スピーカーシステムという組合せ(その8)
1978年には、ステレオサウンドから「世界のオーディオ」のオンキョー号が出ている。
セプター・システム・スピーカー登場の翌年ということもあって、
オンキョー号では、セプター・システム・スピーカーにかなりのページを割いている。
井上先生、菅野先生の対談「オンキョー製品の魅力をさぐる」でも、
セプター・システム・スピーカーは取り上げられているし、
高森恭氏による「ドキュメント 新製品誕生」では23ページ、
岡原勝、黒田恭一、瀬川冬樹、三氏による試聴が行われている
「誌上シンポジウム システムスピーカー使いこなし」では、31ページが割かれている。
「ドキュメント 新製品誕生」から、引用しておこう。
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こんなふうに、ユニットの設計がすすんでいる一方で、このシステム・スピーカーのアピールを、どんな形で展開すればよいかが議論されていた。
昭和51年の正月休みが明けたある日、スピーカー設計グループの1人が、変ったものをもちこんできた。メルクリンの6・5mmゲージSL模型である。正月休みにつくり上げたということで、ひとしきりその話題に鼻が咲いたあげく、熱しやすいのはマニアの常とかで、みんなで模型屋まで出かけていくことになった。SLの模型といっても、このクラスになるともはや子供の玩具の域を越えてしまって、おとなが熱中しはじめるものである。各型式の機関車、客車、貨車、食堂車などの車輌の他に、レ昼はもとより、山あり、鉄橋あり、信号、ポイント切りかえ、車庫、操作場等々、実にさまざまのアクセサリーが用意されており、これらを部屋中にレイアウトして、大のおとなが無邪気な歓声をあげる、というしろものである。それらをどう組み合わせて、どう並べるかというレイアウト例を図示した、豪華なレイアウトブックも発売されていた。
この日、その模型屋が確実に何人かの上得意を獲得したのは確かで、その中に鶴本氏が含まれていたことは間違いのない事実であった。昼間は会社でスピーカーに、夜は自宅でメルクリンにと、2つの情熱(?)を燃え上がらせて氏の胸のうちで、次第にこれが一つに結びついていくのに時間はかからなかった。組み合わせ例、レイアウトブック──システム・スピーカーの決め手はこれだ!
いろいろてスピーカーを自由に組み合わせるとしても、クロスオーバー周波数を固定したままでユニットだけを交換してみても、決していい結果は得られない。ホーンのカットオフやユニットの特性が変われば、それに応じてネットワークの特性を変えてゆかねばならない。従って、それぞれの組み合わせに対して、最適の値をもったネットワークを用意すると共に、それらの使い方の指針となるレイアウトブックが必要である。
それには可能なすべての組み合わせについてヒアリングしなければならない。
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オンキョーのセプター・システム・スピーカーは、六桁の数字がシステムナンバー(型番)となっている。
オンキョーの表記では、
最初の数字がバスレンジユニット、二番目がミッドレンジユニット、三番目がミッドレンジホーン、
四番目がハイレンジユニット、五番目がハイレンジホーン、
六番目がスーパーハイレンジユニットを示していて、
それぞれのユニット、ホーンには1から始まる番号が割り当てられていて、
0はその帯域のユニットはなし、ということになっている。
例えばシステムナンバー100220の場合、
最初の1は、38cmウーファーのW3801、四番目の2はD3520A(ドライバー)、
五番目の2はH2014P(ホーン)とAL80(音響レンズ)からなる2ウェイシステムである。
つまりエンクロージュアとネットワークは、六桁のシステムナンバーには含まれていない。
レイアウトブックによると、100220用のネットワークとして、
N900CLとN5000CHが推奨されている。
ネットワークの型番は最初のNはNetworkの略であり、
続く数字がカットオフ周波数を表わしている。
つまりN900CLは、カットオフ周波数900Hzのローパスフィルターであり、
N5000CHはカットオフ周波数5000Hzのハイパスフィルターである。
入力ミスではなく、900Hzと5000Hzである。