Ampzilla(その9)
ステレオサウンド 1976年別冊「世界のコントロールアンプとパワーアンプの巻末、
ヒアリングテストの結果から私の推奨するセパレートアンプは、試聴記とは違い、
各人自由な書き方をされている。
黒田先生は音太郎と音次郎の仮空の対談形式で書かれている。
音太郎は、積極的な性格の持主で、レコード新譜をジャンルにこだわらずにあれこれ聴いている。
新しいレコード、新しい音楽を意欲的に聴いている設定。
音次郎は、静的な美しさを求める傾向があり、最新レコードよりも、
1965年ごろまでに録音されたレコードを、ひとり静かに聴くのを好む設定である。
このふたりの対談は、もっとも気に入ったアンプを挙げることから始まる。
音太郎は──、というよりも、音次郎もGASのThaedraとAmpzillaを挙げている。
音太郎は、GASのペアの良さを、鮮明さにあるという。
《レコードに入っている音で、ききてがききたいと思う音はすべてきけるような気がする》し、
《新しいレコードの音に対しての順応性も高い》からである。
音太郎と正反対に近い性格設定の音次郎もGASのペアを選ぶのは、
《響きがひじょうにすっきりしているのに、ききてをつきはなすようなつめたさがない》ためと、
《少し前に録音されたレコードをきいても、そのよさをとてもよくだしてくる》からである。
ここからも黒田先生がGASのアンプを欲しがられていることが伝わってくる。
ただAmpzillaの欠点というか難点として、
試聴記でも音太郎・音次郎の対談でも、冷却ファンの音がうるさいことが気になることを挙げられている。
けれど、この試聴から二年後、黒田先生が購入されたのは、
ソニーのTA-E88とスレッショルドの4000 Customのペアである。
TA-E88と4000 Customは、1976年別冊のころはまだ登場してなかった。
黒田先生がどういうふうに聴かれたのかははっりきとしないし、
このふたつの組合せの音は聴いたことがない。
それでも思うのは、瀬川先生が書かれていたことだ。
《テァドラ/アンプジラをとるか、LNP2/2500をとるかに、その人のオーディオ観、音楽観のようなものが読みとれそうだ。もしもこれを現代のソリッドステートの二つの極とすれば、その中間に置かれるのはLNP2+マランツ510Mあたりになるのか……。》
このところである。
TA-E88と4000 Customの音は、ふたつの極の中間に置かれるのではないか、ということだ。