Date: 7月 10th, 2013
Cate: wearable audio

wearable audio(その2)

ボディソニックは、私がオーディオに関心をもち始めた時と同じころに登場したように記憶している。
パイオニアから、当時は出ていた。

いま思うと不思議なのだが、なぜかボディソニックはアメリカ生れの製品で、
パイオニアが取り扱っているだけ──、そんなふうに思い込んでいた。

おもしろそうな製品とは思いながらも、
まずそんなふうに誤解から始まっていたわけで、
あくまでもヘッドフォンで音楽を聴くときの補助的な製品と決めつけていた。

1970年代はオーディオ雑誌にボディソニックの広告が載っていた。
1980年代にはいると見かけなくなったように記憶している。
さほど関心があったわけではないので、載っていたとしても私の記憶に残っていないだけ、ということもありうる。

実はボディソニックを体感したことはない。
何かの試聴が終った後に、低音再生の話になった時に、
井上先生が「ボディソニックはおもしろいぞ」と言われたことは憶えている。

井上先生は学生のとき、ウーファーを取り付けた箱を椅子にして音楽を聴いていて、
それもなかなかおもしろかった、と話してくれた。

音の振動が直に体に伝わってくる。
これがうまくいったときの快感は「おもしろく」、
井上先生の話をきいていると、楽しそうだったものの、自分でそれを試そうとまでは思わなかった。

1980年代に、一度はボディソニックのことが話題にのぼったものの、
結局そのときかぎりになってしまった。

Date: 7月 10th, 2013
Cate: オプティマムレンジ

オプティマムレンジ考(その7)

ライントランスがある。
ライントランスにはレベルには応じてラインナップが用意されている。

ラインレベルといっても、どこに使われるかによって信号レベルに違いがある。
そのため高めのラインレベルでつかわれるトランスもあれば、
低めのラインレベル用のトランスもある。

高めのラインレベル用につくられているトランスは、総じてナロウレンジである。
周波数特性をみても20〜20000Hzとなっているものは少ない。
けれど、この手のトランスもラインレベルの低いところで使えば、
決してナロウレンジではなく、可聴周波数帯域の20〜20000Hzをカバーしていたりする。

つまり測定時に入力する信号レベルによって周波数特性に差がでるわけである。
真空管式のパワーアンプも出力トランスをしょっているものは、
1Wの出力時の周波数特性と最大出力時の周波数特性は違ってくるアンプが大半である。
最大出力時には大なり小なりナロウレンジとなる。

とはいってもトランスとスピーカーユニットは違う。

でもトランスはtransformerであり、スピーカー(トランスデューサー)はtransducerであり、
transということでは共通している、とこじつけることもできる。

Date: 7月 9th, 2013
Cate: オプティマムレンジ

オプティマムレンジ考(その6)

スピーカーの測定の条件として、アンプの出力は1Wが基準となっている。
HIGH-TECHNIC SERIES 4の実測の周波数特性も1W入力時のものである。
このときD130の音圧レベルは100dBをこえる。

100dBの音圧といえば、かなりの音量である。
いまのところD130を、このレベルでは鳴らしていない。

ふだん聴く音量は、100dBよりもずっと低い音圧である。
そういう音圧時のD130の特性はいったいどうなるのか。

D130をソロで鳴らして、そのことに強い興味をもっている。

いまどきのワイドレンジのスピーカーシステムは総じて能率が低い。
いまや90dBあると能率が高い方に分類されるくらいで、
当然だが入力1Wでは80dBとか85dBとか、D130の100dB越えの音圧からすると、
20dB前後の差のある、低い音圧である。

同じ条件(入力:1W)で測定しているとはいえ、
これは別の見方をすると同じ条件とはいえない面ももつ。
条件を同じするということは、入力を1Wにするだけでなく、
たとえば同じ音圧での周波数特性を測定してみることでもあるはずだ。

つまり現代の、決して能率の高くないスピーカーシステムを、
D130の1W入力時で得られる音圧と同じレベルまであげてみての測定、
それからD130への入力をぐっと小さくして、
現代の低能率スピーカーシステムの1W時の音圧レベルと同じになるまで入力を絞っての測定。
すくなとも、これらの測定を行ってほしい、と思う。

そうしたときにD130の周波数特性は、
現代のスピーカーシステムの周波数特性は、
それぞれどういう変化をみせるのか、
それともまったく変化しないのだろうか……。

すくなくともD130の小音量時の周波数特性は、
1W入力(100dBの音圧)時の特性とは違うカーヴを描いているような気がしてならない。

つまりアルミ製ドームの共振は、1W入力時のように明確に発生しているとは考えにくいのだ。
すくなくとも、いま私の目の前にあるD130を聴いているかぎりでは。

Date: 7月 9th, 2013
Cate: オプティマムレンジ

オプティマムレンジ考(その5)

「Harkness」についているD130は、フィクスドエッジのD130である。

D130の長い歴史をもつユニットだけに型番は同じでも、
仕様に変更がいくつかある。
エッジの変更は目に見える変更である。

私がD130を強く意識し出してそんなに長くないから、
D130がどういう変遷をたどってきたのか、それほど詳しいわけではない。

D130に詳しく、いくつものD130をもつ人を知っている友人によれば、
アルミ製のドームの厚みが、初期と後期では違ってきている、とのこと。
初期の方が薄いらしい。

仮にそうだったとしても、それほど高域のレンジの延びが大きく変るとは考えにくい。
エッジの違いも音には影響するものの、
今回の音に大きく影響しているとは考えられない。

ちなみにHIGH-TECHNIC SERIES 4で取り上げられているD130は、もうフィクスドエッジではなくなっている。

他に理由があるはずだ。
だとするといったいなんなのか。
音量ではないのか。

Date: 7月 9th, 2013
Cate: オプティマムレンジ

オプティマムレンジ考(その4)

D130をソロで鳴らすことは、ネットワークを介在させないことであり、
パワーアンプとのあいだにはスピーカーケーブルとコネクターだけということになる。

ウーファーのハイカットフィルターにはコイルが直列で挿入される。
6dB/oct.の減衰カーヴでも、最低でもこのコイルがひとつ介在する。
12dB/oct.では並列のコンデンサーがあり、
N1200の場合、直列のコイルと並列のコンデンサーがD130に接がっているわけで、
これらはなくなる。

それでもD130の実測の周波数特性、
それにHIGH-TECHNIC SERIES 4における、菅野先生、岡先生、瀬川先生による鼎談の試聴記も読んでいる。
もう先入観たっぷりで、D130のソロの音を聴いた。

拍子抜けとは、こういうことをいうのかもしれない。
たしかに175DLHがなくなっているから、高域のレンジはさらに狭くなっている。
けれどどう聴いても、アルミ製ドームの共振を利用してもせいぜい5kHzどまりの鳴り方とは思えない。

ネットワークがなくなったことによる音のメリットも大きいことはわかる。
それで表面的な鮮度の良さではなく、ほんものの鮮度の良さが感じられるがゆえに、
高域も延びているように感じた──、そういうのともあきらかに違う。

実測したわけではないから、あくまでも聴感上でいえば10kHzは無理でも、
7kとか8kHzまでは出ているような気がする。

どう聴いても、HIGH-TECHNIC SERIES 4の実測の周波数特性からイメージできる音ではない。

Date: 7月 8th, 2013
Cate: オプティマムレンジ

オプティマムレンジ考(その3)

D130を「ソロで鳴らす」──、
こんな言い方をせずに、わかりやすくD130だけで鳴らす、とか、D130をフルレンジとして鳴らす、
D130一発で鳴らす、とか、そんな書き方をせずにあえて「ソロで鳴らす」としたのは、
岩崎先生が、この表現を使われているのを読んで、そのときの印象が強かったから、
とにかく「ソロで鳴らす」と書きたかったし、書くだけでなく、実際にD130をソロで鳴らしてみたかった。

D130はフルレンジユニットということに一応はなっている。
口径は15インチ(38cm)、センターキャップをアルミ製のドームにしているとはいえ、
一般的な認知としてはトゥイーターを必要とするフルレンジということになろう。

私もそんなふうに思ってきていた。

これも岩崎先生が書かれていることなのだが、
岩崎先生のリスニングルームに試聴用にオーディオ機器を持ち込むメーカーの人たちに、
だまってD130のソロを聴かせる。
トーンコントロールで高域をブーストしているとはいえ、
トゥイーターはない、D130は高域もそれほど延びているわけでもない。
にも関わらず誰ひとりとして、D130がソロで鳴っていることに気づいた者はいない、とのことだった。

D130の実測の周波数特性はステレオサウンド別冊 HIGH-TECHNIC SERIES 4に載っている。
低域は80Hzから下はダラ下り。高域は30度の周波数特性をフラットにするためだろう、
正面(0度)の周波数特性は1kHz以上はアルミ製ドームの存在によるのだろうが、レベルが数dB以上上っている。

3kHzをこえてしはらくしたらディップがあり、
5kHzの少し下のところにピークができ、それ以上は急激にレスポンスが低下する。
5kHzのピークはアルミ製ドームの共振を利用しており、だからそれ以上の帯域は再生限界といえる。

D130の高域が、低域のようにダラ下りであればトーンコントロールでブーストすることである程度は補えようが、
D130の周波数特性を見る限り、トーンコントロールで簡単に補整できるとは思えない。

だから、ずっとD130がソロで鳴っていることに誰も気がつかないは、
にわかには信じられなかった。

このことを検証するためにも、ソロで鳴らしてみた。

Date: 7月 8th, 2013
Cate: オプティマムレンジ

オプティマムレンジ考(その2)

「Harkness」で、いまは聴いている。
岩崎先生の「Harkness」にはD130と175DLHがはいっていて、
ネットワークはN1200(クロスオーバー周波数は型番が示すように1200Hz)。

このシステムの周波数特性がどのくらいなのか実測データは見たことはない。
けれどエンクロージュアのC40はバックロードホーン型。
音道は6フィート(約1.8m)だから、計算上では190Hzあたりにディップが生じる。
そのオクターヴ下のところが少し持ち上がり、それより下の帯域となると、
ホーンの開口部の大きさも含めて考えると、
これだけのサイズのスピーカーと38cm口径のウーファー(フルレンジ)の組合せにしては、
お世辞にも下まで延びている、とはいえない。

高域についても175DLHだから13kHzあたりまでだろうか。

いまの基準からみればはっきりとナロウレンジなスピーカーシステムである。
私自身はワイドレンジ志向である。
なのに聴いていて「狭い!」と思うことは、そんなに多くはない。

録音された年代にも関係してくるのだが、過不足ない帯域幅とも感じるし、
高域も低域も、やはり延びが足りない、と感じることがないわけではない。

とはいえボリュウムをぐっと絞って聴いていると、
ナロウレンジ感は薄まっていくようにも感じられる。

とはいえナロウレンジなスピーカーであるのだから、いっそのことと思い、
D130をソロで鳴らしてみた。

Date: 7月 7th, 2013
Cate: wearable audio

wearable audio(その1)

ほんとうに「いい音」というのは、身体にとってもいいはずだ、というおもいはずっと持ってきていた。

菅野先生が、ジャーマン・フィジックスを導入されてしばらくして音を聴かせていただいた時のことを思い出す。
その日は、例年ならば半袖を着ることはないのだが、なぜか暑い日だった。
だから半袖だった。

音が鳴り出した。
その瞬間に、ただ単に音がいい、というレベルを超えていることが体感できた。
文字通りの体感だった。
オーケストラによる響きに露出している腕の皮膚を撫でられている、
まさにそんな感じを受けていた。

大音量を体で受けとめる、というのとはまったく違う、
それまで体験(体感)したことのない感覚であった。

音は耳だけで「きく」ものではないことを実感できた、いわば最初の日だった。

その日の帰り道、肌触りのいい生地の服を着て音楽を聴くことは、
よりよい音を聴く上でも重要なことなのかもしれない、
そんなことも考えていたし、究極的には裸で聴くのがいいのかもしれない、とまで考えていた。

ジャーマン・フィジックスは、その後も、いくつかのところで聴く機会があった。
けれど、あの日の菅野先生のところで体感できたことを、もう一度、ということはかなわなかった。

いまは、まだ「その音」を自分でも出せないでいる。
でも、いつかは出せる、と思っている。

出せた、としても、その恩恵を受けられるのは、私ひとり、ということになってしまう。
それがオーディオというもだ、といってしまうえば、そうである。

けれど、あの日の体感を、少しでも多くの人が自分のものとすることができるようになれば……、
そのことも、あの日以来、考えてはいた。

耳だけでなく皮膚(肌)で音・音楽を感じる、ということになれば、
古くからのオーディオマニアならば、まずボディソニックの存在を思い出す。

Date: 7月 7th, 2013
Cate: 岩崎千明, 終のスピーカー

終のスピーカー(求めるものは……)

岩崎先生のモノだった「Harkness」で、いまは聴いている。

だからこそ忘れてはならないと改めて心に刻むのは、
「古人の跡を求めず、古人の求めたる所を求めよ」である。

Date: 7月 7th, 2013
Cate: デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(その1)

人によって、こうも感じ方が違うものか、ということをインターネットを通じて感じることがある。
オーディオ機器のデザインについても、そう感じている。

いま私の目の前にはJBLの「Harkness」とトーレンスのTD224がある。
毎日眺めている。
どちらもいいデザインだとおもう。
そして、どちらも時代を感じさせてくれる。

いいデザインとは、その時代を感じさせてくれるものではないのだろうか。

facebookやtwitterなどのSNSの普及により、
いろんな意見を目にするようになった。
このあいだも、マランツのModel 7のデザインが素晴らしい、という書き込みをみかけた。
そこにコメントがあり、「時代を感じさせないデザインで、素晴らしい」とあった。
このコメントに同意される方もいた。

そうなのか、と私などは思っていた。
Model 7のデザインもいい。
真空管のコントロールアンプで一台だけ手もとに置いておきたいとなると、
やはりマランツのModel 7を選ぶ。

20代のとき手に入れようとしたこともあった。
そのころに較べると、無理をしてでも……という気持はずいぶん薄れてしまったけれど、
縁があれば欲しい、という気持は抑えられない。

でも、私はmodel 7のデザインは「時代を感じさせない」とは思っていない。
「時代を感じさせてくれる」デザインであり、いいデザインだと思っている。

「時代を感じさせない」は、ほんとうに讚辞の言葉なのだろうか。

Date: 7月 6th, 2013
Cate: 調整

オーディオ機器の調整のこと(続々続々・認識の違い)

オーディオマニアに「オーディオ機器の調整を行っていますか」ときけば、
ほとんど全員が「やっている」と答えることだろう。

でも実際にはカートリッジの例でもわかるように標準針圧に合せることを「調整」と思っている人もいるし、
4350(4355)といったスピーカーシステムに関しても、
同じパワーアンプを二台用意すればレベル調整は必要ない、と思い込んでしまった人もいる。
4350(4355)に関しては、それではレベルが合うことはまずありえないのだが、
そう思い込んでしまった人にとっては、それは動かしていけないことになってしまうのだろうか。

針圧に関しても同じだ。
標準針圧に合せたら、そこから動かしていけない、
そんなふうに思い込んでいる人は確実にいる。

何度もくり返す、
オーディオ機器の「調整」はしっかりした準備がなければ始まらない。

それにしても、なぜ動かさないのだろうか。
4350(4355)のレベル合せにしても、何もスピーカーを動かさなければできない作業ではない。
ツマミをほんの少し動かすだけの、労力としてはたいした作業ではない。
絶妙なバランスを実現するには時間とセンスが求められるが、
レベルを動かすことに必要なのは、本人のやる気だけ、ともいえるし、
思い込みをなくしてしまうことだともいえる。

この「調整」ということに関しては、まだまだ書いていきたいこと、
書かなければならないと感じていることが、書いていると次々と出てくる。
人と話すことによっても、そうなってくる。

「調整」については、この項のいわば本文にあたるところで書き続けていく。

Date: 7月 6th, 2013
Cate: 調整

オーディオ機器の調整のこと(続々続・認識の違い)

いままでオーディオのなかった部屋にシステム一式を設置することになったとしよう。
スピーカーシステムを置き、ラックの設置、そのラックへのアンプやCDプレーヤー、アナログプレーヤーの設置、
そのあとにケーブルでそれぞれの機器を結線していく。
電源もとる。

ここまでのことはセッティングということになる。
ここをいいかげんにやっていては、次の段階がうまくいかなくなるし、
たまたま偶然が重なってうまくいったとしても、そんなことではオーディオ機器の調整は身につかない。

セッティングは調整をスタートするための、いわば準備である。
だからこそしっかりと準備することが大事であり、
このセッティングには、アナログプレーヤーにおけるカートリッジまわりの調整も含まれる。
バイアンプ(マルチアンプ)駆動のスピーカーシステムであれば、
各帯域のレベルの調整もセッティングの範疇である。

使用するカートリッジの標準針圧が2.5gであれば、まずは2.5gに合せる。
トーンアームの高さも調整する。
カートリッジの傾きもチェックして、傾きが視覚的に確認できれば水平とする。
(ただしこの部分に関しては、さらに次の段階がある)
インサイドフォースキャンセラーがあれば、まずは針圧と同じ値とする、など、
こういった調整をやるわけだが、これは厳密な意味でのオーディオ機器の「調整」とはいえない。
あくまでも「調整」という次の段階のための準備なのである。

4350(4355)を鳴らすとしても、とにかく音を出して帯域のバランスをおおまかに合せる。
これも厳密な意味でのオーディオ機器の「調整」ではなく、やはり準備である。

これらの準備がきちんとできないままに「調整」にうつってしまっては、
いわゆる泥沼に嵌ることになる可能性が高くなるし、
いつまでたっても準備のところにとどまっていることに気がつかないことにもなる。

Date: 7月 6th, 2013
Cate: 調整

オーディオ機器の調整のこと(続々・認識の違い)

JBLの4350、4355を自分で一から調整したことがあれば、
こんなふうにユニットのデータをもってこなくても、確実なことがいえるのだが、
すでにレベル調整されていた4355のレベルをいじったことはある程度なので、
結局こんな言い方になってしまった。

なぜこんなことを書いているかというと、
ある人が4350を鳴らしていて、パワーアンプは二台とも同じモノを使っている。
つまりゲインもパワーも同じだから、レベル調整はしていない、ということを耳にしたからだ。

仮に4350の2231A二発からなる低域と、
250Hzより上を受け持つセクションとの出力音圧レベルがまったく同じであったとしても、
それでもレベル調整はするものだという私の考えからすると、
これには「調整」ということが何を意味してるのか、
その意味をどう捉えているのか、
調整という言葉をどう使っていったらいいのか、
そんなことを考えてしまった。

4350はJBLのプロフェッショナル用のスピーカーシステムである。
いいかえればプロフェッショナルが使うこと・鳴らすことを前提としている。
4350と同等のスピーカーシステムを、もしJBLが開発していたら、L500という型番で出していたかもしれない。

仮のモデルとしてL500を考えてみると、
バイアンプ駆動であっても、低域部と250Hz以上を気もつセクションとの出力音圧レベルは揃えるであろう。
せっかくの高能率ユニットからなる中低域以上のレベルを多少落すことになったとしても、
コンシューマー用スピーカーシステムとしての使い勝手を重視して、
同じパワーアンプを二台用意すれば、特にレベル調整の必要なく鳴るようにする。

だが4350はL500ではない。
あくまでもプロフェッショナルが使う(鳴らす)スピーカーシステムであるから、
そういった配慮は要らないのだから。

Date: 7月 6th, 2013
Cate: トランス

トランスからみるオーディオ(その13)

3Dプリント技術が行き着くところは、レプリケーターなのだろうか。

レプリケーターとはスタートレックに登場する装置の名前である。
スタートレックを、テレビ、映画で一度でもご覧になれば、
転送装置という瞬間的に移動できる装置に気づかれる。
レプリケーターは、この転送装置の発展形でもあり、
分子レベルで実物(オリジナル)とほとんど変らぬコピーを、エネルギーさえあればいくつでもつくり出せる。

しかもサイズの拡大縮小も可能という設定になっているから、
これこそ未来の3Dプリント技術といっていいように思ってしまう。

このレプリケーターがあれば、そしてオリジナルの正確なデータがあれば、
さらにエネルギーの使用に制限がなければ(設定上ディテールの追求することはエネルギーの消費が増える)、
さまざまなオーディオ機器のコピー(レプリカ)が、オリジナルといっていいレベルで存在することになる。

マランツModel 7はいまも高値で取引きされている。
別にModel 7に限らず、過去の銘器と呼ばれたオーディオ機器は決して安くはない。
中にはジャンクとしか呼べないモノもある。
これから先、ますますコンディションのいい、そういったモノを手に入れることは難しくなっていく。

でもレプリケーターが実現されれば、
スタートレックの世界は23世紀、24世紀という設定であるから、
いまから200年後、300年後のほうが、いまよりも程度のいい、
というか新品そのもののModel 7を誰もが手に入れることができるようになる──、
そんなことを夢想したくなる。

荒唐無稽な……、と思われるだろうが、
私も含めて、これを読まれている方が生きているうちは、確かに実現は無理なこと。
そんなことはわかっているし、レプリケーターの原始的なレベルのものすら、
生きているうちには見ることはない、と思っていたところに、
3Dプリント技術が話題になりつつある。

こういうものも3Dプリント技術でアウトプットされているのか、
そんなふうに感じるニュースを読んでいると、レプリケーターの原始的なモノであれば、
もしかすると生きているうちに登場してくるかもしれない。
そうも思うようになってきた。

Date: 7月 5th, 2013
Cate: 調整

オーディオ機器の調整のこと(続・認識の違い)

4350の中低域より上の帯域を構成するユニットの中で、
出力音圧レベルの低いのは、ミッドバスの2202Aということになる。
だからこのセクションの出力音圧レベルは2202Aの出力音圧レベルの同じということになる。

その2202Aの出力音圧レベルだが、実のところはっきりしない。
最初の頃は96dB/W/mとなっていたのが、1978年ごろから99dB/W/mへと変更になっている。
3dBの違いがある。

96dBであれば、2231A二発によるウーファーとほぼ同じ出力音圧レベルということになるのが、
98dBであれば、2231A二発よりも3dB程度高いことになる。

どちらの値が正しいのか。

2202Aは30cmのコーン型ユニットだが、
磁気回路は38cmのウーファーと同等の設計と物量が投入されている。

JBLが発表している”THIELE SMALL LOW FREQUENCY DRIVER PARAMETERS AND DEFINITIONS”によれば、
2202AのMms(Effective moving mass)は50g、2231Aは151gである。
磁束密度はどちらも同じで1.2テスラ。
BL積は2202Aが22、2231Aが21と、わずかだが2202Aの方が高い。

これらのパラメーターで正確な出力音圧レベルがわかるわけではないものの、
2202Aが96dBということはないように、実際に4350Aを聴いた経験からも、
そして4350B、4355を聴いた経験からも99dBの方が鳥瞰的には納得できる値である。

4350B、4355には2202Aのフェライト仕様がついていて、
4355の出力音圧レベルは、290Hz以下が96dB/W/m、290Hz以上が99dB/W/mとなっていることからも、
4350A、4350Bの中低域より上(250Hz以上)は99dB/W/mと考えていい。