Children of Sanchez(その2)
黒田先生は「サンチェスの子供たち」でもっともよく聴くのは、
第一面第一曲の「サンチェスの子供たち序曲」と第二面第三曲の「コンスエロの愛のテーマ」と書かれている。
「サンチェスの子供たち序曲」は14分07秒かけて演奏される。
どんな曲か。
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「サンチェスの子供たち序曲」は、ギターを伴奏に、ドン・ポッターがスパニッシュ・フレイヴァーのメロディーをうたって、開始される。そこでうたわれる、チャック・マンジョーネの書いたヒューマニスティックな詩がまた、じつにすばらしい。ドン・ポッターがうたい終ると、打楽器群がリズムをきざみはじめ、ブラスが鋭くつっこんでくる。少し音量をあげめにしてきいていると、そこは、オーディオ的にもまことにスリリングだ。音楽のつくりは決して複雑ではないが、この音楽は、音楽の性格として、細部まで鮮明にききとれた方がはるかに音楽的たのしみが大きくなるものだ。
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瀬川先生による試聴会で「サンチェスの子供たち」がかけられたときも、
やはり「サンチェスの子供たち序曲」だった。
この曲をかけられる前に簡単な説明があった。
黒田先生が書かれていることは同じことだった。
だから初めて聴く曲とはいえ、
ギター伴奏の歌が終ればドラムが鳴り出すことはわかっていた。
そしてブラスも加わる。
《オーディオ的にもまことにスリリングだ》と書かれているように、
ほんとうにそうだった。
この部分がそういうスリリングなところだと文章で知ってはいても、
実際に鳴ってきた音は、ほんとうにスリリングだった。
ドン・ポッターが歌う。
Without dreams of hope and pride s man will die
Though his flesh still moves his heart sleep in the grave
Without land man never dreams cause he’s not free
All men need a place to live with dignity
Take the crumbs from starving soldiers, they won’t die
Lord said not by bread alone does man survive
Take the food from hungry children, they won’t cry
Food alone won’t ease the hunger in their eyes
Every Child belongs to man kind’s family
Children are the fruit of all humanity
Let them feel the love of all the human race
Touch them with the warmth, the strength of that embrace
Give me love and understanding, I will thrive
As my children grow my dreams come alive
Those who hear the cries of children, God will bless
I will always hear the children of sanchez
黒田先生は《わざわざ日本語におきかえることもないと思うので》、そのまま書き写されている。
辞書をひきながら意味を知ろうとした。
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このヒューマンな内容の詩と、その音楽と、目を閉じて、キリストのような髭をたくわえた顔をほころばせているチャック・マンジョーネの表情とが、もののみごとに一致している。その詩も、その音楽も、その表情も、大好きだ。大好きだから、うたわれる詩にじっと耳をかたむける。演奏される音楽をせいいっぱいききたいと思う。ジャケットに印刷されているチャック・マンジョーネの表情に目をこらす。むろん、再生装置が不充分だと、そのレコードにおさめられている音楽が十全にたのしめないというわけではない。ただ、ききては、もっとききたいと思う。さらに、よりいっそう、もっとききたいと思う。大好きな音楽だからだ。そこではじめて、音楽をきくための「道具」である再生装置が、関与する。
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ここに書かれていることは、すこしも大袈裟ではない。
「サンチェスの子供たち」を聴いたあと、
あらためて黒田先生の《「サンチェスの子供たち」を愛す》を読んだものだ。
瀬川先生の試聴会のあとに「サンチェスの子供たち」を買った。
輸入盤を買った。