私にとってアナログディスク再生とは(デザインのこと・その23)
こんなことは書く必要はないと思うが、
音に影響を与えるのは、なにもトーレンスのリファレンスだけではない。
このクラスの、金属のかたまり的なオーディオ機器であれば、
トーレンスのリファレンスと同じようにスピーカーから出てくる音に影響を与える。
トーレンスのリファレンスは大型のプレーヤーではあるが、
リファレンスと同等、それ以上の大型のプレーヤーはいくつか出ているし、
この話はアナログプレーヤーだけに限らず、他のオーディオ機器(おもにパワーアンプ)にもいえる。
今月のaudio sharing例会で、ジェフ・ロゥランドDGのパワーアンプの話が出た。
Model 8Tは、いいアンプだと思う、と話した。
これに対して「Model 9Tよりも、ですか」と訊かれたので、「そう思っている」と答えたのには、
理由がある。
それは、いまここで書いている大きさに関係することである。
Model 9TとModel 8Tとでは、アンプとしての規模が大きく異る。
Model 8Tは1シャーシーなのに対し、Model 9Tは4シャーシーである。
ステレオ仕様で電源部内蔵のModel 8T、
モノーラル仕様で、外部電源構成をとるModel 9Tとでは、
リスニングルーム内で占める空間は1:4である。
Model 8TもModel 9Tもトーレンスのリファレンスと同じで、
アルミのかたまりである。
パワーアンプとしてのリファレンスを追求した結果であるModel 9Tは、
設置が非常に難しい、ともいえる。
部屋の広さが、40畳、60畳くらいあれば、それほど神経質に考えることも求められないが、
20畳程度であれば、Model 9Tの設置にはそうとうに神経を使うことになるし、
理想的な設置条件を20畳程度の空間で実現するのは、想像以上に困難としかいいようがない。
恵まれた空間であればModel 9Tがよくても、
現実の、それほど広くない部屋においては、現実的なModel 8Tのほうが、いいアンプといえる。
アンプとしての性能、実力はModel 9Tのほうがまちがいなく高いであろう。
けれど20畳程度の部屋ではModel 9Tが同じ空間に設置されることによる影響と、
Model 9Tの性能・実力を天秤にかけることになる。
だから私は、日本人として、かなしいけれど、それほど広い空間をもてない者として、
Model 9TよりもModel 8Tのほうを高く評価するわけである。