原音に……(その1)
「ハイ・フィデリティ再考」について書いている。
原音についても、当然書いている。
ハイ・フィデリティは高忠実度と訳されることが多い。
そして、何に対して高忠実度かといえば、いちおう、この国では原音ということになっている。
その原音とは、いったい何を指すのか。
これがまた議論となる。
原音を生の音と定義してしまえば、
ハイ・フィデリティの目ざすところは生の音の家庭でのそっくりそのままの再生、ということになる。
だから「原音を目指す」的ないいかたがなされてきた、ともいえる。
「原音を目指す」──、
これははたして、言葉として正しいのか、とおもうわけだ。
原音と似た言葉、同じような意味ももつ言葉として原点がある。
この原点もいくつかの意味をもっているから、
どの意味を用いるのかによって変ってくるのは承知のうえで、
原点という言葉に対しては、私は「還る」がしっくりくる。
「原点に還る」。
ならば「原音に還る」なのではなかろうか、と思う。
原音とは還るものとしてとらえたときに、
いままで気がつかなかった「原音」に気がつくのではなかろうか。