陰翳なき音色(その1)
カルロ・マリア・ジュリーニのブラームスの交響曲第二番は、
EMIからフィルハーモニア管弦楽団との録音が1960年、
ドイツ・グラモフォンからロスアンジェルスフィルハーモニーとのデジタル録音が1980年、
1991年にウィーン・フィルハーモニーとの録音が、ドイツ・グラモフォンからでている。
最初の録音から二度目の録音までは20年、
二度目の録音から三度目の録音までは11年と、約半分の短さである。
ウィーン・フィルハーモニーとの録音もいうまでもなくデジタル録音である。
ロスアンジェルスフィルハーモニーとの録音がアナログ録音であったのなら、
ジュリーニとしては短いといえる11年での再録音もわからないではない。
いまもレコード芸術では恒例の企画となっている名曲・名盤300選(500選)は、
私がレコード芸術を読みはじめた1980年代のはじめのころ始まった、と記憶している。
数号にわたりこの企画が特集記事として掲載され、
一冊のムックとして出版もされていた。
この企画で黒田先生がブラームスの第二番で、
ジュリーニのロスアンジェルス・フィルハーモニーとの盤を選ばれている、ときいた。
私が読んで記憶にあるのは、トスカニーニ、バルビローリ、フルトヴェングラーを選ばれているものだった。
だから私が熱心に読んで記憶しているのとは、違う年の企画での話なのだろう。
そこには、ロスアンジェルス・フィルハーモニーではなくウィーン・フィルハーモニーだったら……、
と思わなくもない、そんなことが書かれていた、とのこと。
黒田先生以外で、ジュリーニ/ロスアンジェルス・フィルハーモニーを選んでいる人たちは、
そんなことは書かれていなかった、つまりロスアンジェルス・フィルハーモニーへの不満はないことになる。
この話をしてくれた人は、黒田先生と同じ意見ではなく、他の人たちと同じで、
ロスアンジェルス・フィルハーモニーの演奏に、
黒田先生が感じられているであろう不満(もの足りなさか)はない、とのことだった。
私はジュリーニ/ロスアンジェルス・フィルハーモニーとのブラームスの二番に関しては、
黒田先生と同じ側である。