Ampzilla(その6)
1978年当時、マークレビンソンのアンプは、
コントロールアンプがLNP2とML1、パワーアンプはML2のみだった。
つまり「スピーカーはJBL、アンプはアンプジラ」ではなく、
「スピーカーはJBL、アンプはマークレビンソン」とすることでも、いいともいえる。
むしろ「スピーカーはJBL、アンプはマークレビンソン」のほうが、
メーカー名、ブランド名に統一され、型番が出てこなくなるわけだから。
にも関わらず黒田先生は「スピーカーはJBL、アンプはアンプジラ」と書かれている。
ステレオサウンド 48号の「旗色不鮮明」での「スピーカーはJBL、アンプはアンプジラ」の発言者は、
黒田先生本人とまではいえなくとも、黒田先生のこのときの心情の顕れでもあったように思う。
黒田先生がAmpzillaを高く評価されていたことは、
当時のステレオサウンドの別冊からわかる。
だから「スピーカーはJBL、アンプはアンプジラ」は、
黒田先生は4343をAmpzillaで鳴らされようとされているのか──、
そう受け取れる。
黒田先生は、よほどAmpzillaを気に入られているんだ、と私は思っていた。
だが黒田先生はAmpzillaにされることはなかった。
ステレオサウンド 49号を読めば、黒田先生が選ばれたのはGASのペアではなく、
ソニーのTA-E88とスレッショルドの4000 Customだっことがわかる。
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その「サンチェスの子供たち」のレコードを手に入れてしばらくして、アンプをとりかえた。コントロールアンプをソニーのTA-E88にして、パワーアンプをスレッショールドのモデル4000にした。スピーカーは、これまでのままのJ♯4343だ。
スレッショールドのモデル4000は、とても気にいっている。その音に対してのしなやかな反応は、じつにすばらしい。さりげなく、これみよがしにならずに、しかし硬い音はあくまでも硬く、やわらかい音はあくまでもやわらかくだしてくる。いくつかの気になるパワーアンプをききくらべてえらんだので、それにいかにも高価格なのでえらぶにあたっても慎重にならざるをえなかったが、まちがいはないと思ったが、自分の部屋にもちこんで、さらにそのよさがあらためてわかった。「いやあ、俺もこれで、やっと実力が発揮できるよ」と、JBL♯4343がつぶやいているような気がしなくもなかった。
(「サンチェスの子供たち」を愛す より)
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スレッショルドの4000 Customは、49号の新製品紹介のページに登場したばかりのモデルだった。