国産のエレクトリッククロスオーバーネットワークだと、私が記憶している範囲では、
オンキョーのD655NII、パイオニアのD23、サンスイのCD10、ビクターのCF7070、
テクニクスのSH9015Cなどが、
ローパスフィルター、ハイパスフィルターのカットオフ周波数の独立可変仕様である。
これらのメーカーは、スピーカーシステムも積極的に開発してきていた。
おそらく内蔵ネットワークの開発において、
ローパスとハイパスのカットオフ周波数は離れているケースがあるのかもしれない。
古くはマランツのModel 3(1957年発表)がそうだった。
日本製になってからのマランツのAD5、AD6もそうである。
海外製品ではSAEのMark 4000があった。
マランツはスピーカーシステムも手がけていたが、
1957年当時はアンプ専門メーカーであった。
にも関らずカットオフ周波数の独立設定が可能になっていたのは、
設計者(マランツなのだろうか、シドニー・スミスなのだろうか)のノウハウから、か。
ヤマハのEC1はクロスオーバー周波数の選択はローパス、ハイパスで共通なのだが、
ローパス、ハイパスには、連続可変のクロスオーバー微調整ツマミが独立して付いている。
このツマミによって±0.5オクターヴ範囲内ではあるが、カットオフ周波数を独立可変できる。
エレクトリッククロスオーバーネットワークも製品数は、
時代とともに少なくなってきている。
それでもアキュフェーズは一貫して開発し続けてきている。
現在もデジタル信号処理によるDF65が現行製品である。
けれどそれまでのアナログ式で、
しかもカードを差し替えてのクロスオーバー周波数の変更の製品では、
ローパス、ハイパスのカットオフ周波数を独立させることはできなかった。
オーレックスのSD77は2ウェイ、3ウェイ対応で、
クロスオーバー周波数ポイントが細かく設けられているため、
2ウェイでは、ハイパス、ローパスのカットオフ周波数を独立させた使い方も可能である。
だからアキュフェーズの場合も3ウェイ用としてカードを搭載して、
ローパス、ハイパスのカットオフ周波数をそれぞれ設定することは可能なのだが、
コストのかかる使い方である。
その意味では、他社製のエレクトリッククロスオーバーネットワークでも、
2ウェイ仕様のモノを複数台使うことで、同じことはできるが、
こちらはさらにコスト的に負担が大きくなる。
アキュフェーズのエレクトリッククロスオーバーネットワークを、
スピーカーシステムを自作する側からみると、
アンプ専門メーカーとしての製品なのだ、とおもえてくる。
けれど、アキュフェーズ創立メンバーであった春日二郎氏、出原眞澄氏は、
ホーン型を中心とした自作スピーカーだったのに……、とも思ってしまう。