Archive for category アナログディスク再生

Date: 3月 20th, 2013
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その16)

ステレオサウンド 48号、146ページのに掲載されている、
ふたつのグラフを見ても、ケーブルやアンプやターンテーブルでは音は変らない、と発言している人は、
それでも「音は変らない」とこれからも言い続けるのか、
それともケーブルやアンプで音は変らないけれど、
カートリッジが同じでもターンテーブルが違えば「音は変る」となるのか。

「音は変らない」という人の言い分は、いつも決っている。
サインウェーヴでの測定結果に違いない。だから「音は変らない」。
わずかな違いが測定結果に見られても、今度は、その程度の違いは人の耳では聴き分けられない、という。

実に都合のいい言い分ばかりだから、
ステレオサウンド 48号、146ページのグラフを見ても、
「この違いは人の耳では聴き分けられない」というだろう。

「音は変らない」といい続ける人は、もういいだろう。
その人の耳にとって音が変らないのだから。

先に進もう。

Date: 3月 10th, 2013
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その15)

ステレオサウンド 48号、146ページのグラフは、
フォルテシモからピアニシモに変化していく様を描いている。

フォルテシモからピアニシモへの移る途中で、いくつかの小さな山が発生しているのだが、
この部分がEMT・930stとローコストのダイレクトドライヴ型プレーヤーとでは顕著に違っている。

山の数がまず違う。930stの方が多い。
ローコストのダイレクトドライヴ型プレーヤーが何なのかはわからない。
そのプレーヤーの音を聴いたことがあるのかどうかもわからないから、
音の比較ではなにもいいようがないけれど、
これだけ山の数がローコストのダイレクトドライヴ型プレーヤーで減っている(消失している)のをみると、
音楽のディテールの再現においては、930stの方が優れている、といってよいだろう。

それに山の形も同じとはいえない。
930stでは小さな山となっているのに、
ローコストのダイレクトドライヴ型では山になりきれずに平坦に近かったりする。

どちらのプレーヤーで聴いても、同じ「熱情」であることには違いない。
けれど、これほど異る形を描くグラフを見比べていると、
実際の音は、視覚の差以上に大きいものとしてあらわれるように思えてくる。

長島先生も指摘されているように、
これらのグラフはペンレコーダーによるもので、
ペンの自重の影響その他に若干の問題が残っている。
そのためあくまでも参考データとして掲載されていて、
48号で測定した全機種についての発表は控えられている。

けれど「レコードの音楽波形レベル記録」として5分ちょっとグラフを圧縮した形で掲載されている。
146ページのグラフのように拡大されていないから、
ぱっと見た感じではどれも同じレベル記録のように見えなくもないが、
細かく見ていけば、それぞれのプレーヤーによって違いが出ていることがわかる。

Date: 3月 8th, 2013
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その14)

ターンテーブルのワウ・フラッターが充分に小さければ、
カートリッジが同じであれば、プレーヤーシステムの違いによって音が変ることはない、
こんなことを強弁する人は、決って測定しても違いが現れない、ともいう。

測定の多くの場合につかわれる信号は、ほとんどがサインウェーヴである。
われわれがケーブル(アンプ)によって音が変る、
さらにはターンテーブルによって音が変る、という場合に聴いているのは音楽である。

カートリッジがおなじであれば、ほんとうにターンテーブル(プレーヤーシステム)による音の違いは、
測定結果として現れないのだろうか。
そんなことはないことは、いまから35年も前のステレオサウンドに載っている。

ステレオサウンド 48号、プレーヤーの特集の中、146ページに載っている。

囲み記事として掲載された「プレーヤーシステムによって再生能力はこんなに違う」では、
ふたつのグラフがある。
ベートーヴェンのピアノソナタ「熱情」のレベル記録を、一部拡大したグラフである。

グラフのひとつはEMT・930stによる再生波形、
もうひとつは1973年ごろに発売されたローコストのダイレクトドライヴ型プレーヤーによる再生波形。
カートリッジはどちらもオルトフォンのSPU-G/Eを、針圧3gで使った、と記事にはある。

いくつかの山・谷が描かれている、ふたつのグラフは、
「熱情」の同じ箇所を再生しているのであるから、相似形ではある。
けれど細部までまったく同じというわけではない。

Date: 3月 8th, 2013
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その13)

世の中には、いまだケーブルによって音が変るなんてことは絶対にない、
さらにはアンプで音が変ることもない、
こんなとんでもないことを平気で強弁している人がいる。

ケーブルを交換すれば、音が変るのは事実であるし、
アンプを替えれば音は変る。
ただ、その時の音の違いは、人によって、それに価値観の相違によって、
それほど重要ではない、という言い方ならば納得できる。

それにある人にとって容易に聴き分けられる音の違いが、
別の人にとっては違いがわからない(わかりにくい)ということはある。
その逆もまたある。

自分が聴き分けられないから、
ケーブルを交換しても(アンプを替えても)音は変らないということにはならない。

ケーブルによる音の違いはわからないから、
いまのところケーブルによる音の違いは、私には存在しないといえる、
ケーブルによる音の違いよりももっと重要なことがあり、そちらから音を追求していきたい、
そういう考えから「ケーブルによって音は変らない」といわれているのであれば、
その方のオーディオの取組みを尊重したい。

だがインターネットで、匿名なのをいいことに、
自分の考え(というよりも耳)が正しい、とばかりに、
ケーブルによって(アンプによって)音は変るという人に噛みつくばかりの人は、
ターンテーブル(アナログプレーヤー)によって音が変ることはない、というだろう。

Date: 3月 7th, 2013
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(デザインのこと・余談)

マイクロのSX8000IIが登場したとき、
音はともかくとして、ひとつ疑問に感じていたのが、
トーンアームベース、モーターユニットをふくめたベースの塗装の色だった。

あれはなんという色と表現したらいいのだろうか。
糸ドライヴの最初のモデルRX5000 + RY500のベースは黒、
次のモデルSX8000では青に変っていた。
それがSX8000IIでは、基本としての緑と表現できる色なのだろうが、
ひどい色とまではいわないものの、決していい色とは思えなかった。

最初見た時も、それからあとステレオサウンドの試聴室に常備されるようになっても、
実際に使われているユーザーのリスニングルームで見たときも、
一度もいい色と感じたことはなかった。

そうなると疑問がわく。
なぜ、この色(こんな色)にしたのだろうか。
デザイナーの指定した色だとしたら、いったい誰なのだろうか。

ヒントはあった。
具体的なことは書かないけれど、そのことから、
たぶん、SX8000IIの色を決めたのは、この人なんだろうな、と思っていた。

いまステレオサウンド 186号が書店に並んでいる。
特集は「欲しくなる理由、使いたくなる理由」。
この特集記事を読んでいて、やっぱりSX8000IIの色を決めたのは、
この人だったんだ、と確信に変った。
おそらくSX8000IIのデザインもそうであろう。

この確信が間違っていなければ、
あえてぼかして書くけれど、あれもそうなのか、ということになる。

Date: 3月 4th, 2013
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その12)

国産のダイレクトドライヴ型プレーヤーで、
930stまでいかなくともガラードの301に匹敵する、
ターンテーブルと軸受けの強度、それにターンテーブルの偏芯と上下ブレの少なさをもつものはある。

ステレオサウンド 48号が出た1978年の時点ではそう数は多くないものの、いくつか存在する。
その中でもヤマハのPX1は、200gのオモリをのせた場合のたわみは0.02mm。
ガラードの301と同じ値である。

上下ブレは0.07mm、偏芯は0.04mmとガラードの301と、ほぼ同等である。
PX1のターンテーブルプラッターはジュラルミンの削り出しによるもので、重量は5.2kg。
速度偏差も無負荷時でも、レコードトレーシング時でもひじょうに優秀である。

だからダイレクトドライヴ型でも、ここまでのモノができる、ということでもあるわけだが、
構造的に見た場合、ダイレクトドライヴ型はPX1ほどの精度を出すのは、かなり大変なことでもある。

ターンテーブルプラッターとシャフトを、コマと重ね合わせた場合、
当然ターンテーブルとシャフトがしっかりと嵌合していたほうがいい。
この箇所に、わずかでもガタツキが生じていたら、
ターンテーブルプラッターをどれだけ精密に仕上げたとしても、偏芯は生じてしまう。

EMTは930st、927Dstなどもターンテーブルプラッターとシャフトがしっかりと嵌合した、
いわば一体型となっている。
トーレンスのベルトドライヴも、インターとアウターにわかれる二重ターンテーブル構造ではあるが、
インターターンテーブルはシャフトと嵌合されており、そのシルエットはコマである。

Date: 3月 4th, 2013
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その11)

ステレオサウンド 48号の測定結果によれば、
ガラードの301のターンテーブル回転時の上下ブレが0.06mm、偏芯が0.05mm。
これは優秀な値である。
いまもガラードのターンテーブルが、301も含め401も、
古めかしいメカニズムという印象にも関わらず、いまも高い評価を保持しているのは、
ターンテーブル及び軸受けの強度、ターンテーブルの偏芯と上下ブレの測定結果と無関係ではないはず。

そしてEMTの930st。
上下ブレが0.03mm、偏芯が0.01mm。
ガラード・301よりもさらに優秀な値となっている。

国産のダイレクトドライヴのプレーヤーはどうなのかというと、
高価な機種が必ずしも強度があり、偏芯が少ないとは限らない。
上下ブレがいちばん大きいのは0.21mmというのがある。この機種の偏芯は0.1mm。
偏芯がいちばん大きいのは0.15mm、この機種の上下ブレは0.11mmと、
偏芯が大きいから上下ブレが大きい(上下ブレが大きいから偏芯が大きい)とは必ずしもいえない。

もちろんどちらも大きな機種もある。
上下ブレ0.2mm、偏芯0.14mmで、
この機種のターンテーブルのしなり・たわみは200g負荷時で0.26mmをすこしこえている。
この機種はローコストなプレーヤーではなく、単体のターンテーブルとして発売されている、
この当時としては高価な部類にはいる。

Date: 3月 3rd, 2013
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その10)

ターンテーブルの回転を、コマの回転と重ね合わせると、
長島先生がステレオサウンド 48号において、
ターンテーブル及び軸受けの強度とターンテーブルの偏芯と上下ブレを測定された理由がみえてくる。

ターンテーブルがどんなに正確に規定の回転数、
LPであれば33 1/3回転で、ワウ・フラッターが測定の限界値に近くなろうと、
実のところ、音のゆれが完全になくなる、無視できるほどなくなるとはかぎらない。

アナログディスク再生で、回転ムラがあれば、そのは即座に音のゆれとなってあらわれる。
いうまでもなく33 1/3回転よりも速くなれば、音のピッチが高くなるし、
33 1/3回転よりも遅くなれば、音のピッチは低くなる。

回転数のズレが、つねに速い(もしくは遅い)であれば、
まだその補正はそう難しくはないだろうし、音への影響も限定的となる。

けれど速くなったり遅くなったり、つねに両方への変動があれば、音がゆれて鳴ることになる。

ダイレクトドライヴになり、サーボがかけられ、さらにクォーツロックも採用され、
測定上、もう充分ではないか、と思ってしまうほど、優秀な値を実現している。

けれどいくら優秀な値をほこる回転精度であっても、
ターンテーブルが偏芯していたり、上下のブレがあったり、
強度が不足していてしなり・たわみが生じたら、
これらは、回転ムラに起因する音のゆれとは、
性格の異なる音の「ゆれ」を生じさせている──、
そういえるのではないだろうか。

この音の「ゆれ」こそが、音への影響がもっとも大きい、
と私は考えている。

Date: 3月 1st, 2013
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その9)

音のいいプレーヤーの代表ともいえるEMTの930stの回転部、
つまりターンテーブルプラッターとシャフトから成るシルエットは、
いわばコマと重なる。

理想のコマの回転が、遠くから見たときに静止しているかのように、
まったくブレることなくきれいに廻り続けることである以上、
ターンテーブルプラッターとシャフトから成る回転体も、
理想のコマと同じくいっさいブレることなく、静かに廻り続けることが重要であり、
その実現のためにまず求められるのは、
ダイレクトドライヴ、ベルトドライヴ、リムドライヴ、
どの方式が優れているかと論ずる前に、
ターンテーブルプラッターとシャフトから成る回転体が、
どれだけ「理想のコマ」であるのか、ということであるはず。

Date: 2月 28th, 2013
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その8)

ステレオサウンド 48号に掲載されているターンテーブル及び軸受けの強度を現わすグラフの縦軸は、
ターンテーブル、軸受けのたわみを0から0.3mmまで表示してあり、
横軸はオモリの重さとなっている。

ターンテーブルの最外周に200gものオモリをのせてたわみを測ることに意味があるのか、
と疑問に思われる方もおられるだろう。
針圧は重いといわれるものでも3gから4g程度であり、
軽い針圧となると1gを切るカートリッジもある。

その程度の針圧しかかけないのだから、
10g程度のオモリならまだしも、200gものオモリを置いて測定する必要性があるのか。

実は私もステレオサウンド 48号の測定をパッと見た時は、
そんなふうに思わないでもなかった。
けれど、音がいいプレーヤーといわれているモノ、
私が音がいいと思っていたプレーヤーは、200gのオモリをのせてもたわみが極端に小さい。

48号で取り上げられているプレーヤーのなかには、200gのオモリをのせた場合、
グラフの縦軸の最大値である0.3mm近くまでたわんでいるものもある。

ちなみにガラードの301は、
48号の時点ではすでに製造中止になっていたため、あくまでも参考データとして載っている。
それも16年ほど使われていた301にもかかわらず、200gの荷重でのたわみは0.02mmしかない。

そしてEMTの930st。
これもステレオサウンド編集部で使われていたものにも関わらず、
200g荷重で0.01mm程度のたわみにおさえられていて、
どのプレーヤーよりも優秀な値である。

Date: 2月 27th, 2013
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その7)

ステレオサウンド 48号には、長島先生による測定データも載っている。
測定項目は次の通り。
 無負荷状態での速度偏差
 レコードトレーシング時の速度偏差(ダイナミック・ワウ)
 ターンテーブル及び軸受けの強度測定
 ターンテーブルの偏芯と上下ブレ

無負荷状態での速度偏差以外は、アナログプレーヤーのカタログには載ることのない項目である。

レコードトレーシング時の速度偏差と無負荷状態での速度偏差のグラフを見比べると、
ほとんど変化のないプレーヤーもあれば、無負荷状態では優秀な性能でも、
実際の使用状態、つまりレコードをのせ、カートリッジでレコードの音溝をトレースしている状態では、
音楽信号の強弱によりターンテーブルにかかる負荷が変動する。

この変動に対して、ターンテーブルは我関せずと安定した回転を保っていればなんら問題はないのだが、
実際にはカートリッジのトレース時の負荷は、意外にも大きいのか、
レコードトレーシング時の速度偏差が大きく(変動幅はすくなくとも不規則に)変動するものがあるのがわかる。

そして、私が驚いたのは、ターンテーブル及び軸受けの強度測定とターンテーブルの偏芯と上下ブレである。

ターンテーブル及び軸受けの強度測定は、ターンテーブルプラッターの縁にオモリをのせ、
最小目盛り1μ(1000分の1mm)のダイヤルゲージをあて、たわみ・しなりを計測したもの。
オモリは50g、100g、200gの3種。

ターンテーブルの偏芯と上下ブレは回転状態のターンテーブルプラッターの偏芯と上下ブレを、
やはりダイヤルゲージで読んだものである。

これらの測定には、定盤のうえにプレーヤーをのせて行われている。

Date: 12月 21st, 2012
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(デザインのこと・その30)

このころはB&Oの美しいプレーヤーがリニアトラッキングだった、
それからすこし遅れて登場したルボックスのプレーヤーもそうだった。
日本ではマカラ(エアーフローティングを採用した最初のプレーヤー)とヤマハからも出ていた。

B&OのBeogramは、オーディオのことは何もまだ知らない少年の目にも、美しい、と映った。
こういうプレーヤーが採用しているのだから、それだけでもリニアトラッキング型のトーンアームは理想と思えた。
ルボックスB790とB&Oとでは、同じリニアトラッキング型でも実現のための方式は違っていた。

ヤマハのリニアトラッキング型を採用したPX1のデザインは、
B&Oとは大きく違っていて、
PX1がプリメインアンプのCA2000、CA1000と同系統のデザインだったら……、とそんなことを思ってしまうほど、
路線が変ってしまっていたプレーヤーの姿だった。

マカラのプレーヤー4842Aは、メカニズムというつくりで、B&Oとは正反対のプレーヤーであった。
ある部分EMT的でもあったし、とにかくそれまで日本のプレーヤーではあり得なかった造形であった。
4842Aはなかなか実物を見る機会もなかった。
製造中止になってかなり経って、やっと見ることができた。
でも、音は聴けなかった。
完動品があれば、一度は音を聴いてみたい機械である。

1970年代も終り近くになると、
リニアトラッキングは高級プレーヤーだけのものではなくなっていた。
ダイヤトーンからは縦置きの普及クラスのプレーヤーに、
テクニクスではLPジャケットサイズのプレーヤーSL10に、リニアトラッキングを採用していた。

リニアトラッキングは、もう特殊なトーンアームではなくなりつつあった。
これは、スピーカーにおいて平面型振動板が一時期流行したことと、
すくなくとも日本では同じ現象でもあったと思う。

そして1980年代のなかごろに、海外の小さなメーカーから、
リニアトラッキング型のトーンアームがいくつか登場してきた。
ゴールドムンド、エミネント、サウザーなど、である。

Date: 12月 21st, 2012
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(デザインのこと・その29)

物量を投入したプレーヤーでなければ聴けない音があることは、何度か書いてきている。

私が小さいころには、テレビから「大きいことはいいことだぁ」というコマーシャルが頻繁に流れていたし、
EMTの930st、927Dst、トーレンスのリファレンス、
マイクロのRX5000 + RY5500、SX8000IIといったプレーヤーの音に惹かれてきたからこそ、
いまでもそう思ってしまうのだろうが、
そう思う理由は、カッティングマシーンという存在にあるのではなかろうか。

カッティングマシーンといえば、1990年頃だったと記憶しているが、
ある人から、「カッティングマシーンの出物があるけど、買わない?」という話が来た。
価格は驚くほど安かった。
無理すれば買えない金額ではなかった。
けれど、設置場所のことを考えると、購入したところで結局は手離すことになってしまう。
それに、カッティングマシーンが再生用のレコードプレーヤーとして理想的なものかというと、
決してそうでないことを知っていたので、買わなかった。

そのころは、カッティングマシーンへの憧れは持っていなかった私も、
オーディオに関心をもちはじめたころは、そうではなかった。
カッティングマシーンこそが、再生においても理想的なマシーンである、と盲目的に信じていた。
だからトーンアームは一般的な弧を描くタイプではなく、
リニアトラッキング型こそが理想である、と信じていた。

まだリニアトラッキング型のトーンアームを備えたプレーヤーの音を、
なにひとつ聴いたことがなかったにもかかわらず、である。

Date: 12月 11th, 2012
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(デザインのこと・その28)

アナログプレーヤーのデザインについて書いている。
Air Force Oneのデザインがよくないことを書いている。

これを読まれる方の中には、音がいいのだから、
しかもこれだけのアナログプレーヤーの開発は今後望めないともいえる状況で、
Air Force Oneは登場してきたのだから、音に関係のないデザインのことなど、
どうでもいい、些細なことではないか。
欲しいのは音のいいプレーヤーであり、デザインのいいプレーヤーではない、
と思っている人もいても不思議ではない。

でもそうだろうか、ほんとうにプレーヤーのデザインは音に関係ないのか。
そうでないことは、オーディオ機器のサイズが音に与える影響のことを書いている。

スピーカーからの音が金属のかたまりであるAir Force Oneにあたる。
音の波紋のひろがっていくのを、Air Force Oneの大きなサイズが少なからず乱す。
それだけでなく金属のかたまりだから、Air Force Oneにあたった音は、
ほとんど吸音されることなく反射して、
その反射音を含めて聴き手は聴くことになる。

聴感上のS/N比の劣化が起ってしまう。
つまりこれはAir Force Oneの開発の主眼にある「限りない静粛性を求めること」を阻害している。

ただAir Force Oneの、この部分に関しては、
「無限大に近い回転精度と限りない静粛性を求めること」とあるから、
ターンテーブルのプラッターの回転精度と静粛性のことであり、
Air Force Oneの聴感上のS/N比の追求のことではないとも読める。

そうであっても、回転の静粛性は聴感上のS/N比に直接関係していることであり、
Air Force Oneは聴感上のS/N比の高さをも求めているはず。

Air Force Oneの聴感上のS/N比は、おそらく高い、と思われる。
それで充分じゃないか、と思われる人もいるだろうが、
私はAir Force Oneが、本当の意味でのデザインを追求していたら、
さらに聴感上のS/N比を増すことになっていたと考える。

Air Force Oneはこれから先10年、20年と使っていけるプレーヤーであるだろうし、
音に関しては色褪せないことだと思う。
そういうプレーヤーだけに、デザインはより大切なことなのだ。
10年後、20年後、Air Force Oneのデザインはどう思われているか、どう受けとめられているか、
それをAir Force Oneの開発スタッフは一度でも想像したのだろうか。

Air Force Oneが美しいプレーヤーシステムに変貌を遂げたとき、
Air Force Oneは完成する、と思う。

Date: 12月 11th, 2012
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(デザインのこと・その27)

1979年のマイクロのRX5000 + RY5500から始まった、
重量級のターンテーブルプラッターを糸ドライヴで回転させる、という、
もっともプリミティヴな方式は、1981年にエアーベアリング方式を採用したSX8000の登場で、
重量級のターンテーブルプラッターで避け難い欠点で軸受けから発生する機械的ノイズを抑え、
1984年にSX8000IIになり、プレーヤーとしてのまとまりを身につけ、
2012年、この方式としては考えられる最高の性能をAir Force Oneは実現している。
そういえると思う。

この点ではAir Force Oneを高く評価したい。
だから「いまどき、よくぞこういうモノをつくった!」と思ったのだ。

それでもAir Force Oneはマイクロ時代のSX8000IIを凌駕しているといえるだろうか。
Air Force Oneの音は聴いていない。
この時代に、こういう性格の製品だから、じっくり聴く機会はほとんどないかもしれない。
SX8000IIと直接比較試聴できる機会は、さらにないだろう。

それでもAir Force Oneは、すべての点でSX8000IIを凌駕しているとは思えないのだ。

SX8000IIも物量を投入した金属のかたまり的なプレーヤーではあるが、
トーレンスのリファレンスやゴールドムンドのリファレンス、それにAir Force Oneと比較すると、
コンパクトに仕上げられている。

このことが音に与える影響について、Air Force Oneは充分な配慮が為されているとは思えないからだ。
トーレンスのリファレンスが同一空間に、
聴いている時に視覚内にあるだけで音に大きな影響を与えることは、すでに書いているとおりである。
金属のかたまり、それもある程度以上の大きさをもつ機器が、
スピーカーと聴き手の間に存在していれば、音への影響は無視できなくなる。

記憶のなかでの比較になってしまうが、
Air Force OneはSX8000IIよりも大きい。かなり大きく感じる。
このAir Force Oneを部屋のどこに設置するのか、
部屋が狭くなるほどに、この問題は反比例に大きくなっていく。

この点への配慮は、Air Force Oneにはほとんどない、といえる。

オーディオ機器のサイズは、絶対的でもあり相対的でもある。
部屋が充分な広さがあれば、
ただしAir Force Oneクラスの大きさにとって充分な広さは相当なものであるけれど、
それだけのスペースが確保できる層の人たちに対してだけのアナログプレーヤーなのかもしれない。

オーディオ機器のサイズは、デザインの領域である。