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Date: 9月 17th, 2015
Cate: James Bongiorno

ボンジョルノとレヴィンソン(その5)

マーク・レヴィンソンが興した会社はMark Levinson。
自身の名前をつけている。
マークレビンソン以前にも、創立者の名前をブランドにしたメーカーはいくつもある。
マランツ、マッキントッシュ、ボザーク、グラドなどがあり、JBLもそうである。
けれどどのメーカーも、フルネームをメーカー名にしていたわけではない。

JBLはフルネームといえなくもないが、あくまでも頭文字だけである。
マーク・レヴィンソンはメーカー名をLevinsonではなくMark Levinsonにしている。

ジェームズ・ボンジョルノはGAS(ガス)、それにSUMO(スモ)である。
GASは以前書いたようにGreat American Soundであり、
SUMOは相撲である。

ステレオサウンド 52号のインタヴューでも、社名について答えている。
     *
 私は世界中で最も日本が好きだし、その国技である〝相撲レスリング〟が大好きだから、〝SUMO〟というネーミングにしたのです。ある人から「お前が今度作ったパワーアンプを聴いたけれど、〝SUMO〟というブライドにしたのがなんとなくわかるような音だ」といわれました。しかし、私としては日本が好きで、相撲が好きだから、〝SUMO〟としただけで他意はないんです。
     *
こういうセンスはマーク・レヴィンソンからはまったく感じられない。
GAS、SUMOを、人を喰ったようなネーミングだと感じ、
そのことに対して、やっぱりボンジョルノだな、と感心する人もいれば、
不真面目な、と思う人もいる。

ボンジョルノがつくりあげたアンプの音を聴いていれば、
GAS、SUMOに対する感じ方も変ってくる。
少なくとも私はそうだった。

AMPZiLLA、THAEDRA,THE POWER、THE GOLDの音を聴き、
THAEDRAとTHE GOLDは自分のモノとしていた私は、
GAS、SUMOという会社名をボンジョルノらしいと思っているし、
この会社名を含めてのAMPZiLLAであり、THE POWER、THE GOLDである。

つまりAMPZiLLAという型番は、 GASという会社(ブランド)名といわば対だから映える、
THE POWER、THE GOLDもSUMOという会社(ブランド)名と対だから映えるのではないだろうか。

絶対にありえないことだがMark LevinsonのAMPZiLLAだったら、どう感じるか。
そぐわない。
やっぱりGASのAMPZiLLAであるべきだし、
SUMOのTHE POWER、SUMOのTHE GOLDであるべきだ。

Date: 9月 16th, 2015
Cate: James Bongiorno

GASとSUMO、GODZiLLAとTHE POWER(その6)

ステレオサウンド 52号のインタヴューで、ジェームズ・ボンジョルノはこう語っている。
(ききては長島先生)
     *
ボンジョルノ 従来のアンプですと振動板の持っているイナーシャが、信号に確実に比例した動きに逆らおうとする力として働くのです。もちろん逆起電力によってもブレーキがかかるわけですが、その時点で次の入力信号に合わせて振動板を駆動しなければならないという、じつにやっかいな仕事を強いられていたわけです。
〝ザ・パワー〟では、新しく開発した〝フォア・クォドラント差動平衡型ブリッジ回路〟によって、いままでのパワーアンプの問題点を解決したつもりです。
長島 その新しく開発された回路の基本的な考え方というのは、どういうことなのですか。
ボンジョルノ それは平衡型ブリッジの四隅から同時にフィードバックをかけることで、スピーカーの+、−側にアンプから4組の独立したプッシュプル・フィードバックをかけ、スピーカーの振動板を強制的に入力信号に比例するように動作させるというものです。
長島 今おっしゃったフルブリッジ回路によって、従来のパワーアンプとは格段の動的忠実度を達成できたんですね。
ボンジョルノ そうです。これこそ〝コンピューター・サーボ〟と呼ぶにふさわしい、本格駆動方式なのです。
     *
GASからは1978年にTHE BRIDGEが出ている。
どんな製品だったっけ……、と思われる人もいるだろう。
THE BRIDGEは、いわゆるブリッジアダプターで、トランスを使っているため電源は必要としない。
SUMOからもブリッジアダプターは出ている。
THE MOATという。こちらはゲイン0dBのユニティアンプを使っている。

THE BRIDGEを出したころは、ボンジョルノはまだGASにいたのどうか微妙になってくる。
つまりこのころから(もしくはそれ以前から)、パワーアンプのブリッジ化を考え、
AMPZiLLAを二台用意してのブリッジ接続による実験で、なんらかの手応えを得ていたのではないだろうか。

そのためのTHE BRIDGEであるわけだが、THE MOATとは内部が違いすぎる。
けれどTHE BRIDGEには、定冠詞のTheがついている。
GASの製品の型番にTheがついてるのは、THE BRIDGEだけである。

ということはTHE BRIDGEまでがボンジョルノが手がけたのだろうか。

Date: 9月 16th, 2015
Cate: James Bongiorno

Ampzilla(附録)

ジェームズ・ボンジョルノがGAS創立からSUMO創立までに手がけたアンプが、
ステレオサウンドの新製品紹介ページに登場した号をまとめておく。
(確固内はステレオサウンドの発売月)

36号(1975年9月) AMPZiLLA
37号(1975年12月) THAEDRA
38号(1976年3月) SON OF AMPZiLLA
41号(1976年12月)THOBE, GOLIATH
42号(1977年3月) AMPZiLLA II
45号(1977年12月)THALIA, GRANDSON
46号(1978年3月) THAEDRA II
47号(1978年6月) THE BRIDGE
48号(1978年9月) AMPZiLLA IIA
51号(1979年6月) GODZiLLA
52号(1979年9月) SUMO:THE POWER
54号(1980年3月) THAEDRA IIB, GAS500 AMPZILLA
55号(1980年6月) SUMO:THE GOLD, THE HALF

50号には井上肇氏による’79米国CEショー見聞記があり、
463ページにGASのGODZiLLAとSUMOのTHE POWER(プロトタイプ)の写真が隣同士で掲載されている。

36号ではSAEのMark2500も取り上げられている。
AMPZiLLAの回路図とMark 2500の回路図を比較するとはっきりすることだが、
ボンジョルノの設計がそこから読みとれる。

Mark 2500はボンジョルノが設計したわけではないが、
基本的な回路構成はボンジョルノのものといえるところがある。

そのことが関係してのことだと私は受けとっているのだが、
37号でのTHAEDRAの記事では、
試しにMark 2500を組み合わせてみたら、ひじょうにいい結果が得られた、とある。

Date: 9月 15th, 2015
Cate: James Bongiorno

GASとSUMO、GODZiLLAとTHE POWER(その5)

GASのGODZiLLAに続いて登場したSUMOのTHE POWER、さらに少し後に登場したTHE GOLD。
GODZiLLAにA級とAB級があるように、SUMOのAB級がTHE POWERでありA級がTHE GOLDである。

これら四機種は入力にアンバランスとバランス両方をもつ。
GODZiLLAが登場した1979年当時の情報でははっきりとわからなかったけれど、
その後の情報でGODZiLLAもSUMOのアンプと同じように、
フルブリッジ回路(バランス回路)であることがはっきりとした。

つまりパワーアンプ本体はバランス回路で、バランス入力で、
アンバランス入力に対応するためにアンバランス/バランス変換回路が前段に設けられているのは、
GODZiLLAもSUMOのアンプも同じである。

そして出力。
GODZiLLA Aは90W+90W、GODZiLLA ABは350W+350W、
THE GOLDは125W+125W、THE POWERは400W+400Wと近い。
GODZiLLAもSUMOも空冷ファンを使っている。

つまりGASのGODZiLLAとSUMOのTHE GOLDとTHE POWERは、仕様がほほ同じといえる。
これは単なる偶然とは思えない。
ジェームズ・ボンジョルノがSUMOを創立する直前までいた会社からも、
同じ仕様、コンセプトのパワーアンプが二機種登場するということは、
GODZiLLAの開発コンセプトはボンジョルノがGASにいたときからあったものと推測してもいいのではないだろうか。

Ampzillaの上級機というよりも最終形態として、ボンジョルノが構想したものがGODZiLLAだとすれば納得がいく。

Date: 9月 14th, 2015
Cate: James Bongiorno

GASとSUMO、GODZiLLAとTHE POWER(その4)

ステレオサウンド 51号の新製品紹介のページにGASのGODZiLLA、
52号の同ページにSUMOのTHE POWERが取り上げられている。

このころのステレオサウンドの新製品紹介のページは、井上先生と山中先生の対談によるものだった。
51号と52号のあいだは三ヵ月。
52号のTHE POWERの記事を読んでの既視感に、
やはり同じ血筋の、同じ遺伝子をもつパワーアンプなんだ、と思っていた。

51号、GODZiLLAのところには、こう書いてある。
     *
井上 マーク・レビンソンが硬めのエネルギー感とすれば、ゴジラは柔らかめのエネルギー感ですね。前者が激流としたら、ゴジラは海のように広い大河だと思う。
山中 最初はマーク・レビンソンのLNP2Lと組合せて聴いたのですが、これをテァドラに変えた時に、大河のようにとうとうたるパワー感がよく出ました。
 クラスAとクラスABを比べると、クラスAの方が音がよく磨きあげられているという感じですね。
井上 マーク・レビンソンを金属、あるいは硬質ガラスを磨き上げたような、硬さをもったつややかさとすると、ゴジラAは黒檀とか樫のような堅い木を磨きあげたような印象です。クラスAとクラスABの最大の違いは、クラスAの方が中域のエネルギー感がより強烈に出てくることですね国産のAクラスアンプとは違った力強さを十分にもっています。
     *
51号のGODZiLLAの記事は1ページだった、
52号のTHE POWERは2ページ使って取り上げられている。
これだけで注目度に違いがあることがわかる。

読めばわかるのだが、実際に評価は高い。
     *
井上 JBLの4343が、ころころと鳴らされてしまいますからね。ワイドレンジだし、特に中低域の迫力はすごい。一方、スピーカーが勝手に鳴らないように、うまくコントロールしている部分もあって、こういう性格のアンプですと一言でいいにくい面をもった製品です。大まかにいえば、マッキントッシュ的なサウンドバランスといえるかもしれません。
山中 しかし、実は全然違うのですね。
井上 そうなのです。音に対する反応は、もっと速いし。そういう意味で、非常に魅力を感じました。
山中 ちょっと聴きには当りが柔らかそうに感じるのですが、トータルなエネルギーはすごいですからね。エネルギー感のよく出る最近のアンプとしては、マーク・レビンソンのML2Lがあるのですが、この場合にはもっととぎすまされたエネルギー感でしょう。ザ・パワーの場合には、マスのある、たっぷりしたエネルギーが猛烈なスピードでぶつかってくるという感じ。ですから、ものによっては、本当に弾き飛ばされそうな印象があります。
井上 ごく初期のアンプジラにあったキャラクターがより凝縮され、よりパワフルになったというのが、一番わかりやすい説明ではないでしょうか。
 たとえば、マーク・レビンソンのコントロールアンプと組み合わせた場合は、それほど魅力は発揮されなかったと思うのですが、テァドラで鳴らしたら、途端に音の鮮度や躍動感が出てきたのです。このことからいっても、組み合わせるコントロールアンプをかなり選ぶと思います。
     *
マークレビンソンML2との対比で語られるエネルギー感のすごさ、
マークレビンソンのLNP2のときの音とTHAEDRAと組み合わせた、いわはど純正組合せといえるときの音の対比、
まったく同じことが51号と52号に書いてあるではないか。

このふたつの記事を、自分自身でTHAEDRAを使った経験を持った後で読み返すと、
GASのGODZiLLAも、ボンジョルノの設計だと思えてくる。

最終的な仕上げまでボンジョルノが手がけたかどうかは、おそらく違うであろう。
けれどアンプの核となるところの設計はボンジョルノの手によるものだからこそ、
51号と52号の記事のようになるのだろう。

Date: 9月 14th, 2015
Cate: James Bongiorno

GASとSUMO、GODZiLLAとTHE POWER(その3)

THAEDRAの、初期モデル、それもそうとうに程度のいいモノを使っていた。
自宅に持って帰る前にステレオサウンドの試聴室でいくつかのパワーアンプに接続してみたことがある。
自宅ではSUMOのTHE GOLDにつないで聴いた。

GASのTHAEDRAを、いくつかのパワーアンプと組み合わせて聴いた経験のある人なら、
きっと感じていることがあると思う。

コントロールアンプをTHAEDRAにすると、
パワーアンプの音がずいぶん変る印象を持っている。
こんなに実力のあるパワーアンプただったのか、と見直すようなこともあった。

THAEDRAはかなり熱くなるコントロールアンプである。
AMPZiLLAのごく初期モデルは入力インピーダンスが7.5kΩだった。

いまでは10kΩの入力インピーダンスが一般的になってきているから、
特に低い値とは感じないが、AMPZiLLAが登場した1974年、7.5kΩはそうとうに低い値だった。

たいていのアンプは100kΩか50kΩ(日本は47kΩが多かった)だった。
パワーアンプの入力インピーダンスが低ければ、
それだけコントロールアンプには電流を多く供給することが要求される。

といってもさほと大きな電流値ではない。
THAEDRAほどの発熱(ラインアンプの終段のアイドリング電流の多さ)は、
理屈の上では必要ないということになる。

そんなことは説明されなくともわかっている。
けれどTHAEDRAをつないで聴いたことがあれば、
それは理屈でしかないことを経験できる。

ボンジョルノは、それまでの経験からTHAEDRAを開発したのであろう。
そしてTHAEDRAは、やはりボンジョルノ設計・開発のパワーアンプの魅力・特質を、
実によく抽き出してくれる。

このことをよく知っているからこそ、
ステレオサウンドに掲載されたGODZiLLA、THE POWERの試聴記事を読むと、
GODZiLLAも、ボンジョルノが手がけたモノだという感じを受ける。

Date: 9月 14th, 2015
Cate: James Bongiorno

GASとSUMO、GODZiLLAとTHE POWER(その2)

GASのGODZiLLAを聴く機会はなかった。
実物を一度見たことがあるだけだ。

いったいGODZiLLAは、どれだけ日本に入ってきたのだろうか。
それ以前に、どれだけ製造されたのだろうか。

Googleで画像検索しても、あまりヒットしない。
しかもそれらの写真は実物を撮ったものは、さらに少なくなる。
どうもアメリカでも、それほど売られていなかった(製造されていなかった)のではないか、
と、だから思ってしまう。

おそらくGODZiLLAを聴く機会は、これから先もないようだ。
もしあったとしても、そのGODZiLLAのコンディションが万全であるとはいえないだろうから、
GODZiLLAの音がどうであったのかは、ステレオサウンドに頼るしかない。

それでも一度はGODZiLLAを聴きたいと思っている。
それもGASのAmpzillaの各ヴァージョン、
それにジェームズ・ボンジョルノがGASを去った後に設立したSUMOのアンプ、
そしてコントロールアンプにはGASのTHAEDRAを用意して、これらのパワーアンプを聴いてみたい。

ステレオサウンド 52号にはボンジョルノのインタヴュー記事が載っている。
そこに略歴がある。

ハドレー、マランツ、ダイナコ、SAEでボンジョルノが手がけた製品名とともに、
GAS、SUMOでの製品名もとうぜんのことながら載っている。
だが、そこにはGODZiLLAの表記はないのである。

そういえば51号での新製品紹介記事にもボンジョルノの名前は出て来ていない。
52号の特集の試聴記事にもボンジョルノの名前は出て来ない。

ということはGODZiLLAは、ボンジョルノ設計ではないということになるのか。
ここを自分の耳で確認したいから、昔以上にいまボンジョルノのアンプを集めて聴きたいと思うのだ。

Date: 9月 14th, 2015
Cate: James Bongiorno

GASとSUMO、GODZiLLAとTHE POWER(その1)

ステレオサウンド 51号(1979年6月発売)の新製品紹介のページに、GASのGODZiLLAが登場した。

Ampzillaの上級機としてGodzillaが出る、というウワサはきいていた。
CESでプロトタイプが発表されていた写真も見ていた。

ついにGodzilla(ゴジラ)が登場したのか、と思った。
51号のバブコ(GASの輸入元)の広告には、ゴジラの写真が使われている。

ゴジラ襲来!
日本全域が、その足跡に蹂躙されるのは、時間の問題か!?

とてもオーディオ機器の広告のコピーとは思えないものだった。
けれど、ふしぎなことにGODZiLLAの写真はなかった。

同じ号の記事には登場しているのに、輸入元の広告には写真がない。
理由は52号ではっきりとする。

52号の特集は「いま話題のアンプから何を選ぶか」であり、
GASのアンプは、コントロールアンプのTHAEDRA IIとパワーアンプのGODZiLLA ABが取り上げられている。

GODZiLLAには、二つのヴァージョンがあった。
A級動作で90W+90WのGODZiLLA A、AB級動作で350W+350WのGODZiLLA ABであり、
価格はどちらも1580000円だった。

ただ51号に登場したGODZiLLAと52号に登場したGODZiLLAとでは、外観に少し変更が加えられている。

51号のGODZiLLAにはメーターがある。それからインプットレベルコントロール(左右独立)もあったが、
両方とも52号のGODZiLLAからは省かれている。
左右独立の電源スイッチ、動作状態を示すLEDは共通している。
おそらく51号のバブコの広告にGODZiLLAの写真が載っていなかったのは、
外観の最終版が間に合わなかったためであろう。

メーターもレベルコントロールも省かれたGODZiLLAの外観は、
Ampzillaの、あの独特の外観とは違い、
いたって一般的な、19インチ・ラックマウントのパワーアンプの外観である。

Date: 9月 11th, 2015
Cate: James Bongiorno

ボンジョルノとレヴィンソン(その4)

ジェームズ・ボンジョルノは1943年、マーク・レヴィンソンは1946年生れだから、
同世代といってもいいだろう。

ボンジョルノはその名前からわかるようにイタリア系アメリカ人ときいている。
レヴィンソンはユダヤ系アメリカ人とのことだ。

レヴィンソンはコネチカット州だからアメリカ東海岸。
ボンジョルノは、そのへんのことがよくわからない。

GASを設立する前は、いくつかの会社にいてアンプを設計している。
マランツにもいて、Model 15はボンジョルノの設計である。
だから東海岸に住んでいた時期もあるわけだ。

GASはロスアンジェルスにあった。
GASのあとに設立したSUMOもロスアンジェルスだった(ただし本社は税金対策で香港におかれていた)。
ということはボンジョルノはアメリカ西海岸といえる。

レヴィンソンはアンプの設計はできなかったが、楽器は演奏していた。
ベース奏者としてポール・ブレイとのレコードがあるし、
トランペットもやっていた、と聞いている。

ボンジョルノはピアノとアコーディオンを演奏する。
《その腕前はアマチュアの域を超えている》と菅野先生が、ステレオサウンド 53号に書かれている。

ステレオサウンド 45号にレヴィンソン、52号にボンジョルノのインタヴュー記事がのっている。
ページ数が大きく違うし、聞き手も違うから単純な比較はできないのはわかっていも、
記事から感じられるのは生真面目な性格のレヴィンソンであり、陽気な性格のボンジョルノである。

レヴィンソンは1970年代、完璧主義、菜食主義といったことが伝えられていた。
これはつくられたイメージであることが、その後わかってきたけれども。

ボンジョルノは昔来日したときに、紫色の革靴を履いていた、と井上先生からきいたことがある。
52号には、菅野先生はボンジョルノについて、
《アンプ作りの天才ともいわれるが、そのネーミングのセンスの奇抜さからも想像出出来るように、きわめて個性的な発想の持主だ。エンジニアとしては型破りのスケールの大きな人間味豊かな男である。》
と紹介されている。

ボンジョルノのアンプのネーミングのセンスとは、
レヴィンソンとは正反対ともいえる。

Date: 9月 10th, 2015
Cate: James Bongiorno

AMPZiLLAなワケ

アンプジラは、AmpzillaでもAMPZILLAでもなく、AMPZiLLAとiだけが小文字なのか。
iは上下逆転させると、!(エクスクラメーションマーク)になる。

エクスクラメーションマークのロゴで、すぐに思い浮ぶのはJBLである。
GASの設立者であり設計者であるジェームズ・ボンジョルノ(James Bongiorno)のイニシャルは、JB。

ボンジョルノがGASを興したとき、どんなスピーカーを鳴らしていたのか、まったく知らない。
けれど、JBLではなかったのか、と、
AMPZiLLAの表記を見るたびに、そう思えてくる。

ほんとうはiを上下逆転させ、AMPZ!LLAとしたかったのかも……、と勝手に思っている。
なんの根拠もない、私の勝手な妄想にすぎないのはわかっているけど、
それでも、この妄想を完全に消し去ることができないままでいる。

それにGASは、Great American Soundの略である。
アンプジラがAMPZiLLAであることに気づく前は、
GASのアンプの音のことを、ボンジョルノは”Great American Sound”とするのだな、と思っていた。
けれど、もしかするとボンジョルノが”Great American Sound”と呼ぶのは、JBLの音なのでは……。
(もう確かめようはない)

Date: 9月 10th, 2015
Cate: James Bongiorno

Ampzilla(余談)

ステレオサウンド 1976年別冊「世界のコントロールアンプとパワーアンプ」の表紙は、
GASのThaedraとAmpzillaを真正面からとらえたものである。
撮影は安齊吉三郎氏。

表紙のThaedraとAmpzillaは、型番の書体が違う。
Ampzillaの書体はサイケデリック調の書体である。

「世界のコントロールアンプとパワーアンプ」の1976年度版は、
カラー口絵のページもある。
こちらの撮影は亀井良雄氏。

GASのペアは301ページにある。
ここでのAmpzillaの書体は表紙のモノとは違い、
Thaedraと同じ書体が使われている。

試聴記と解説があるモノクロのページのAmpzillaは、サイケデリック調の書体である。

試聴に使われたAmpzillaは、どちらの書体のモノだったのだろうか。

ちなみにどちらの書体であっても、AMPZiLLAと書かれている。
Ampzillaでもなく、AMPZILLAでもない。
iだけが小文字である。

1979年に登場したAnpzillaの上級機にあたるGodzilla。
こちらも正しくはGODZiLLAと、iだけが小文字だ。

Thaedraはすべて大文字でTHAEDRAだ。

Date: 9月 10th, 2015
Cate: James Bongiorno

Ampzilla(その9)

ステレオサウンド 1976年別冊「世界のコントロールアンプとパワーアンプの巻末、
ヒアリングテストの結果から私の推奨するセパレートアンプは、試聴記とは違い、
各人自由な書き方をされている。

黒田先生は音太郎と音次郎の仮空の対談形式で書かれている。
音太郎は、積極的な性格の持主で、レコード新譜をジャンルにこだわらずにあれこれ聴いている。
新しいレコード、新しい音楽を意欲的に聴いている設定。
音次郎は、静的な美しさを求める傾向があり、最新レコードよりも、
1965年ごろまでに録音されたレコードを、ひとり静かに聴くのを好む設定である。

このふたりの対談は、もっとも気に入ったアンプを挙げることから始まる。
音太郎は──、というよりも、音次郎もGASのThaedraとAmpzillaを挙げている。

音太郎は、GASのペアの良さを、鮮明さにあるという。
《レコードに入っている音で、ききてがききたいと思う音はすべてきけるような気がする》し、
《新しいレコードの音に対しての順応性も高い》からである。

音太郎と正反対に近い性格設定の音次郎もGASのペアを選ぶのは、
《響きがひじょうにすっきりしているのに、ききてをつきはなすようなつめたさがない》ためと、
《少し前に録音されたレコードをきいても、そのよさをとてもよくだしてくる》からである。

ここからも黒田先生がGASのアンプを欲しがられていることが伝わってくる。

ただAmpzillaの欠点というか難点として、
試聴記でも音太郎・音次郎の対談でも、冷却ファンの音がうるさいことが気になることを挙げられている。

けれど、この試聴から二年後、黒田先生が購入されたのは、
ソニーのTA-E88とスレッショルドの4000 Customのペアである。

TA-E88と4000 Customは、1976年別冊のころはまだ登場してなかった。
黒田先生がどういうふうに聴かれたのかははっりきとしないし、
このふたつの組合せの音は聴いたことがない。

それでも思うのは、瀬川先生が書かれていたことだ。
《テァドラ/アンプジラをとるか、LNP2/2500をとるかに、その人のオーディオ観、音楽観のようなものが読みとれそうだ。もしもこれを現代のソリッドステートの二つの極とすれば、その中間に置かれるのはLNP2+マランツ510Mあたりになるのか……。》
このところである。

TA-E88と4000 Customの音は、ふたつの極の中間に置かれるのではないか、ということだ。

Date: 9月 9th, 2015
Cate: James Bongiorno

Ampzilla(その8)

GASのThaedraとAmpzillaが表紙になったステレオサウンド別冊がある。
1976夏に出た「世界のコントロールアンプとパワーアンプ」である。

最新コントロールアンプ/パワーアンプ 72機種のヒアリング・テストということで、
試聴は井上卓也、岡俊雄、黒田恭一、瀬川冬樹の四氏が、
外観とコンストラクションについて、岩崎千明、山中敬三の二氏、
それぞれ担当、座談会形式で記事が構成されている。

試聴記は見開き二ページで載っている。
瀬川先生は、男性的な音ということで好みとしては女性的な音のアンプを選びたい、とされているが、
《自分の好みは別として、とにかくすごく見事なアンプだと思うし、本当に良い音だと思う。耳の底にしっかりと残る音ですね。》
と高い評価だ。

黒田先生は《ぼくは非常にほしくなったアンプです》と発言されている。
瀬川先生にとって男性的であることが購入対象からはずれるのに対し、
黒田先生は男性的であることが、ほしいと思わせることにつながっている。
     *
 瀬川さんはこのアンプの音を男性的とおっしゃったけれども、それに関連したことから申し上げます。これはぼくだけの偏見かもしれないけれど、音楽というのは男のものだという感じがするんです。少しでもナヨッとされることをぼくは許せない。そういう意味では、このシャキッとした、確かに立派な音といわれた表現がピッタリの音で、音楽を聴かせてもらったことにぼくは満足しました。
     *
「世界のコントロールアンプとパワーアンプ」の巻末には、
ヒアリングテストの結果から私の推奨するセパレートアンプというページがある。
瀬川先生はGASのペアは推選機種とされている。
     *
 耳当りはあくまでもソフトでありながら恐ろしいほどの底力を感じさせ、どっしりと腰の坐った音質が、聴くものをすっかり安心感にひたしてしまう。ただ、試聴記の方にくわしく載るように、私にはこの音が男性的な力強さに思われて、個人的にはLNP2とSAE♯2500の女性的な柔らかな色っぽい音質をとるが、そういう私にも立派な音だとわからせるほどの説得力を持っている。テァドラ/アンプジラをとるか、LNP2/2500をとるかに、その人のオーディオ観、音楽観のようなものが読みとれそうだ。もしもこれを現代のソリッドステートの二つの極とすれば、その中間に置かれるのはLNP2+マランツ510Mあたりになるのか……。
     *
井上先生、岡先生の評価も高い。
岡先生は《これほど音楽の中身を洗いざらいさらけ出してくれるようなアンプは、非常に珍しい》とし、
《曖昧さのない、決まりのはっきりとした音》ゆえに高く評価されている。

井上先生は弱点と指摘しながらも、
GASのペアは、小音量と普通の音量で聴いた時に、音楽的バランスが崩れなかったとして、
立派なアンプだと評価されている。

Date: 9月 8th, 2015
Cate: James Bongiorno

Ampzilla(その7)

黒田先生は、《いくつかの気になるパワーアンプをききくらべてえらんだ》と書かれている。
いくつかの気になるパワーアンプの具体的な型番についてはなにひとつ書かれていないが、
おそらく、そのひとつにAmpzillaは含まれていたであろう。

あとはマークレビンソンのML2、マランツのP510M、
これらの《いくつかの気になるパワーアンプ》のひとつだったと思われる。

いくつのパワーアンプを聴かれたのかもわからないが、
とにかく黒田先生はスレッショルドの4000 Customを選ばれた。
     *
 ひとことでいえば、スレッショールドのモデル4000というパワーアンプの音を、とても気にいっているわけだが、だからといって、そのパワーアンプのきかせる音にコイワズライをしているかというと、そうではない。決してその音に不満があるからではない。同じようなことは、JBLの♯4343の音についてもいえる。JBLの♯4343は、ぼくがこれまでにきいたスピーカー・システムの中で、ぼくなりにもっとも納得できる音をきかせてくれたスピーカーだが、にもかかわらず──というべきか、そのためにJBLの♯4343というスピーカー・システムに惚れこむことはできない。
(「サンチェスの子供たち」を愛す より)
     *
《いくつかの気になるパワーアンプ》の中から4000 Customを選ばれたからといって、
黒田先生は4000 Customに惚れ込まれていた、とはいえないことが、この文章からわかる。

4000 Customの音に対しても、JBLの4343の音に対しても、
黒田先生は決してコイワズライになることはないのだろうか。

《「サンチェスの子供たち」を愛す》の終りに、こう書かれている。
     *
 チャック・マンジョーネの「サンチェスの子供たち」は、輸入盤で三六〇〇円だった。スレッショールドのモデル4000を買う金があれば、「サンチェスの子供たち」の二枚組のレコードを、二〇〇組以上買える。しかし、主は「サンチェスの子供たち」で、従はスレッショールドのモデル4000だ。そこのところをとりちがえると妙なことになる。「道具」は「もの」だ。「道具」という「もの」を、いかに気にいって使ったとしても、そこでとどまる。そういう「もの」に対して、今日はどうもキゲンがわるくてね──とか、なんともかわいくて手ばなせないんだよ──といったような言葉がいみじくもあきらかにする擬人化した考え方は、人形を恋する男のものといえなくもない。
 よく、「自然をありのままに見る」というが、これは人間には不可能な理想を、ただいっているにすぎないのではないか──といった人がいた。この見事な言葉は、人間は知っているものを見る──といったゲーテの言葉と対応する。ききては、知っているものしかきけない。沢山のことをよく知っていれば、不充分な音から山ほどのものをきける。なにをききたいかがわかっているからだ。たいして知らなければ、きけるものにも限度がある。そこで再生装置によりかかっても、再生装置は「道具」でしかないから、そのときの使い手に可能な範囲でしか働かない。
「道具」に恋したら、恋された「道具」が本来の実力以上のものを発揮して、使い手に奉仕すると考えるのは幻想でしかない。いいかげんにあつかえばその本来の実力さえ示さないということはあるかもしれないが、だからといってあれこれ気をつかわねばならないとすれば、その「道具」は充分に「道具」たりえていないということになるだろう。
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黒田先生が《人形を恋する男のもの》といえなくもない、
そういうところを私は持っている。
私というオーディオマニアは、もっている。

私だけでないはずだ、オーディオマニアであり続けている人はそうなのではないだろうか。
黒田先生には、そういうところはまったくなかったのかとういと、決してそうではない。

まったくない人が、あれだけオーディオにのめり込まれるはずがない。
オーディオには、心しないといけない大切なことがある。

《「サンチェスの子供たち」を愛す》の終りには、こうも書いてある。
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 再生装置は音楽の従順な僕(しもべ)であらねばならない。レコードをきいていて、再生装置のことが意識されるとしたら、それは決して幸福な状態とはいえない。もうしばらくすれば、スレッショールドのモデル4000に対しての、あるいはソニーTA-E88に対しての意識は、かなり薄らぐと思うが、今のところ、なにかというと意識する。ただ、その意識することが不快だというのではないということは、いっておかねばならない。不快どころかむしろたのしい。ああ、いいな、やっぱりいいなと、うれしくなったりする。だからかえって、心しないといけない。いいな、やっぱりいいなと、ひとりでにこにこしているとき、再生装置は、ききてと音楽の間で自己主張しすぎた存在になっている。それを是認するのは、はなはだ危険だ。
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黒田先生が、スレッショルドの4000 Customを、
《いくつかの気になるパワーアンプ》の中から選ばれたのは、そういうことなのだと思う。

Date: 9月 6th, 2015
Cate: James Bongiorno

Ampzilla(その6)

1978年当時、マークレビンソンのアンプは、
コントロールアンプがLNP2とML1、パワーアンプはML2のみだった。

つまり「スピーカーはJBL、アンプはアンプジラ」ではなく、
「スピーカーはJBL、アンプはマークレビンソン」とすることでも、いいともいえる。

むしろ「スピーカーはJBL、アンプはマークレビンソン」のほうが、
メーカー名、ブランド名に統一され、型番が出てこなくなるわけだから。
にも関わらず黒田先生は「スピーカーはJBL、アンプはアンプジラ」と書かれている。

ステレオサウンド 48号の「旗色不鮮明」での「スピーカーはJBL、アンプはアンプジラ」の発言者は、
黒田先生本人とまではいえなくとも、黒田先生のこのときの心情の顕れでもあったように思う。

黒田先生がAmpzillaを高く評価されていたことは、
当時のステレオサウンドの別冊からわかる。

だから「スピーカーはJBL、アンプはアンプジラ」は、
黒田先生は4343をAmpzillaで鳴らされようとされているのか──、
そう受け取れる。

黒田先生は、よほどAmpzillaを気に入られているんだ、と私は思っていた。
だが黒田先生はAmpzillaにされることはなかった。
ステレオサウンド 49号を読めば、黒田先生が選ばれたのはGASのペアではなく、
ソニーのTA-E88とスレッショルドの4000 Customだっことがわかる。
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 その「サンチェスの子供たち」のレコードを手に入れてしばらくして、アンプをとりかえた。コントロールアンプをソニーのTA-E88にして、パワーアンプをスレッショールドのモデル4000にした。スピーカーは、これまでのままのJ♯4343だ。
 スレッショールドのモデル4000は、とても気にいっている。その音に対してのしなやかな反応は、じつにすばらしい。さりげなく、これみよがしにならずに、しかし硬い音はあくまでも硬く、やわらかい音はあくまでもやわらかくだしてくる。いくつかの気になるパワーアンプをききくらべてえらんだので、それにいかにも高価格なのでえらぶにあたっても慎重にならざるをえなかったが、まちがいはないと思ったが、自分の部屋にもちこんで、さらにそのよさがあらためてわかった。「いやあ、俺もこれで、やっと実力が発揮できるよ」と、JBL♯4343がつぶやいているような気がしなくもなかった。
(「サンチェスの子供たち」を愛す より)
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スレッショルドの4000 Customは、49号の新製品紹介のページに登場したばかりのモデルだった。