ハイ・フィデリティ再考(続×三十一・原音→げんおん→減音)
私は20代前半のある時期、
シーメンスのコアキシャル(25cmウーファーとコーン型トゥイーターの同軸型)を平面バッフルで鳴らしていた。
平面バッフルのサイズは縦190×幅100cm、米松合板を使ったもの。
これにf0:65Hzという、古い設計のスピーカーユニットを取り付けていたわけだ。
同軸2ウェイとはいえ、トゥイーターも古い設計で、
しかも口径も大きいわけで高域がすーっと延びているわけでもない。
上も下も、そのくらいのレンジ幅である。
例えば口径はすこし小さくなるが、
JBLの20cm口径のLE8Tを適切なチューニングのなされたバスレフ型エンクロージュアにおさめたほうが、
低域に関してはずっと下まで延びている。
コアキシャルの出力音圧レベルは、98dB/W/m。
高能率といえるユニットだけに、このベクトルでの音の良さは確かにある。
けれど、コアキシャル+平面バッフルでは、再生が無理な音があるのも事実であり、
そんなことはこのスピーカーを導入する前からわかっていたことであり、それを承知で、
こういうシステムでしか聴けない音を求めての選択だった。
つまりは、ここでテーマとしている「減音」、
このときはそこまで意識したわけではないけれど、
それに若さゆえに粋がっていたゆえの選択でもあったけれど、
ようするに、この項の(続×二十九)で書いているMC275的音の描写を意識してのことだった。
けれど、このシステムはそうながくは続けなかった。
音が気に入らなかったわけではない。