこともあるが、
Model 7の時代は、アメリカのオーディオメーカーであり、アメリカで開発・製造されたアンプである。

しかもアメリカが豊かだった時代のアンプでもある。
そんなModel 7のパネルをみて、日本的なイメージを感じる、ということは、
お前のデザインへの感性がおかしいのだ、といわれるかもしれない。

それでもいい、
日本的なイメージをそこに感じとってしまうとき、
私にはModel 7のデザインが良くみえるときでもあるのだから。

Date: 12月 13th, 2013
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(その10)

いつ誰にきいたのかはもうはっきりとしないけれど、
ラックスのアナログプレーヤー(ターンテーブル)のPD121は、瀬川先生のデザインだときいた。

PD121は、テクニクスのSP10と同盗品でありながら、
SP10の、素っ気なさすぎるデザインとは違う、魅力的なプレーヤーとして仕上げているところに、
PD121は、愛用したい、と思わせる魅力がある。

ステレオサウンド 38号に載っている瀬川先生のリスニングルームにも、
EMTの930stの他に、PD121が写っていた。

そのPD121が瀬川先生のデザイン、であるとすれば、
PD121はいつかは手に入れたい、手もとに置いておきたい、と思っていた。

けれど、ほんとうに瀬川先生のデザインなのかを検証していくと、
どうも違っていることがわかってきた。

瀬川先生と一時期デザインの仕事を、同じ事務所でされていた木村準二さんのデザインである。

瀬川先生と木村さんは、ユニクリエイツというデザイン事務所を立ち上げられて、
ラックスのデザインの仕事をされていた。
PD121は、だからユニクリエイツのデザインということで、
そこから瀬川先生のデザインというふうにすりかわっていったのだろう。

いまでもPD121のデザインは、瀬川冬樹である、と書いている個人サイトがあるが、
木村さん本人に確認しているから、PD121は木村さんのデザインであり、
PD121のデザインをラックスの社内でみたとき、瀬川先生が悔しがられていた、という話も、
瀬川先生とデザインの仕事を一緒にされていた神戸さんからきいている。

PD121のデザインは木村さんだということは以前も書いているけれど、
瀬川冬樹デザインということが、いまも信じられているので、もういちど書いた次第。

このこともあって、SQ38FD/IIのデザインは、瀬川先生なのか、それとも違う人なのか、
自分のなかではっきりとした答を出せずにいた。

Date: 12月 13th, 2013
Cate: 再生音

続・再生音とは……(虚構世界なりせば)

「虚構世界の狩人」は、
瀬川先生の著書のタイトルである。

いいタイトルだと思うし、瀬川先生も気に入られていた、ときいている。

「虚構世界」──、
音だけのオーディオの世界、
それもモノーラルではなくステレオフォニックになってからのオーディオの世界は、
まさしく「虚構世界」である。

虚構世界であるならば、そこに「正しい音」は存在しない、と考えべきなのかもしれない。
虚構世界であるからこそ、そこに「正しい音」とはなんなのかを考えていくべきなのかもしれない。

Date: 12月 13th, 2013
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(その9)

ラックスのSQ38FD/II、CL3535IIIのパネルデザインが、
マランツのコントロールアンプ、Model 7のデザインの影響を強く受けていること、
Model 7のデザインをベースにした、といってもいいだろう、
そういうデザインであることは、
これらのアンプの存在を知った中学生の時には気づいていたし、
デザインに多少なりとも関心のある人ならば、多くの人が気づくことでもあろう。

Model 7のフロントパネルには、ロータリースイッチ、ロータリボリュウム用のツマミが、
上下二段で四つ、左側にあり、中央にはレバースイッチがやはり四つ並ぶ。
そして右側には左側のツマミよりも径の小さなツマミが、左側と同じく上下二段で四つあり、
左端にスライド式の電源スイッチが、ちょこんとついている。

完全な左右対称ではないけれど、
左右対称のデザインを、ほんのすこしくずしたデザインといえる。

ラックスのSQ38FD/II、CL35IIIのツマミのレイアウトは、
マランツのModel 7をベースにしているといえる。
もちろん、まったく同じというわけではないが、あきらかにModel 7を強く意識しているデザインである。

中学生のころは、Model 7をベースにしたんだな、というところで止っていたけれど、
数年後に、ラックスのデザインは瀬川先生がいくつか担当されていた、ということをきいた。

こうなるとSQ38FD/IIのデザインに対する関心は,より深くなっていった。
いったい、このデザインは誰によるものなのか。

瀬川先生がModel 7のデザインを高く評価されていることは知っていたからこそ、
瀬川先生によるデザインなのか、それとも別の人のデザインなのか。
はっきりしたことはわからなかったし、判断もつき難かった。

Date: 12月 12th, 2013
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(その8)

ラックスの管球式プリメインアンプの代名詞ともなっているSQ38シリーズ。
昭和38年(1963年)に登場した初代SQ38は、よく知られるSQ38のデザインではなかった。
よく知られる、いわゆるSQ38のデザインになったのは、SQ38Fからであり、1968年以降のことである。

同じパネルデザインをもつコントロールアンプCL35は1970年発売。
CL35もまた管球式アンプである。

この二機種だけをみていると、
SQ38FのデザインがCL35にも採用された、ということになるが、
もう少し詳しくラックスのアンプについて眺めていくと、
1967年にSQ301が登場していて、このアンプのデザインが、のちのSQ38Fであり、CL35のそれである。

SQ301はトランジスター式のプリメインアンプである。
SQ38F、CL35のデザインはまったく同じかというと、若干違うところはある。
インプットセレクターとモードセレクターのツマミが、
SQ38F、CL35では形状が円から長方形へと滑らかに変化していくのに対して、
SQ301では円筒状(一部カットしてある)である。

それからフロントパネル中央にあるレバースイッチのツマミ、
パネル右下にある電源スイッチとスピーカースイッチのツマミが、
SQ301と基本的な形は同じなのだが、SQ38F、CL35ではボリュウム感のあるものに変更されている。
それにレバースイッチの数もSQ301は四つだが、SQ38F、CL35では五つ、という違いもある。

これらの違いからSQ301のほうがすっきり、ともいえるし、ややおとなしい控え目な感じがする。
とはいえSQ38F、CL35のパネルデザインはSQ301のパネルデザインの改良版であることは、
誰の目にも明らかなことだ。

Date: 12月 12th, 2013
Cate: デザイン

オーディオ・システムのデザインの中心(その15)

テクニックだけを堂々とひけらかす、
そんな演奏は、音楽として美しいといえるだろうか。

そういう演奏は、凄いと思わせるところがないわけでもない。
だが、凄いは、美しいとはほとんど関係のないことである。

レコード演奏家として求めていくものは、精進していくものは、
そういったテクニックではなく、美であるはずだ。

その美がなかったからこそ、フランケンシュタインがつくり出した「理想の人間」は、
理想の人間ではなく怪物と呼ばれるようになったのと、同じことではないのか。

そんなことはない、いい音で鳴れば、そこには美がある。
どんなオーディオ機器の配置をしようと、ぶざまなケーブルの這わせ方をしようとも、
その結果得られる音が良ければいいわけだ──、
という考えは、もう捨て去るべきであるし、いつまでもそんなことをいっていては幼稚なだけである。

それでも個人で満足してやっているのであればまだいい。
ひどいのになると、誰かのところへ出かけていって、そんな機器の配置やケーブルの這わせ方をして、
音が良くなっただろう、というのがいることだ。

そんな人がいう、音が良くなった、というのは、音が変った、ぐらいに思っておけばいい。
そこには、美はないのだから。

Date: 12月 12th, 2013
Cate: マルチアンプ

マルチアンプのすすめ(その17)

タンノイをはじめとするイギリス系のスピーカーシステムに関してはマルチアンプ駆動は考えていない、
と書いておきながら、
同じタンノイのスピーカーシステムでも、Kingdom(現行製品のKingdom Royalではなく、最初のモデル)なら、
全帯域のマルチアンプ駆動は考えないものの、46cmウーファーだけは専用アンプをもってきたい。
いわゆるバイアンプ駆動を試みてみたい。

結局、マルチアンプにするのかしないのか、は、
私の場合、そのスピーカーシステムが生れた国と関係していながらも、
Kingdomのように、これは積極的にマルチアンプで鳴らしたいスピーカーシステムもある。

マルチアンプにするのかしないのか、
その分れ目はどこにあるのか、私の中にはどうもはっきりと存在している、と感じているけれど、
それを言葉にして書くとなると、意外に難しいことに気づく。

ではイギリスを始めとするヨーロッパ以外のスピーカーシステムに関してはどうかといえば、
JBLのシステムだから、といって、すべてのJNLのスピーカーをマルチアンプで鳴らそうとは思っていない。

4350、4355といった、JBL側がバイアンプ仕様としているスピーカーシステムを除いて、
バイアンプをふくめてマルチアンプで鳴らしたいのは、4343が最初にくる。

内蔵ネットワークで鳴らす4343のスタイルもいいと思っていても、
瀬川先生が書かれていたころのステレオサウンドを熱心に読んできた者には、
どうしても4343はいちどはマルチアンプ(バイアンプ)で鳴らしてみたいスピーカーなのである。

他に何があるだろうか。
自分の手で鳴らしてみたいスピーカーシステムで、しかもマルチアンプで、というスピーカーシステムが。

アルテックの604シリーズは、同軸型ユニットのメリットを最大に活かす、という意味で、
デジタル信号処理のディヴァイディングネットワークによるマルチアンプ駆動は、ぜひやってみたい。

Date: 12月 11th, 2013
Cate: マルチアンプ

マルチアンプのすすめ(その16)

私のなかでは、イギリスのスピーカーシステムを中心に、
ヨーロッパのスピーカーシステムをマルチアンプで鳴らそうという気持は、
ほとんどというより、まったくない。

仮にヴァイタヴォックスのCN191、タンノイのAutographを自分のモノとして鳴らすことになり、
これらのスピーカーから最上の音を出そうとしてマルチアンプ化するかといえば、やらない。
シーメンスのオイロダインに関してもそうだ。
オイロダインをマルチアンプで鳴らそうと考えたことはない。

だからといって、メーカーでマルチアンプ仕様としているスピーカーシステムを認めないわけではない。
メリディアンのM20はマルチアンプで、いいスピーカーだと思っている。

私はPM510を選んだが、PM510という存在がなければマルチアンプ仕様のLS5/8に惚れ込んだかもしれない。

これらの他にも聴いたことがないから、よけいにいまでも聴きたいと思っているスピーカーシステムに、
ドイツのK+Hのモニタースピーカーがある。
O92とOL10である。
どちらもマルチアンプ仕様の3ウェイ・システムだ。

もうひとつ、KEFのModel 5/1ACだ。
KEFが独自にLS5/1Aをマルチアンプ仕様にモデファイしたモデルである。
LS5/1Aの時代は管球式の専用パワーアンプ(高域補整を行っていた)がついていたが、
Model 5/1ACではトランジスターアンプになり、マルチアンプ化された。
ユニット構成に変更はない。

昔からヨーロッパ製のスピーカーシステムにはアンプ内蔵で、マルチアンプ仕様というものが存在していた。
いわゆるアクティヴ型スピーカーシステムと呼ばれる形態であり、
パワーアンプを自分の好きなモノにできないということで、
アクティヴ型を敬遠する人もいるけれど、私はそのことに特にそういう気持はない。

Date: 12月 10th, 2013
Cate: マルチアンプ

マルチアンプのすすめ(その15)

ロジャースのPM510を鳴らしていた。

PM510は30cm口径のポリプロピレン振動板のウーファーとソフトドーム型トゥイーターからなる2ウェイ。
同じユニット、エンクロージュアでバイアンプ駆動仕様のLS5/8がある。

LS5/8はQUADの405にディヴァイディングネットワークを内蔵した仕様。
LS5/8は一度聴いたことがある。
PM510との直接比較ではなかったけれど、
私はPM510の方が好きだった。

PM510に感じている音の魅力が、LS5/8では薄れている気がした。
もっともPM510をQUADの405で鳴らした音と比較すればマルチアンプ(バイアンプ)のLS5/8の良さを、
はっきりと認識できたのかもしれないが、
ネットワーク仕様のPM510を、さまざまなパワーアンプで鳴らした音を比較するかぎりは、
私にとってはPM510の方だということになる。

PM510は満点のスピーカーシステムではない。
欠点もいくつもある。
でも、その欠点の裏返しが、私にとって魅力ともなっていることはわかっていたし、
PM510をよりよく鳴らすためにマルチアンプ化することは、
私にとって必ずしも音が良くなった、とは感じない可能性があるようにも考えていた。

PM510についても、一度もマルチアンプで鳴らそうと考えたことはなかった。

Date: 12月 10th, 2013
Cate: 程々の音

程々の音(その6)

タンノイ・コーネッタのことは、
「コンポーネントステレオの世界」の’77から’79までの二年間で、
コーネッタがどういうスピーカーで、どういう評価を得ているのかは、なんとなく知っていた。

’77のときは予備知識もなしに、なんだかいい感じのするスピーカーだな、と思っていた。
’79のときは、コーネッタについてある程度知識が出来ていたから、
その分だけ部屋の雰囲気が、よけいに気に入ったのかもしれない。

六畳の部屋。
決して広いとはいえない空間だが、
「コンポーネントステレオの世界 ’79」の写真は、男ひとりの部屋であり、
六畳とはいえ、そこは音楽を聴くことを優先した空間である。

「コンポーネントステレオの世界 ’79」では、
この部屋の写真が三つ載っている。
西向きのレイアウト、南向きのレイアウト、東向きのレイアウトである。

この六畳間は南側の短辺が窓になっている。
北側に収納スペースとドアがある。

つまりコーナー型のコーネッタをどう置くのか。
左右のコーネッタをコーナーに接地するには、この部屋の構造では南向きのレイアウトしかない。
このレイアウトではスピーカー間の距離があまりとれない。
西向きと東向きだと、片側のコーネッタがドアか収納の扉に重なるため、コーナーが片側確保できなくなる。

専用リスニングルームとして設計されていない部屋の、現実的な問題が、
ここで取り扱われている。

三つのレイアウトのどれがベストなのか、については書いていない。
それが正しい、といまは思う。

この部屋のページの文章の最後には、次のように書かれている。
     *
できれば個々の例をレイアウトして使ってみることが望まれます。というのは、しばらく使っているうちに、頭で考えたのとは違った問題が具体的に発見できるからです。
     *
写真を見ながら、私だったら、どうレイアウトするかをあれこれ考えていたものだ。