Archive for category ブランド/オーディオ機器

Date: 8月 23rd, 2009
Cate: BBCモニター

BBCモニター考(その20)

耳の固有音に関係してくるのは、時代と風土も、無視できないだろう。

ほぼ同じだけのオーディオのキャリアもつ人がふたりいたとしても、生れた時代によって、
耳にしてきた音の性格も異る。

アクースティックな蓄音器の時代から、レコードの音を聴いてきた耳の固有音と、
ステレオ時代しか知らない世代の耳の固有音、
それからCD以降の音しか知らない世代が、これからキャリアをつんだときの耳の固有音、
これらは違って当然だろう。

1963年生れの私は、オーディオに関心をもつまでに、もっとも長く耳にしていたスピーカーの音は、
それはテレビに内蔵されているスピーカーの音であり、ラジオのスピーカーだった。
幼いころにあったテレビは、まだ真空管式だったはずだ。
スピーカーは、紙コーンのフルレンジ型。

テレビも音声多重放送がはじまると、フルレンジ型だけでなく2ウェイ構成のものも登場してきた。
ラジカセも、私が学生のころはフルレンジだけだったのが、いつのまにかマルチウェイ化されていった。

テレビ、ラジオといった身近なスピーカーの音も、時代によって変化している。
外に出ればわかるが、いま音楽を聴くのは、
スピーカーよりもヘッドフォン、イヤフォンが多いという人も増えている。

キャリア(時間)が同じだとしても、
ステレオサウンドの「スーパーマニア」に登場した人たちと同じ構成の装置を、
これからの人たちの耳が選択するとは思えない。

これはどちらがレベルが高いとか、センスがいいとか、そういったことではなく、
生まれ育った時代による耳の固有音の形成され方の違いということでしかない。

Date: 8月 23rd, 2009
Cate: BBCモニター

BBCモニター考(その19)

耳の固有音について考えると、もちろん個人差があるし、同じひとりの人間でも、
それまでの体験の蓄積によって、耳も成長し、耳がもつ固有音も変化していくのだろう。

ステレオサウンドの50号ごろからはじまった「スーパーマニア」の連載の初期のころに登場された方々が、
なぜ真空管アンプ(それもシングルアンプが多かったように記憶している)で、
高能率のスピーカーを鳴らされていることに、つよい関心があった。

そういった方々の多くの人は、そうとうな遍歴を経た上で、誌面に登場されたときの装置を選択されている。

そのとき、まだ10代なかばだった私は、関心をもちながらも、その理由についてはまったく想像できなかった。
けれど、耳の固有音の形成如何によっては、それまでどういう音を聴いていたかによっては、
高能率スピーカーと真空管のシングルアンプの組合せが、無色透明とはいかないまでも、
意外にも、それほどつよい個性を感じさせずに、自然と音楽が響いてくる音なのかしれないと、
ここ数年思うようになってきた。

これが歳を重ねるということなのだろう。

Date: 8月 23rd, 2009
Cate: Autograph, TANNOY, ワイドレンジ
2 msgs

ワイドレンジ考(その45・続×五 補足)

約5mの壁面いっぱいに左右に拡げて設置されたオートグラフが、
「五メートル幅の空間をステージ」する。

想像でしかないが、五味先生のオートグラフは、壁面いっぱいに拡がる音を響かせていたのだろう。
左右のスピーカーの内側に展開するステージ(音場感)ではなく、
スピーカーの外側まで──といっても、コーナーに設置されているから、
エンクロージュアの外側の縁まで、ということになるのだろうが──拡がるステージを、
五味先生は聴いておられたし、感じとられていたのだろう。

だから、私の中では、5mの壁面に置かれたオートグラフが、「五メートル幅の空間」を描き出すことも、
五味先生がオートグラフの間隔を約5mとされたのも、納得のいくことである。

Date: 8月 23rd, 2009
Cate: Autograph, TANNOY, ワイドレンジ
1 msg

ワイドレンジ考(その45・続々続々補足)

FATDOGさんは、オートグラフをお使いなのだろう。
どういう環境で鳴らされているのかはわからないが、
少なくとも、音の面からのスピーカーの間隔の捉え方は、五味先生と異るように感じている。

FATDOGさんは、スピーカーの間隔=エンクロージュアの内側間の距離と考えられているようだ。

五味先生はどうだろうか。
「ワルキューレやジークフリートはこの五メートル幅の空間をステージに登場するのである」と書かれている。
これは大事なところだ。

私は、ワイドレンジ考(その45・補足)で、推測した寸法は、お気づきの方もおられるだろうが、
オートグラフが設置されている壁面の左右のコーナー間の距離である。
ここが約5mはあると、ステレオサウンドの写真から、判断したわけだ。

ステレオサウンドの写真は、FATDOGさんが指摘されているように、
斜めから広角レンズで撮られている。
私も編集経験者だから、広角レンズで部屋の写真を撮ったときに、
どのくらい実際よりも広く感じられるかは承知している。

Date: 8月 23rd, 2009
Cate: Autograph, TANNOY, ワイドレンジ

ワイドレンジ考(その45・続々続補足)

五味先生のリスニングルームに行ったことはない。
おそらくFATDOGさんも行かれておられないだろう。

だから五味先生のオートグラフの間隔、部屋の大きさについて正確な数値について議論したところで、
決着はつかないだろう。

それでも書いておきたいのはスピーカーの間隔とは、どこからどこまでかということである。
これは、スピーカーの構造と密接にからんでくるため、一概にはスピーカーユニットの中心から中心まで、とか、
エンクロージュアの内側同士の間隔とはいい切れない面が残る。

タンノイ・オートグラフに関するかぎり、あくまでも私見だが、五味先生は、エンクロージュアの後面の先端、
つまり部屋に設置した状態では、コーナーそのものだと思う。

オートグラフは、ご存じのようにフロントショートホーン付だけに、通常のスピーカーシステムよりも、
ユニットはやや奥まった位置にある。
さらに中高域のダイアフラムの位置は、さらに奥まった位置だ。

五味先生が、オートグラフのにおいて、その間隔は、どう捉えていておられたか、は、
ワイドレンジ考(その45)で引用した文章の中にある、と私は思う。

Date: 8月 22nd, 2009
Cate: Autograph, TANNOY, ワイドレンジ

ワイドレンジ考(その45・続々補足)

私にとって、タンノイ・オートグラフは、特別な存在であり、憧れのスピーカーとしか言いようがない。

だから、ふつうならば、部屋に入るかぎり、どんなに狭い部屋でも大型のスピーカーシステムを使うことに、
まったくの抵抗感はないのだが、オートグラフだけは、私にとっては違う

部屋に入りさえすれば、使おう、鳴らそう、という気持はおきない。
どうしてもオートグラフだけは、ここまでやれば、
「オートグラフも満足してくれるだろう」と思わえるぐらいの環境を用意できて、
はじめて鳴らしてみたいスピーカーシステムである。

だからといって、オートグラフを、比較的狭い部屋で鳴らされる人に対して、
あれこれ言うつもりはまったくない。

けれど、ワイドレンジ考で書いていく予定だが、
私は、オートグラフをワイドレンジ志向のスピーカーと捉えている。
この点が、ウェストミンスターと大きく異る点であるとも考えている。

オートグラフを、ここ(ワイドレンジ考)で取り上げている理由は、ここにある。
だからこそ、私は、できるだけコーナーホーン型スピーカーシステムにとって理想的な環境で、
オートグラフを鳴らしてみたいとも考えている次第だ。

Date: 8月 22nd, 2009
Cate: Autograph, TANNOY, ワイドレンジ
6 msgs

ワイドレンジ考(その45・続補足)

私は、基本(その5)に書いたように、信じると決めた人はとことん信じるようにしている。
だから、五味先生が「約五メートル間隔で壁側においている」と書かれているのだから、
そのことを疑おうとは、いままで思ったことはない。

FATDOGさんは、この「約五メートル間隔」の「約」にこだわっておられるようだが、
「約五メートル」とは、どのくらいの長さなのだろうか。
まさか3mほどの長さを、いくら頭に約をつけたからといって、5mという人はまずいないだろう。
4m前後の長さでも、これは約4mであって、約5mとは言わない。
どんなに短くても4m後半の長さから5m前半の長さくらいまでが、「約五メートル」のはずだ。

こういう感覚は人それぞれだろうが、私の感覚では「約五メートル」は4.8mから5.2mくらいの範囲のことである。
「約五メートル」には、5m以下も5m以上も含まれるわけだ。

「約五メートル」から、20cmほど短かったとしよう。
それが、どうしたというのだ、が、私の正直な本音である。

不思議なのは、FATDOGさんも、「五味先生」と書かれている。
なのに、書かれているものを信じられないのだろうか。

五味先生が「約五メートル」と書かれていたのは事実だし、
それが4m80cmしかなかったとして、足りない20cmが、
FATDOGさんにとって、どういう意味をもつのだろうか。

Date: 8月 22nd, 2009
Cate: Autograph, TANNOY, ワイドレンジ

ワイドレンジ考(その45・補足)

ワイドレンジ考(その45)に対し、FATDOGさんがコメントを書きこまれた。
コメント欄に返事を書いていたが、どうにも長くなりそうななので、こちらに答えることにする。

まず書いておきたいのは、FATDOGさんは、私が5m以上と書いているとされているが、
私はどこにも書いていないということ。
コーナーホーン型スピーカーシステムの本領を発揮させるには、
低音の波長の長さから、5mくらい間隔をとりたいと書いているのは、
ひとつ前のワイドレンジ考(その44)においてである。

5mくらいと書いているが、5m以上とは書いていない。
5m以上、という言葉が出てくるのは、このひとつあとのワイドレンジ考(その46)で、
瀬川先生の言葉を引用したものである。

FATDOGさんにお願いしたいのは、まず、ここのところを混同しないでいただきたいこと。

FATDOGさんは、新潮社から出た「オーディオ遍歴」の写真を見て、
五味先生のオートグラフの間隔は5mはないと判断されたようだが、
その写真を私は見ていないので、これについては返事のしようがない。

ただ私は、ステレオサウンド 55号、62〜63ページに掲載された写真を見て、
オートグラフの間隔はかなり広いと思っている。

この写真を見れば、おわかりになると思うが、
左チャンネルのオートグラフのところに木製の扉がある。
一般的に扉の高さは1.8m以上はある。

真正面から撮られた写真ではないし、こういう写真から正確な数値を割り出す技術は私は持っていないが、
扉の幅は80cm程度はあると思われる。

スピーカー中央には障子の窓があり、ここも80から90cmはあるように思う。
そして右チャンネルのスピーカーのところも左チャンネルと同じつくりだと判断できる。

とすれば、窓にも扉にも枠があり、この部分の寸法を加えれば、
5mくらいは十分あると判断してもいいのではないだろうか。

Date: 8月 21st, 2009
Cate: Autograph, TANNOY, ワイドレンジ

ワイドレンジ考(その47)

五味先生の「不運なタンノイ」(「西方の音」所収)には、
「HiFi year bookをしらべたら、私の聴いているスピーカーシステムは、スタジオ・モニター用に放送局で使用するためのものだと、明記されている。」と書かれているから、
にわかには信じられないという人も少なくないと思うが、
タンノイ・オートグラフはモニタースピーカーとして開発・設計されたものということになる。

HiFi year Bookは、ヨーロッパ旅行中の五味先生に、スイス人のオーディオマニアから贈られたもので、
英国の出版社から発行されていたこの本は、
当時の、ほぼすべてオーディオ機器の写真、スペックが掲載されており、
この本の1963年度版で、五味先生はオートグラフの存在に気づかれることになる。

Date: 8月 20th, 2009
Cate: Autograph, TANNOY, ワイドレンジ
1 msg

ワイドレンジ考(その45)

オートグラフを、五味先生はどのくらい間隔で設置しておられたのか。

「西方の音」所収の「タンノイについて」で、
「私はタンノイ二基を dual concentricunit として、約五メートル間隔で壁側においている。壁にはカーテンを垂らしている。ワルキューレやジークフリートはこの五メートル幅の空間をステージに登場するのである。」
と書かれている。

やはり5mの間隔を確保されている。

そういえば、いま五味先生のオートグラフ他、オーディオ機器のすべては練馬区役所で保管され、
これらの機材を使ってのレコードコンサートが、ほぼ定期的に行なわれている。

私も一度行ったが、そのとき、区役所の担当者の説明では、この部屋を選んだ理由は、
「五味先生がオートグラフの設置されていた間隔が、ちょうどこのぐらいだったからです」と。

だが、あきらかに狭い。5mはどうみてもない。
五味先生と親しかった方が、「このくらいの間隔」だと指示したとことだ。
なぜ、五味先生本人が書かれている5mよりも、短くなるのだろうか。
不思議な話もあるものだ。

Date: 8月 20th, 2009
Cate: Autograph, TANNOY, ワイドレンジ

ワイドレンジ考(その44)

オートグラフは、しかもコーナーホーン型スピーカーシステムである。
コーナーに設置し、壁を、低音ホーンの延長として利用する。

ホーン型スピーカーは、ホーンが長いほど低音再生能力は、下の帯域まで伸びる。
つまり壁、床が堅固で、響きのいい材質でつくられていても、左右のスピーカーの間隔が狭ければ、
終に真価は発揮し得ない(はずだ)。

ほんとうは断言したいところだが、オートグラフ、もしくは他のコーナーホーン型スピーカー、
ヴァイタヴォックスのCN191やエレクトロボイスのパトリシアン・シリーズを、
私が理想的と考える部屋で鳴らされているのを聴いた経験がないし、
さらに狭い部屋、広い部屋でどのように低域のレスポンスが変化するのか、その測定結果も見たことがないから、
推測で述べるしかないのだが……。

おそらくコーナーホーン型スピーカーは、左右のスピーカーの間隔が3m程度では、
おそらく設計者の意図した低域レスポンスは望めないだろう。

5mくらいは、低域の波長の長さからすると、最低でも必要とするであろう。
それだけの広さと、それに見合うだけの天井高さも求められる。
そして、くり返すが、良質の材質による堅固な造りの部屋でなければならない。
コーナーホーン型スピーカーシステムは、なんと贅沢なものなのかと思う。

Date: 8月 20th, 2009
Cate: Autograph, TANNOY, ワイドレンジ

ワイドレンジ考(その43)

適切に設計されたコーナー型スピーカーシステムであれば、
しっかりした壁と床を確保できれば、低域のレスポンスを改善できるといえる。

たとえレスポンスの上昇が6dBだとしても、これを電気的に補整するためには、
パワーアンプにそれだけの負担がかかる。6dBアップだと、4倍の出力が求められる。
そして、当然ウーファーには、それだけのストロークが求められる。

いまのように数100Wの出力のあたりまえになり、ウーファーのストロークも充分にとれるのであれば、
電気的な補整も実用になるが、タンノイのオートグラフが登場した時代は、
真空管アンプで、出力は大きいもので数10W。
ユニットのほうも同じようなもので、モニターシルバーの最大許容入力は25Wだ。

だから、低域のレスポンスを伸ばすには、コーナー効果の助けを必要とした。

Date: 8月 19th, 2009
Cate: Autograph, TANNOY, ワイドレンジ

ワイドレンジ考(その40)

蓄音器の音に通じる音の響きをもつタンノイの中にあって、
オートグラフは、その意味でまさしく頂点にふさわしい構造と音と響きをもつ。

その現代版といわれるウェストミンスターを、だから井上先生はスピーカーではなく、
「ラッパ」と呼ぶにふさわしいと判断されたのだろう。

以前、オートグラフをベートーヴェン、ウェストミンスターをブラームスにたとえもしたが、
このふたつのスピーカーは、構造的、設計面で、ひとつ大きく違う点がある。

コーナー型であるかどうかである。

オートグラフはコーナー型、それもコーナーホーン型である。
ウェストミンスターは、リア型を90度の角度を持たせることなく、
通常のスピーカー同様、フラットにした、タンノイ的にいえばレクタンギュラー型で、
コーナーに置くようには設計されていない。

Date: 8月 17th, 2009
Cate: MC2301, McIntosh, ショウ雑感

2008年ショウ雑感(その2・続×九 補足)

ML6の場合、アンプ本体の上側を左チャンネル、下側を右チャンネルとして、
外部電源の左チャンネル用を上の口のコンセントから、右チャンネル用を下の口からとるのが、ひとつ。
そしてアンプはそのままで、電源の取り方を左右で逆にする。右チャンネルを上、左チャンネルを下へ、と。

次はアンプの上側を右チャンネルに、下側を左チャンネルで、電源の取り方も、上記のように2通りあるわけで、
合計で4通りの組合せができ、それぞれに微妙に音は異なるわけだから、
部屋の状況、スピーカーなど状況に応じて、柔軟に使いわけた方がいい。

つけ加えれば、電源コードに手を加えるのであれば、前に書いたように、
ひとつのACプラグに左右両チャンネル、2本の電源コードをまとめれば、5通りの音が得られる。

グラフィックイコライザーをどんなに駆使して、微調整をくり返しても、
周波数特性のコントロールだけでは、補整できない音のキャラクターの微妙な違いには、
こういう地味な工夫が、意外と効果的だったりすることもある。

Date: 8月 16th, 2009
Cate: MC2301, McIntosh, ショウ雑感

2008年ショウ雑感(その2・続×八 補足)

人が作り出すものである以上、どれほど厳格に品質管理されていようと、若干のバラツキまでは排除できない。

技術がこれから先飛躍的に向上し、アンプに代表される電子機器のバラツキが完全になくなったとしても、
スピーカーがこれまでの形態の延長線上にあるかぎり、バラツキがなくなるとは思えない。

そしてそのスピーカーが設置される部屋が、完全に左右条件が同じであること、
左右チャンネルの音がまったく同じであることは、まずあり得ない話である。
だから現実と折り合いをうまく見つけ出すのも、大事なポイントとなってくる。

マークレビンソンのML6を2段重ねで使う際、
たいていは上のML6を左チャンネル、下の方を右チャンネルとしがちだが、
なにもこれはこだわることはなく、左チャンネルを下のML6にしてもいい。

ML6の場合、外部電源も左右チャンネルで独立しているため、
左右チャンネルのどちらを、電源コンセントの上の口からとるかということを含めると、4通りの接続が試せる。