ハイ・フィデリティ再考(続×二十五・原音→げんおん→減音)
ネルソン・パスはどうなのか。
──と、勝手に考えてみる。
いつごろからあるのかはっきりと憶えていないけれど、
1990年の終りごろにはあったように記憶しているのが、PASS DIYというサイトである。
サイト名からわかるように、ネルソン・パスによるオーディオのDIYのサイトである。
ここで取り扱われるもののメインは、やはりアンプ中心であるが、
以前はスピーカーに関する記事もいくつかあった。
このPASS DIYのサイトで目につくのは、Zen Amplifierである。
1994年から続いている。いくつかのヴァリエーションが存在する。
PDFがダウンロードできるので、興味のある方は英文の記事をお読みいただきたい。
このZen AmplifierのZenは、ほぼ間違いなく「禅」のはず。
Zen Amplifierは、どのヴァリエーションも、増幅素子の数は極端に少ない。
基本的にはFET1石による、ブリッジ構成のヴァリエーションもあるがSingle-Ended Class Aアンプである。
実際の回路は増幅部はFET1石だが、
定電流回路を構成するトランジスターとFETが1石ずつあり、
最初のZen Amplifierはチャンネルあたり3石が使われている。
この定電流回路をライト(電球)に置き換えたヴァージョンもある。
しかも±両電源ではなく+電源のみだから、
直流カットのため出力には大容量の電解コンデンサー(2200μFが2本並列)が入ることになる。
いまでは当り前になっているOCL(output condenser less)アンプでもないわけだ。
FETのドレインから出力を取り出している。
NFBはごくわずかにかけてある反転アンプである。
出力インピーダンスは1Ωを少し切る程度であり、2kHz以上ではやや上昇していく。
出力は10W。
最新の、高度な回路に物量を投入したアンプを見慣れた目には、
このZen Amplifierは、なんとも古めかしい、アンプ作りの腕の発揮しようのないアンプのように映るだろう。
そういうZen AmplifierからALEPHのパワーアンプが誕生し、
ファーストワットのSIT1とSIT2へと進化でもあり深化していった、といえるだろう。