Date: 9月 9th, 2015
Cate: ディスク/ブック
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Children of Sanchez(その1)

チャック・マンジョーネの「サンチェスの子供たち」の存在を知ったのは、ステレオサウンドだった。
ステレオサウンド 49号での、黒田先生の《「サンチェスの子供たち」を愛す》を読んで、だった。

こんな書き出しではじまっている。
     *
 なにかというとそのレコードをきく。今日はたのしいことがあったからといってはきき、なんとなくむしゃくしゃするからといってはきき、久しぶりに友人がたずねてきてくれたからといってはきき、つまりしじゅう、のべつまくなしにきくレコードがある。そういうレコードは棚にしまったりしないで、いつでもすぐかけられるように、そばにたてかけておく。そうなるともう、そのレコードにおさめられている音楽を、音楽としてきいているのかどうか、さだかでない。
 もしかすると、ききてとして、多少気持のわるいいい方になるが、そのレコードできける音楽に恋をしてしまっているのかもしれない。さしずめコイワズライ、熱病のような状態だ。若い恋人たちが、さしたる用事があるわけでもないのに、愛する人に会おうとするのに、似ている。きいていれば、それだけで仕合せになれる。
     *
黒田先生にとって1978年後半の、
そういうレコードがチャック・マンジョーネの「サンチェスの子供たち」だった。

「サンチェスの子供たち」は同タイトルの映画用の音楽であり、
いわゆるサウンドトラック盤である。

黒田先生は、
《今のチャック・マンジョーネがいい。今のチャック・マンジョーネにあっては、ともかく、自分のいいたいことと、それをいうべきわざとのバランスがとれている。どこにも無理がない。ひとことでいえば、のっている──ということになるのだろう。そして、そういう今のチャック・マンジョーネの頂点にあるのが、まちがいなく「サンチェスの子供たち」だ。》と書かれている。

いいレコードだ、ということが素直に伝わってくる。
でも、当時高校一年の私はすぐには買わなかった(買えなかった、ともいえる)。

「サンチェスの子供たち」は二枚組だった。
黒田先生は輸入盤で3600円だった、と書かれていた。

東京ではこの値段で買えたであろうが、
地方ではもう少し高かったように記憶しているし、まず輸入盤をおいている店も少なかった。

「サンチェスの子供たち」を聴いたのは、自分で買ったものではなかった。
熊本のオーディオ店が定期的に瀬川先生を招いての試聴会を行っていた。
そこで「サンチェスの子供たち」を聴いた。

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