ハイ・フィデリティ再考(続×十九・原音→げんおん→減音)
ネルソン・パスによる、ふたつのアンプの動作。
ステイシス回路とALEPHの非対称回路。
どちらが、より理想的なのか、どちらが優れているのか、どちらが音が良いのかは、
決められるような性質のものではない。
ネルソン・パスはパス・ラボラトリーズではいまXシリーズ、XAシリーズを出している。
Xシリーズは、Super Symmetric回路を採用している。
この方式がどういう構成なのかははっきりしないが、
Symmetricとついているわけだから対称動作であることは間違いないはず。
いまパス・ラボラトリーズのラインナップにはALEPHはなくなってしまったが、
ネルソン・パスのもうひとつのブランド、ファーストワットのパワーアンプが、
そのかわり的な存在として、ある。
現在のパス・ラボラトリーズのラインナップは、いわばスレッショルド時代のラインナップ的ともいえよう。
ALEPHやファーストワットのアンプと比較の上でいえば、
アンプ単体での理想動作を追求している設計方針といっていいだろう。
アンプの規模も、以前のSTASIS1を超えるモノもラインナップされている。
パス自身、どちらかひとつに絞っているわけではない。
大きくみて、ふたつの方向から、アンプの理想を追求している、と私は感じている。
パワーアンプが鳴らすスピーカーシステムには、
アルテックのA5のような古典的な高能率のアンプもあれば、正反対の性格のスピーカーシステムもある。
スピーカーはからくりだ、と、よく井上先生はいわれていた。
その通りだ、と思う。
これまでにいくつものからくりのスピーカーが存在してきたし、存在している。
そのからくりが、一番なのかは、誰が決められようか。
結局、いまの自分にとって最適のからくりを選ぶしかない。
そして、そのからくりをうまく動かしてくれるパワーアンプを選ぶしかない、ともいえる。