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Date: 9月 18th, 2015
Cate: James Bongiorno

ボンジョルノとレヴィンソン(その7)

神経質とこまやかな神経とは決して同じではない。

こまやかを細やかと書くか濃やかと書くか。
これもけっして同じとはいえない。

マーク・レヴィンソンとジェームズ・ボンジョルノについて書いているが、
ふたりの違いを端的に書けば、神経質か濃やかな神経かということになる。

もちろん神経質なのはマーク・レヴィンソンであり、
濃やかな神経なのはジェームズ・ボンジョルノである。

マーク・レヴィンソンが神経質であることに認める人でも、
ジェームズ・ボンジョルノが濃やかな神経の人であると思う人は多くないかもしれない。

GASやSUMOといったネーミングにしても、
GASのデビュー作であるAMPZiLLAのネーミングとそのデザイン、
どこかふざけているように受けとめてしまう人はいるはずだ。

ボンジョルノが濃やかな人だとは、私はすぐには気づかなかった。
ステレオサウンドに載っているGASの一連のアンプの評価を読んでいるだけでは、
そのことに気づくことはなかった。

結局、ボンジョルノのアンプの音を聴いてみるしかなかった。
だからといって聴けばすぐにわかることもあればそうでないこともある。

GASのアンプにしろSUMOのアンプにしろ、聴いてすぐにわかる良さはある。
けれど、ボンジョルノを濃やかな人と気づくようになるには、
私の場合、しばらくの期間を聴き込むことが必要だった。

つまり自分のモノとしてつきあうことが必要だった。
そうやって気づく良さがあり、
そのことに気づいた上で、もう一度、GAS、SUMOのアンプの評価を読むと、
特に井上先生、山中先生の新製品紹介のページを読みなおすと、また気づくことがある。

Date: 9月 17th, 2015
Cate: James Bongiorno

ボンジョルノとレヴィンソン(と五味康祐氏)

ステレオサウンドの原田勲氏が、五味先生が亡くなられた直後、
藝術新潮に書かれた「五味先生を偲んで」に、こう書いてある。
     *
 シャイな先生は、ご自分の根本のところでの真面目さをひたかくしにされていた。ひたかくしに、かくしたいからこその〝奇行〟にも真面目にはげまれてしまうのであった。
     *
いくつかのことを思っていた。
そのひとつがジェームズ・ボンジョルノのことだった。

ボンジョルノのGAS、SUMOと行った会社のネーミング、
AMPZiLLA、THAEDRA、THE POWER、THE GOLD、その他のアンプのネーミング、
このことが五味先生の〝奇行〟と重なってきた。

根本のところでの真面目さをかくしたいからこそのネーミングなのかもしれない。

ほんとうのところはわからない。
ただ「五味先生を偲ぶ」を呼んで、そう感じたことがある。

Date: 9月 17th, 2015
Cate: James Bongiorno

ボンジョルノとレヴィンソン(その6)

マークレビンソンの最初の、そして代表的なアンプといえば、やはりLNP2となる。
LNP2は、Low Noise Preamplifierの略である。

LNC2は、Low Noise Crossover Networkの略だと思う。
LNC2を知った中学生のころは、Low Noise ChannelDividerだと思っていた。
日本ではマルチアンプシステムを組み場合に必要となるエレクトリッククロスオーバーネットワークを、
チャネルデバイダー(略してチャンデバともいう)と呼ぶことが多い。
けれどアメリカでは、そうは呼んでいない。
だから、おそらくCrossover Networkの方だと思われる。

ヘッドアンプのJC1、薄型のコントロールアンプJC2は、設計者のJohn Curlの頭文字である。

JC2は1977年にML1と型番が変更された。
MLとは、いうまでもなくMark Levinsonの頭文字である。
つまりMLシリーズは、設計者がジョン・カールではなくマーク・レヴィンソンに変ったことを意味している──、
そう日本では当時伝えられていた。

ジョン・カールとマーク・レヴィンソンが仲たがいしたのは、
この件が大きかった、とジョン・カールに以前にインタヴューしたときに聞いている。

そういえはディネッセンから1980年代に登場したコントロールアンプは、
ジョン・カールの設計で型番はJC80だった。

ジョン・カールがJCという型番にこだわるのは、それだけプライドがあってのことだろうが、
それにしても……、と思うところも正直ある。
レヴィンソンに関しては、会社名にも型番にも自分の名前をつけるのは、いかがなものか、と、
いまは思う。

そういまは思う、のだ。
マークレビンソンのアンプを知った中学生のころは、
その会社(ブランド))名、型番もカッコイイと思っていた。
そんな時期があった。

Date: 9月 17th, 2015
Cate: James Bongiorno

ボンジョルノとレヴィンソン(その5)

マーク・レヴィンソンが興した会社はMark Levinson。
自身の名前をつけている。
マークレビンソン以前にも、創立者の名前をブランドにしたメーカーはいくつもある。
マランツ、マッキントッシュ、ボザーク、グラドなどがあり、JBLもそうである。
けれどどのメーカーも、フルネームをメーカー名にしていたわけではない。

JBLはフルネームといえなくもないが、あくまでも頭文字だけである。
マーク・レヴィンソンはメーカー名をLevinsonではなくMark Levinsonにしている。

ジェームズ・ボンジョルノはGAS(ガス)、それにSUMO(スモ)である。
GASは以前書いたようにGreat American Soundであり、
SUMOは相撲である。

ステレオサウンド 52号のインタヴューでも、社名について答えている。
     *
 私は世界中で最も日本が好きだし、その国技である〝相撲レスリング〟が大好きだから、〝SUMO〟というネーミングにしたのです。ある人から「お前が今度作ったパワーアンプを聴いたけれど、〝SUMO〟というブライドにしたのがなんとなくわかるような音だ」といわれました。しかし、私としては日本が好きで、相撲が好きだから、〝SUMO〟としただけで他意はないんです。
     *
こういうセンスはマーク・レヴィンソンからはまったく感じられない。
GAS、SUMOを、人を喰ったようなネーミングだと感じ、
そのことに対して、やっぱりボンジョルノだな、と感心する人もいれば、
不真面目な、と思う人もいる。

ボンジョルノがつくりあげたアンプの音を聴いていれば、
GAS、SUMOに対する感じ方も変ってくる。
少なくとも私はそうだった。

AMPZiLLA、THAEDRA,THE POWER、THE GOLDの音を聴き、
THAEDRAとTHE GOLDは自分のモノとしていた私は、
GAS、SUMOという会社名をボンジョルノらしいと思っているし、
この会社名を含めてのAMPZiLLAであり、THE POWER、THE GOLDである。

つまりAMPZiLLAという型番は、 GASという会社(ブランド)名といわば対だから映える、
THE POWER、THE GOLDもSUMOという会社(ブランド)名と対だから映えるのではないだろうか。

絶対にありえないことだがMark LevinsonのAMPZiLLAだったら、どう感じるか。
そぐわない。
やっぱりGASのAMPZiLLAであるべきだし、
SUMOのTHE POWER、SUMOのTHE GOLDであるべきだ。

Date: 9月 16th, 2015
Cate: James Bongiorno

GASとSUMO、GODZiLLAとTHE POWER(その6)

ステレオサウンド 52号のインタヴューで、ジェームズ・ボンジョルノはこう語っている。
(ききては長島先生)
     *
ボンジョルノ 従来のアンプですと振動板の持っているイナーシャが、信号に確実に比例した動きに逆らおうとする力として働くのです。もちろん逆起電力によってもブレーキがかかるわけですが、その時点で次の入力信号に合わせて振動板を駆動しなければならないという、じつにやっかいな仕事を強いられていたわけです。
〝ザ・パワー〟では、新しく開発した〝フォア・クォドラント差動平衡型ブリッジ回路〟によって、いままでのパワーアンプの問題点を解決したつもりです。
長島 その新しく開発された回路の基本的な考え方というのは、どういうことなのですか。
ボンジョルノ それは平衡型ブリッジの四隅から同時にフィードバックをかけることで、スピーカーの+、−側にアンプから4組の独立したプッシュプル・フィードバックをかけ、スピーカーの振動板を強制的に入力信号に比例するように動作させるというものです。
長島 今おっしゃったフルブリッジ回路によって、従来のパワーアンプとは格段の動的忠実度を達成できたんですね。
ボンジョルノ そうです。これこそ〝コンピューター・サーボ〟と呼ぶにふさわしい、本格駆動方式なのです。
     *
GASからは1978年にTHE BRIDGEが出ている。
どんな製品だったっけ……、と思われる人もいるだろう。
THE BRIDGEは、いわゆるブリッジアダプターで、トランスを使っているため電源は必要としない。
SUMOからもブリッジアダプターは出ている。
THE MOATという。こちらはゲイン0dBのユニティアンプを使っている。

THE BRIDGEを出したころは、ボンジョルノはまだGASにいたのどうか微妙になってくる。
つまりこのころから(もしくはそれ以前から)、パワーアンプのブリッジ化を考え、
AMPZiLLAを二台用意してのブリッジ接続による実験で、なんらかの手応えを得ていたのではないだろうか。

そのためのTHE BRIDGEであるわけだが、THE MOATとは内部が違いすぎる。
けれどTHE BRIDGEには、定冠詞のTheがついている。
GASの製品の型番にTheがついてるのは、THE BRIDGEだけである。

ということはTHE BRIDGEまでがボンジョルノが手がけたのだろうか。

Date: 9月 16th, 2015
Cate: James Bongiorno

Ampzilla(附録)

ジェームズ・ボンジョルノがGAS創立からSUMO創立までに手がけたアンプが、
ステレオサウンドの新製品紹介ページに登場した号をまとめておく。
(確固内はステレオサウンドの発売月)

36号(1975年9月) AMPZiLLA
37号(1975年12月) THAEDRA
38号(1976年3月) SON OF AMPZiLLA
41号(1976年12月)THOBE, GOLIATH
42号(1977年3月) AMPZiLLA II
45号(1977年12月)THALIA, GRANDSON
46号(1978年3月) THAEDRA II
47号(1978年6月) THE BRIDGE
48号(1978年9月) AMPZiLLA IIA
51号(1979年6月) GODZiLLA
52号(1979年9月) SUMO:THE POWER
54号(1980年3月) THAEDRA IIB, GAS500 AMPZILLA
55号(1980年6月) SUMO:THE GOLD, THE HALF

50号には井上肇氏による’79米国CEショー見聞記があり、
463ページにGASのGODZiLLAとSUMOのTHE POWER(プロトタイプ)の写真が隣同士で掲載されている。

36号ではSAEのMark2500も取り上げられている。
AMPZiLLAの回路図とMark 2500の回路図を比較するとはっきりすることだが、
ボンジョルノの設計がそこから読みとれる。

Mark 2500はボンジョルノが設計したわけではないが、
基本的な回路構成はボンジョルノのものといえるところがある。

そのことが関係してのことだと私は受けとっているのだが、
37号でのTHAEDRAの記事では、
試しにMark 2500を組み合わせてみたら、ひじょうにいい結果が得られた、とある。

Date: 9月 15th, 2015
Cate: James Bongiorno

GASとSUMO、GODZiLLAとTHE POWER(その5)

GASのGODZiLLAに続いて登場したSUMOのTHE POWER、さらに少し後に登場したTHE GOLD。
GODZiLLAにA級とAB級があるように、SUMOのAB級がTHE POWERでありA級がTHE GOLDである。

これら四機種は入力にアンバランスとバランス両方をもつ。
GODZiLLAが登場した1979年当時の情報でははっきりとわからなかったけれど、
その後の情報でGODZiLLAもSUMOのアンプと同じように、
フルブリッジ回路(バランス回路)であることがはっきりとした。

つまりパワーアンプ本体はバランス回路で、バランス入力で、
アンバランス入力に対応するためにアンバランス/バランス変換回路が前段に設けられているのは、
GODZiLLAもSUMOのアンプも同じである。

そして出力。
GODZiLLA Aは90W+90W、GODZiLLA ABは350W+350W、
THE GOLDは125W+125W、THE POWERは400W+400Wと近い。
GODZiLLAもSUMOも空冷ファンを使っている。

つまりGASのGODZiLLAとSUMOのTHE GOLDとTHE POWERは、仕様がほほ同じといえる。
これは単なる偶然とは思えない。
ジェームズ・ボンジョルノがSUMOを創立する直前までいた会社からも、
同じ仕様、コンセプトのパワーアンプが二機種登場するということは、
GODZiLLAの開発コンセプトはボンジョルノがGASにいたときからあったものと推測してもいいのではないだろうか。

Ampzillaの上級機というよりも最終形態として、ボンジョルノが構想したものがGODZiLLAだとすれば納得がいく。

Date: 9月 14th, 2015
Cate: James Bongiorno

GASとSUMO、GODZiLLAとTHE POWER(その4)

ステレオサウンド 51号の新製品紹介のページにGASのGODZiLLA、
52号の同ページにSUMOのTHE POWERが取り上げられている。

このころのステレオサウンドの新製品紹介のページは、井上先生と山中先生の対談によるものだった。
51号と52号のあいだは三ヵ月。
52号のTHE POWERの記事を読んでの既視感に、
やはり同じ血筋の、同じ遺伝子をもつパワーアンプなんだ、と思っていた。

51号、GODZiLLAのところには、こう書いてある。
     *
井上 マーク・レビンソンが硬めのエネルギー感とすれば、ゴジラは柔らかめのエネルギー感ですね。前者が激流としたら、ゴジラは海のように広い大河だと思う。
山中 最初はマーク・レビンソンのLNP2Lと組合せて聴いたのですが、これをテァドラに変えた時に、大河のようにとうとうたるパワー感がよく出ました。
 クラスAとクラスABを比べると、クラスAの方が音がよく磨きあげられているという感じですね。
井上 マーク・レビンソンを金属、あるいは硬質ガラスを磨き上げたような、硬さをもったつややかさとすると、ゴジラAは黒檀とか樫のような堅い木を磨きあげたような印象です。クラスAとクラスABの最大の違いは、クラスAの方が中域のエネルギー感がより強烈に出てくることですね国産のAクラスアンプとは違った力強さを十分にもっています。
     *
51号のGODZiLLAの記事は1ページだった、
52号のTHE POWERは2ページ使って取り上げられている。
これだけで注目度に違いがあることがわかる。

読めばわかるのだが、実際に評価は高い。
     *
井上 JBLの4343が、ころころと鳴らされてしまいますからね。ワイドレンジだし、特に中低域の迫力はすごい。一方、スピーカーが勝手に鳴らないように、うまくコントロールしている部分もあって、こういう性格のアンプですと一言でいいにくい面をもった製品です。大まかにいえば、マッキントッシュ的なサウンドバランスといえるかもしれません。
山中 しかし、実は全然違うのですね。
井上 そうなのです。音に対する反応は、もっと速いし。そういう意味で、非常に魅力を感じました。
山中 ちょっと聴きには当りが柔らかそうに感じるのですが、トータルなエネルギーはすごいですからね。エネルギー感のよく出る最近のアンプとしては、マーク・レビンソンのML2Lがあるのですが、この場合にはもっととぎすまされたエネルギー感でしょう。ザ・パワーの場合には、マスのある、たっぷりしたエネルギーが猛烈なスピードでぶつかってくるという感じ。ですから、ものによっては、本当に弾き飛ばされそうな印象があります。
井上 ごく初期のアンプジラにあったキャラクターがより凝縮され、よりパワフルになったというのが、一番わかりやすい説明ではないでしょうか。
 たとえば、マーク・レビンソンのコントロールアンプと組み合わせた場合は、それほど魅力は発揮されなかったと思うのですが、テァドラで鳴らしたら、途端に音の鮮度や躍動感が出てきたのです。このことからいっても、組み合わせるコントロールアンプをかなり選ぶと思います。
     *
マークレビンソンML2との対比で語られるエネルギー感のすごさ、
マークレビンソンのLNP2のときの音とTHAEDRAと組み合わせた、いわはど純正組合せといえるときの音の対比、
まったく同じことが51号と52号に書いてあるではないか。

このふたつの記事を、自分自身でTHAEDRAを使った経験を持った後で読み返すと、
GASのGODZiLLAも、ボンジョルノの設計だと思えてくる。

最終的な仕上げまでボンジョルノが手がけたかどうかは、おそらく違うであろう。
けれどアンプの核となるところの設計はボンジョルノの手によるものだからこそ、
51号と52号の記事のようになるのだろう。

Date: 9月 14th, 2015
Cate: James Bongiorno

GASとSUMO、GODZiLLAとTHE POWER(その3)

THAEDRAの、初期モデル、それもそうとうに程度のいいモノを使っていた。
自宅に持って帰る前にステレオサウンドの試聴室でいくつかのパワーアンプに接続してみたことがある。
自宅ではSUMOのTHE GOLDにつないで聴いた。

GASのTHAEDRAを、いくつかのパワーアンプと組み合わせて聴いた経験のある人なら、
きっと感じていることがあると思う。

コントロールアンプをTHAEDRAにすると、
パワーアンプの音がずいぶん変る印象を持っている。
こんなに実力のあるパワーアンプただったのか、と見直すようなこともあった。

THAEDRAはかなり熱くなるコントロールアンプである。
AMPZiLLAのごく初期モデルは入力インピーダンスが7.5kΩだった。

いまでは10kΩの入力インピーダンスが一般的になってきているから、
特に低い値とは感じないが、AMPZiLLAが登場した1974年、7.5kΩはそうとうに低い値だった。

たいていのアンプは100kΩか50kΩ(日本は47kΩが多かった)だった。
パワーアンプの入力インピーダンスが低ければ、
それだけコントロールアンプには電流を多く供給することが要求される。

といってもさほと大きな電流値ではない。
THAEDRAほどの発熱(ラインアンプの終段のアイドリング電流の多さ)は、
理屈の上では必要ないということになる。

そんなことは説明されなくともわかっている。
けれどTHAEDRAをつないで聴いたことがあれば、
それは理屈でしかないことを経験できる。

ボンジョルノは、それまでの経験からTHAEDRAを開発したのであろう。
そしてTHAEDRAは、やはりボンジョルノ設計・開発のパワーアンプの魅力・特質を、
実によく抽き出してくれる。

このことをよく知っているからこそ、
ステレオサウンドに掲載されたGODZiLLA、THE POWERの試聴記事を読むと、
GODZiLLAも、ボンジョルノが手がけたモノだという感じを受ける。

Date: 9月 14th, 2015
Cate: James Bongiorno

GASとSUMO、GODZiLLAとTHE POWER(その2)

GASのGODZiLLAを聴く機会はなかった。
実物を一度見たことがあるだけだ。

いったいGODZiLLAは、どれだけ日本に入ってきたのだろうか。
それ以前に、どれだけ製造されたのだろうか。

Googleで画像検索しても、あまりヒットしない。
しかもそれらの写真は実物を撮ったものは、さらに少なくなる。
どうもアメリカでも、それほど売られていなかった(製造されていなかった)のではないか、
と、だから思ってしまう。

おそらくGODZiLLAを聴く機会は、これから先もないようだ。
もしあったとしても、そのGODZiLLAのコンディションが万全であるとはいえないだろうから、
GODZiLLAの音がどうであったのかは、ステレオサウンドに頼るしかない。

それでも一度はGODZiLLAを聴きたいと思っている。
それもGASのAmpzillaの各ヴァージョン、
それにジェームズ・ボンジョルノがGASを去った後に設立したSUMOのアンプ、
そしてコントロールアンプにはGASのTHAEDRAを用意して、これらのパワーアンプを聴いてみたい。

ステレオサウンド 52号にはボンジョルノのインタヴュー記事が載っている。
そこに略歴がある。

ハドレー、マランツ、ダイナコ、SAEでボンジョルノが手がけた製品名とともに、
GAS、SUMOでの製品名もとうぜんのことながら載っている。
だが、そこにはGODZiLLAの表記はないのである。

そういえば51号での新製品紹介記事にもボンジョルノの名前は出て来ていない。
52号の特集の試聴記事にもボンジョルノの名前は出て来ない。

ということはGODZiLLAは、ボンジョルノ設計ではないということになるのか。
ここを自分の耳で確認したいから、昔以上にいまボンジョルノのアンプを集めて聴きたいと思うのだ。

Date: 9月 14th, 2015
Cate: James Bongiorno

GASとSUMO、GODZiLLAとTHE POWER(その1)

ステレオサウンド 51号(1979年6月発売)の新製品紹介のページに、GASのGODZiLLAが登場した。

Ampzillaの上級機としてGodzillaが出る、というウワサはきいていた。
CESでプロトタイプが発表されていた写真も見ていた。

ついにGodzilla(ゴジラ)が登場したのか、と思った。
51号のバブコ(GASの輸入元)の広告には、ゴジラの写真が使われている。

ゴジラ襲来!
日本全域が、その足跡に蹂躙されるのは、時間の問題か!?

とてもオーディオ機器の広告のコピーとは思えないものだった。
けれど、ふしぎなことにGODZiLLAの写真はなかった。

同じ号の記事には登場しているのに、輸入元の広告には写真がない。
理由は52号ではっきりとする。

52号の特集は「いま話題のアンプから何を選ぶか」であり、
GASのアンプは、コントロールアンプのTHAEDRA IIとパワーアンプのGODZiLLA ABが取り上げられている。

GODZiLLAには、二つのヴァージョンがあった。
A級動作で90W+90WのGODZiLLA A、AB級動作で350W+350WのGODZiLLA ABであり、
価格はどちらも1580000円だった。

ただ51号に登場したGODZiLLAと52号に登場したGODZiLLAとでは、外観に少し変更が加えられている。

51号のGODZiLLAにはメーターがある。それからインプットレベルコントロール(左右独立)もあったが、
両方とも52号のGODZiLLAからは省かれている。
左右独立の電源スイッチ、動作状態を示すLEDは共通している。
おそらく51号のバブコの広告にGODZiLLAの写真が載っていなかったのは、
外観の最終版が間に合わなかったためであろう。

メーターもレベルコントロールも省かれたGODZiLLAの外観は、
Ampzillaの、あの独特の外観とは違い、
いたって一般的な、19インチ・ラックマウントのパワーアンプの外観である。

Date: 9月 11th, 2015
Cate: James Bongiorno

ボンジョルノとレヴィンソン(その4)

ジェームズ・ボンジョルノは1943年、マーク・レヴィンソンは1946年生れだから、
同世代といってもいいだろう。

ボンジョルノはその名前からわかるようにイタリア系アメリカ人ときいている。
レヴィンソンはユダヤ系アメリカ人とのことだ。

レヴィンソンはコネチカット州だからアメリカ東海岸。
ボンジョルノは、そのへんのことがよくわからない。

GASを設立する前は、いくつかの会社にいてアンプを設計している。
マランツにもいて、Model 15はボンジョルノの設計である。
だから東海岸に住んでいた時期もあるわけだ。

GASはロスアンジェルスにあった。
GASのあとに設立したSUMOもロスアンジェルスだった(ただし本社は税金対策で香港におかれていた)。
ということはボンジョルノはアメリカ西海岸といえる。

レヴィンソンはアンプの設計はできなかったが、楽器は演奏していた。
ベース奏者としてポール・ブレイとのレコードがあるし、
トランペットもやっていた、と聞いている。

ボンジョルノはピアノとアコーディオンを演奏する。
《その腕前はアマチュアの域を超えている》と菅野先生が、ステレオサウンド 53号に書かれている。

ステレオサウンド 45号にレヴィンソン、52号にボンジョルノのインタヴュー記事がのっている。
ページ数が大きく違うし、聞き手も違うから単純な比較はできないのはわかっていも、
記事から感じられるのは生真面目な性格のレヴィンソンであり、陽気な性格のボンジョルノである。

レヴィンソンは1970年代、完璧主義、菜食主義といったことが伝えられていた。
これはつくられたイメージであることが、その後わかってきたけれども。

ボンジョルノは昔来日したときに、紫色の革靴を履いていた、と井上先生からきいたことがある。
52号には、菅野先生はボンジョルノについて、
《アンプ作りの天才ともいわれるが、そのネーミングのセンスの奇抜さからも想像出出来るように、きわめて個性的な発想の持主だ。エンジニアとしては型破りのスケールの大きな人間味豊かな男である。》
と紹介されている。

ボンジョルノのアンプのネーミングのセンスとは、
レヴィンソンとは正反対ともいえる。

Date: 9月 10th, 2015
Cate: James Bongiorno

AMPZiLLAなワケ

アンプジラは、AmpzillaでもAMPZILLAでもなく、AMPZiLLAとiだけが小文字なのか。
iは上下逆転させると、!(エクスクラメーションマーク)になる。

エクスクラメーションマークのロゴで、すぐに思い浮ぶのはJBLである。
GASの設立者であり設計者であるジェームズ・ボンジョルノ(James Bongiorno)のイニシャルは、JB。

ボンジョルノがGASを興したとき、どんなスピーカーを鳴らしていたのか、まったく知らない。
けれど、JBLではなかったのか、と、
AMPZiLLAの表記を見るたびに、そう思えてくる。

ほんとうはiを上下逆転させ、AMPZ!LLAとしたかったのかも……、と勝手に思っている。
なんの根拠もない、私の勝手な妄想にすぎないのはわかっているけど、
それでも、この妄想を完全に消し去ることができないままでいる。

それにGASは、Great American Soundの略である。
アンプジラがAMPZiLLAであることに気づく前は、
GASのアンプの音のことを、ボンジョルノは”Great American Sound”とするのだな、と思っていた。
けれど、もしかするとボンジョルノが”Great American Sound”と呼ぶのは、JBLの音なのでは……。
(もう確かめようはない)

Date: 9月 10th, 2015
Cate: James Bongiorno

Ampzilla(余談)

ステレオサウンド 1976年別冊「世界のコントロールアンプとパワーアンプ」の表紙は、
GASのThaedraとAmpzillaを真正面からとらえたものである。
撮影は安齊吉三郎氏。

表紙のThaedraとAmpzillaは、型番の書体が違う。
Ampzillaの書体はサイケデリック調の書体である。

「世界のコントロールアンプとパワーアンプ」の1976年度版は、
カラー口絵のページもある。
こちらの撮影は亀井良雄氏。

GASのペアは301ページにある。
ここでのAmpzillaの書体は表紙のモノとは違い、
Thaedraと同じ書体が使われている。

試聴記と解説があるモノクロのページのAmpzillaは、サイケデリック調の書体である。

試聴に使われたAmpzillaは、どちらの書体のモノだったのだろうか。

ちなみにどちらの書体であっても、AMPZiLLAと書かれている。
Ampzillaでもなく、AMPZILLAでもない。
iだけが小文字である。

1979年に登場したAnpzillaの上級機にあたるGodzilla。
こちらも正しくはGODZiLLAと、iだけが小文字だ。

Thaedraはすべて大文字でTHAEDRAだ。

Date: 9月 10th, 2015
Cate: James Bongiorno

Ampzilla(その9)

ステレオサウンド 1976年別冊「世界のコントロールアンプとパワーアンプの巻末、
ヒアリングテストの結果から私の推奨するセパレートアンプは、試聴記とは違い、
各人自由な書き方をされている。

黒田先生は音太郎と音次郎の仮空の対談形式で書かれている。
音太郎は、積極的な性格の持主で、レコード新譜をジャンルにこだわらずにあれこれ聴いている。
新しいレコード、新しい音楽を意欲的に聴いている設定。
音次郎は、静的な美しさを求める傾向があり、最新レコードよりも、
1965年ごろまでに録音されたレコードを、ひとり静かに聴くのを好む設定である。

このふたりの対談は、もっとも気に入ったアンプを挙げることから始まる。
音太郎は──、というよりも、音次郎もGASのThaedraとAmpzillaを挙げている。

音太郎は、GASのペアの良さを、鮮明さにあるという。
《レコードに入っている音で、ききてがききたいと思う音はすべてきけるような気がする》し、
《新しいレコードの音に対しての順応性も高い》からである。

音太郎と正反対に近い性格設定の音次郎もGASのペアを選ぶのは、
《響きがひじょうにすっきりしているのに、ききてをつきはなすようなつめたさがない》ためと、
《少し前に録音されたレコードをきいても、そのよさをとてもよくだしてくる》からである。

ここからも黒田先生がGASのアンプを欲しがられていることが伝わってくる。

ただAmpzillaの欠点というか難点として、
試聴記でも音太郎・音次郎の対談でも、冷却ファンの音がうるさいことが気になることを挙げられている。

けれど、この試聴から二年後、黒田先生が購入されたのは、
ソニーのTA-E88とスレッショルドの4000 Customのペアである。

TA-E88と4000 Customは、1976年別冊のころはまだ登場してなかった。
黒田先生がどういうふうに聴かれたのかははっりきとしないし、
このふたつの組合せの音は聴いたことがない。

それでも思うのは、瀬川先生が書かれていたことだ。
《テァドラ/アンプジラをとるか、LNP2/2500をとるかに、その人のオーディオ観、音楽観のようなものが読みとれそうだ。もしもこれを現代のソリッドステートの二つの極とすれば、その中間に置かれるのはLNP2+マランツ510Mあたりになるのか……。》
このところである。

TA-E88と4000 Customの音は、ふたつの極の中間に置かれるのではないか、ということだ。