ステレオサウンドについて(その12)
ステレオサウンドのベストバイ特集の一回目の35号と二回目の43号までの二年間には、
六冊のステレオサウンドと二冊の別冊の他に、
HI-FI STEREO GUIDEが夏と冬に刊行されていた。
いまのステレオサウンドはどうだろう。
毎年冬号でベストバイは第二特集として定番となっている。
けれど前年の冬号からの一年間に、どれだけの内容を世に送っているだろうか。
まず別冊は出ていない。
そういうと、出しているだろう、という反論があるのはわかっている。
確かに別冊は出ているが、それはステレオサウンド編集部とは別の編集部による別冊であり、
1970年代に出ていた別冊と違う別冊である。
だから同じには考えられない。
そしてHI-FI STEREO GUIDEも出ていない。
特集記事を見ていくと、どうだろうか。
徹底試聴、総テストと呼べる特集が、いまのステレオサウンドで組まれているのかといえば、
残念ながら、そうではない。
43号のベストバイ特集と、現在のベストバイ特集とでは、
背景が大きく違っている。
こう書くと、時代が違う、という反論をいってくる人がいる。
時代は確かに違う。
だからといって、時代が違う、は何のいいわけにもならない。
編集者が「時代が違うから……」と、もしいっているようでは、
口にしていなくとも、心の中でそう思っているのであれば、
その本には、もう期待できないといっていいだろう。
では読者が「時代が違う」というのはいいのか。
私は、これも問題だと捉えている。
結局、そういってしまったことが伝われば、編集部を甘やかすことに、
編集部にいいわけを与えることにつながっていくと考えるからだ。
時代は変っていく。
ただ変っていくだけなのか。
どう変っていっているのか。
そのことを見極めずに「時代が違うから……」といってしまって、どうするというのか。